新型コロナウイルス感染記(2)

前回の続き。貴重な時間を割いて御覧いただいている皆さんにとっては、この投稿が何の役にも立たないことをお詫びします。ただ、今こうやって記録を残していること自体、僕自身にとっては重要な備忘録なので、何卒ご容赦願います。手短にまとめようと思ったけど、やっぱり無理でした。

9月6日(水)【狼狽】

5日の夜は、解熱したこともあり大分寝やすくなることを期待したが、今度は激しい喉の痛みと咳に見舞われることとなった。眠りに落ちた途端、そのタイミングを見計らって叩き起こすかのように、鳩尾の奥底から発せられる咳。唾を飲み込むのも憚られるほどの喉の痛み。噂には聞いていたが、これほど苦しいものとは。解熱したからといって体内のウイルスが消えた訳ではない。勝手に人の身体に侵入した目に見えぬテロリストは、未だ暗躍を続けているのだ。

6日朝、起床して真っ先に感じたのは背中の痛みだった。
これまで全く違和感がなかったので、もしかしたら肺に深刻な影響が出ているのでは…と狼狽したが、本当に影響があるなら、もっと呼吸が苦しくなるはず。全く息苦しさがないというわけではないが、あれだけ咳をしていれば多少影響はあるだろう。
考えてみると、外出するわけでもなく、ほとんど部屋の中で過ごしているわけで、運動なんて全くしていない。肩を回すとか背伸びをするとか、ささやかでも身体を解しておかないと、凝り固まって違う痛みが生じてくるかも知れない。(実際、背中を伸ばすストレッチを施したら、背中の痛みはかなり緩和された。)
とにかく今は、一日も早く日常に復帰するべく、できる準備を整えることにしよう。

ちなみにこの日は5時に起床し、6時には朝食と、徐々に普段の生活リズムを取り戻すことを心掛けた。
朝食はサンドイッチにサラダ、紅茶。…がしかし、ここで再び狼狽することに。
発症直後から違和感はあったが、いよいよ何を口に入れても、風味がしないのだ。脳の記憶でこれはこういう味がする、という印象がインプットされているので、色や形を見て口に運んだ瞬間、何となくそれっぽい味はするのだが、甘塩酸苦辛の区別がほとんどできなくなっていた。もうひとつの狼狽は、匂いもわからないこと。例えば様々な栄養ドリンクは、それ相応の匂いであったり濃い目の味がすると思うけれど、それらが全くわからなくなった。
取りあえず形のある何かを、匂いも味もほとんど判別できないけれど口に運ぶ、という状況に陥ってしまった。これは結構ショックだった。下手をすれば、後遺症としてしばらく尾を引くかも知れないと思った。

発泡スチロールの中身。数日間はしのげる。

それでも、身体が動く時間が増えてきたのは、2~3日前まで倦怠感で起きるのもやっとだったことを考えれば、回復に向けた明るい兆し。

たかがコロナされどコロナ。この流行病によって、自分が長年にわたりお世話になった人や妻の親戚をはじめ大勢の方が命を奪われ、多くの人々が人生設計の変更を余儀なくされているのを目の当たりにしてきた。
お前が言うな、と言われるかも知れないが、大袈裟でも何でもなくこいつを舐めたらエライ目に遭う。48時間も38℃前後の発熱に晒されれば、気もおかしくなりそうになるってもの。大体にして、新型コロナウイルスが感染症の分類で2類から5類に変わったといっても、それは日本人の都合で勝手に変えただけの話であり、ウイルスにしてみれば知ったことではなく、別に感染力が劇的に低下したわけではないのだ。
だから、新型コロナウイルスにまだ感染していない人には、声を大にして言いたい。

絶対に感染するな!話で聞いている以上に大変だぞ、これ!

