観たいと思ったアーティストのライブは、可能な限りその時に観に行こう。
次があるかどうかはわからないんだから。これがここ最近の持論となっている。
間もなくデビュー35周年を迎える福山雅治が今春から2年ぶりとなるライブツアーを開始。「WE’RE BROS. TOUR 2024」と銘打たれたそれは、約6か月にわたって全国17か所35公演を行うというもの。
2011年、青森での2Daysそして仙台と、3度にわたりライブを観る機会を得たが、それ以降は青森に来ることもなく、いつしか自分の中でも「一度観たいと思っていたアーティスト」を観ることができたことへの満足感からか、その後のツアーにはほとんど気を留めることがなくなってしまった。
そんな中で知った2年ぶりのツアー。コロナ禍から明け、僕自身も以前のようにライブ会場に足を運ぶようになっていたところ、なぜだかわからないけれど、福山雅治のライブが無性に観たくなった。
何の躊躇もなく9月14日に宮城セキスイハイムスーパーアリーナで開催されるライブチケットを申し込んだところ、何と当選。13年ぶりにライブを観る機会を得ることとなった。
仙台市内の宿を手配し、新幹線の予約も完了。
あとは仕事や私事の都合を万事繰り合わせて行くだけ、と思っていたが、さてどうしたことか、9月に入りテンションがどんどん下がり始めた。
そういえば、何で今になって急に福山雅治のライブを観たいなんて思ったんだろう?本当に観たいんだろうか?そういえば、新しい曲なんてほとんど知らないしなあ。自問自答と悶々とした気持ちが渦巻く。
追い打ちをかけるかの如く、体調の悪化。風邪をひいてしまったようで、水曜日から木曜日にかけて咳き込むわ鼻水は止まらないわと、最悪の状態に。
いっそキャンセルした方がいいんだろうかと思ったが、既に時遅し。
もうこれは、体調を少しでも回復して行ってみるしかないと覚悟を決めた。
ライブ当日の14日。2日間の断酒もそれなりに功を奏したようで、数日前に比べれば格段に体調は良くなっていた。
お昼前に新青森を出発する新幹線に乗車、一路仙台を目指し、13時半頃に仙台到着。
この日の宿が仙台駅直結ということもあり、荷物を先に預かってもらい、シャトルバスに乗って会場に向かった。周りを見回すと、女性比率が圧倒的に高く、男性は1~2割程度。ただし、演者が年齢を重ねるとともに、ファン層も年齢を重ねていく。演者と同年代、恐らく50代後半と思われる人たちが圧倒的に多かったように見受けられた。
15時過ぎ、会場の駐車場にバスが到着。霧雨未満の天気で、肌寒いとまでは行かないものの、長袖一枚羽織っても全く支障がない。
会場まではまた歩かなければならないのだが、途中、停車中のツアートレーラーに人が群がっていた。
ツアータイトルの「花とミツバチ、涙と音楽」を模したデザインがペイントされている。
撮影に勤しむ人たちを横目に、会場へ急ぐ。
がしかし、入場口へとやって来ると一波乱が待っていた。今回、紙のチケットの販売はなく、電子チケットでの入場となるのだが、多くの人が入場口に殺到した結果、チケット画面がうまく表示されないのだ。ふと見ると、臨時のWi-Fiが設置されているようで、多くの人たちが接続を試みていた。
奇跡的に画面が表示されたタイミングで無事入場完了。あとは、数少ないトイレに駆け込んで、開演の時間を待つのみ。
昨年の浜田省吾以来の宮城セキスイハイムスーパーアリーナ。座席は予想通りスタンド席(西)だったけれど、アリーナや反対側の東スタンドを見渡すと、観客が購入したツアーグッズ「シンクロライトバングル(4800円)」が、あちらこちらから光を放っていて、それがまた開演前の気分昂揚に一役買っている感じ。
しかし、開演時刻の16時近くになっても、会場の席がなかなか埋まらない。やはり入場口で混乱しているのだろうか。それでも16時10分頃になるとほとんどの座席が埋め尽くされ、いよいよ客電が落とされてライブが始まった。
【以下、ツアー終盤ということですが多少ネタバレがあります。】
ステージからアリーナ中央には花道、そしてセンターステージが設けられている。
そのセンターステージすら僕の座席は目視が難しいぐらい離れた場所にあるので、メインステージの両サイドに設けられた大型スクリーンが頼りとなった。
いよいよ白を基調とした衣装を身にまとった本人がドーンとステージに現れると、会場全体から揺れるような拍手と歓声。おおお…始まった!
13年前のライブでは聴くことができなかった、いや、聴きたいと思っていた曲がのっけから次々と演奏され、いきなり涙腺崩壊。当時は埋めることができなかったパズルのピースが、心の中を埋めていく。思わずマスク越しに一緒に口ずさむ。最近はなくなったけれど、カラオケで困ったときの十八番は、この方の曲ばかりだったのだ。
鮮やかな光、そして炎などがステージを彩る。本人がセンターステージに歩を進めると、更に歓声が大きくなる。仙台ネタをふんだんに盛り込んだMC、そして新曲も挟みながら、目まぐるしくステージが展開されていく。
中盤、家族をテーマにした曲が幾つか続き、またしても涙腺崩壊。2011年のことが思い返されるばかりではなく、どうも亡父への懐古の想いをくすぐられるらしい。
折しも17回忌を終えた翌週ということもあって、どうなるかと思ったけれど、やっぱり足を運んでよかった、と心の中が満たされていった。
わかってはいたけれど、後半は最近の曲が披露されていく。デジタル配信が多くなっていく中、僕自身のアンテナがアップデートされていなかったようで、多少の戸惑いを覚えつつも、あ、CMで聴いたことあるわ、といった感じでアンコールへとなだれ込んでいった。
約3時間にわたる公演、最後はセンターステージにて、アコギ一本による曲(各会場各公演で毎回異なるらしい)で幕を下ろした。
心身の不調が続き、一時期はホントにどうなるかと思ったが、少し無理をしてでも仙台まで足を運んでよかった…。13年前には埋まらなかったパズルのピースが幾つかはめ込まれ、何とも心の中が満たされた気分、優しい気持ちになって、会場を後にした。
ちなみにこの日の開演が16時、翌日の開演が15時。
結果的に仙台泊となったが、その気になれば青森からでも日帰りでライブを観ることが十分可能だった。確かに僕の席の周りには、60代を優に超えたであろう年配の方がたくさんいたので、早い時間に始まり、19時頃には終わるというライブもあっていいのではないでしょうか。