閑話休題。
昼食はカレーライスだった。
先々週の総合防災訓練終了後に食した爆盛りカレーのことを思い出しつつ、あの日と同じように使い捨て容器に入れられた、ほとんど味の感じられないそれを、まるで流し込むかのごとく口の中へと掻き込んだ。

日中はこの記録を残したり、読みそびれていた本を読んだりして過ごす日々。どうか今日は咳に悩ませられませんように。
…しかし、気が焦っているのか警戒心が先立つのか、結局この日もよく眠れなかった。

9月7日(木)【追悼】

5時起床。咳が大分収まってきたのは幸いだが、喉の痛みが相変わらず、というよりもむしろ昨日より悪くなっているのではないだろうか。いや、待てよ。これはもしかしたら、いびきが招いたものかもしれない。
「食事も喉を通らない」のは、緊張や心配事が募ってのことだが、こちらは痛みで食事が喉を通らない。その痛みに耐えて、無理矢理食事を流し込んでいる、といった感じ。ちなみに今日も、味覚そして嗅覚ともに全く感じられず。

日曜日からアルコールの摂取を控えている。アルコールを止めて少しは痩せるかと思ったけれど、そもそも身体を動かしていないから無理だった。でも、丸5日間アルコールを抜くなんて、いつ以来だろう。アルコールを入れていない分、いびきもそんなに酷くないと思っていたけど、ひょっとしたら普段からいびきが酷いのではないかと不安になってきた。

今日は父の命日だ。母に父の好物だったマグロの赤身とキリンラガービールを買ってくるよう依頼した。今夜は、せめて父が好きだったラガービールでも飲んで追悼を…と思ったが、この喉の状況でビールを流し込んだらどうなるだろう。いびきで喉が焼け、ますます声が出なくなるのだろうか。そう考えたら、さすがに怖くて手を出すことはできなかった。

9月8日(金)【気配】

自宅療養最終日を迎えた。かかりつけ医の先生がおっしゃっていた通り、青森県内の感染状況は先週がピークだったようで、感染者数が下向きになったと報じられていた。また、先生によると、インフルエンザなどに比べると軽く終わる人も多いとのことだったが、自分は全然そんな感じではなかった。長時間の発熱、解熱とともにやって来た過去最大級の喉痛、そして、味覚と嗅覚の異常。既に罹患した妹曰く「同じ症状だから時間が経てば元に戻る」とのことだが、果たしてどうなることだろう。うまく言えないけれど、「○○味っぽい」部分をちょっとだけ感じられるようになったのは、おそらく回復の気配なのだろうか。

そんなことよりも、一週間ほとんど仕事をしていないことに対する不安が募る。今週職場に迎えたインターンシップ生の課題発表は、皆さんの協力もあって無事終わったそうだ。まずはひと安心。でも明日、体調を見ながら一度出勤してこようかと思案し始めている。

9月9日(土)【寛解?】

自主隔離生活に終止符を打ち、ひとまず今日は職場に足を運ぶことにした。「社会復帰」に向けたリハビリを兼ねて、週明けからの業務再開に向けた下準備。自分自身もやらなければならないことがたくさんある。何よりもまずは、新型コロナウイルスに感染して失われた時間を取り戻すこと、これに尽きる。とはいえまだ喉の違和感はまだ残っており、体調が万全の状態とは言えないため、月曜日に空回りしないためのアイドリング。

しかし、ここですんなり行かないのが自分だなあ…と。
試しに簡易検査を行ってみたら、うっすらと浮かび上がる「陽性」のライン。発症から6日が経つけど、なかなか厳しい現実を突きつけられる。でも、申し訳ないけれど、今日は行かせてください!

CとT双方に横線が走ったら陽性。Tにまだうっすらと線が…

電車の中ではマスク着用で無言を貫く。どんなに五月蝿くとも、じっと我慢。耐えて堪え忍んだ約1時間後、ようやく職場に到着。
…が、ここで更なる衝撃が。通用口で警備員に身分証明書を見せ、庁舎内に入った後、背後から聞こえてきた声に固まった。

「あ、今日停電してますんでー。」

…えっ?ウソ!?
職場は非常用電源が繋がっているのでPCは立ち上がるものの、肝心のメールチェックはもとよりLAN接続ができないことが判明。ううむ…これは痛い。仕方がないので机上の未決裁案件の処理を…って、全部飛ばされてるからほとんどないわ。結局、やりそびれていた書類の整理等を行って、約2時間後には撤収と相成りました、とさ。


どうなるかと思った新型コロナウイルス感染。今となっては誰が感染しても誰も驚かないけれど、罹患すること自体が「悪」みたいだった、あの頃のあの空気感って、一体何だったんだろう。何か、そういうことも含めて色々考えさせられる今回の感染。

こんな苦しい思いをするぐらいなら、もう二度と感染しないよう気をつけようと思います!そして未だ感染していない皆さんへ、日頃からの感染防止対策を怠らないように。もう一度言います。

のんべ
のんべ
聞いている以上に大変だ、これ!