新型コロナウイルス感染記(1)

自分だけは絶対に感染しない。そんな強い思いで屋外でのマスク着用、うがいや手指消毒の徹底など、依然として猛威を振るう新型コロナウイルスの感染防止対策を講じてきたつもりだったが、先日、遂に陽性となってしまった。

既に感染された方々による報告等は数多く目にしているが、ここでは自分自身の備忘録としてダラダラ記録させていただくことをご容赦願いたい。

9月2日(土)【予兆】

いつもより遅めの朝。昨晩は飲み会があったために駐車場に置いたままの車を取りに行ったあと、買物を済ませて早々に帰宅。飲み疲れか雨に当たったからか、何となく風邪っぽいところもあったので、晩御飯の支度をして早目に休むことにした。

 9月3日(日)【発症】

5時30分起床。思ったほど調子は悪くない。どうやら気のせいだったようだ。この日は父の命日が近いということで墓参りに行くことにしていた。

暑くなりそうだったので、先に市内をジョグ。喉に多少違和感があるが、大したことはないだろう。

墓参りを終え、母の希望で父の生まれ故郷である西目屋村へ。昼食を済ませ、再び弘前市内へ戻ってきたが、徐々に身体に違和感を覚えるように。関節が痛いのは、発熱の症状。心なしか頭も痛い気がする。いやこれは、気のせいではないぞ。

買物を終えて帰路につく頃には、完全に無言になっていた。もしかしたらこれは…と真っ先にコロナを疑いつつも、まさかなあ…と思う自分がいた。

部屋に引きこもり体温を測定すると、37.7℃。20時前には更に体温が上がり、39.3℃を記録。ここに来て弘前市の最高気温と並んでどうする。

マジか。こんな体温見るの、いつ以来だろう。

悪寒はないものの、頭がボーッとする。頭と身体が分離して動いている感じ。それでも22時頃には再び熱が37℃台まで下がったので、一縷の望みを託しつつバナナ一本を貪った。それ以外は、とても食う気にならなかった。頼む、明日から色々目白押しなのだ。何とか解熱してくれ。

9月4日(月)【確定】

結局よく眠れないまま朝を迎えた。5時に起床して熱を測ると、残念ながら38℃台。仕事に行くのを諦め、かかりつけ医の発熱外来を受診することとした。ここまで来たら新型コロナウイルスの感染を疑うしかない。色々思い当たる節を探りつつ、警戒心が薄れていたことを激しく悔やんだ。

早朝の体温計。諦めの境地。

発熱のせいなのか倦怠感が酷く、動こうという気力が湧いてこない。昨日からの症状と車の中で待つので診察時に電話して欲しい旨を記したメモと一緒に、診察券と保険証をあらかじめ病院の受付へ届けるよう母に頼む。再びバナナ1本を貪るが、結局昨日の夜から口にした固形物はバナナのみ。これだと倦怠感に輪をかけるだけと思い、ご飯を軽く盛って梅茶漬けを一気に掻き込んだ。これが食べられるだけでも良しとしよう。

8時30分頃に病院の駐車場に到着、10分ほど車内で待つと電話が掛かってきた。中に入り、廊下に等間隔で置かれた椅子に腰かける。鼻の奥をグリグリされるのはこれで3度目となる。過去2度は何とか掻い潜って陰性だったが、今回は諦めていた。

「お昼までに結果を連絡しますから、今日は支払いが終わったらお帰りください。」

発熱の症状が見られる受診者には陰性陽性問わずこの薬が渡される。

帰る途中で栄養補給できそうなものを幾つか購入。こういうのを買う気力があるだけ、まだ大丈夫だと自分に言い聞かせる。

帰宅すると、大きな発泡スチロールが部屋の前に置かれていた。中にはゼリーやサンドイッチなどが入っていた。家族が僕の「食糧難」を案じて置いてくれたらしい。

布団に横にはなってみるものの、体内からの熱と外気の暑さでなかなか寝付くことができない。そして昼前には病院から「陽性確定」の一報。「5日間は自宅療養、10日間は平時のマスク着用を」との指導。かくして泣きの隔離生活、無断潜入してきたウイルスとの戦いが始まることとなった。

今週、行事が目白押しの職場とは、LINEや電話等を駆使してやり取り。

せめて庁内の庶務システムを外から決裁できるようにはしてもらえないものだろうか、と思った。

聞くと、他にも休んでいる職員が結構いるらしい。そうか、僕だけではないのか…。

まともな固形物を全く口にしていなかったので、夜は「うどん」をリクエストした。一口食べて、味覚が少し変わったと思った。結局半分ちょっとを口に運んで、箸を置いた。

汗の量が半端ではなかったため、まだ熱があったものの、さっと身体をシャワーで洗い流した。

もはや寝ると起きるのメリハリがなくなっていたため、明日体調が良くなったら、起きる時間を長くしよう。そう思いながら22時過ぎに就寝するも、1時間おきに目が覚める。午前3時の時点で、熱は38.6℃。外が暑くて寝苦しいのではなく、自分自身が暑苦しい。

37℃~39℃台を行ったり来たりする熱。明らかにこれまでとは違う咳。先の見えないこの状況から解放される時はやってくるのだろうか…。突然息苦しくなったらどうしよう。そして、そのまま目が覚めなかったらどうしよう。突然そんな恐怖感に苛まれ、ワナワナと震えた。

9月5日(火)【膠着】

結局この日もよく眠れなかった。普段通りの起床を心掛けるも、身体が思うように動いてくれない。症状が劇的に改善するはずもないが、それでも熱が37℃台前半まで下がっていたのは、一筋の光明だった。

栄養ドリンク1本とみかんのゼリーを口にしたあと、使い捨て容器に収められたおにぎりと味噌汁を口に運ぶ。食欲が戻ってきたことは、回復の兆しと捉えよう。ただ、味噌汁の味はやっぱり何か変な感じだった。

青森県は、つい先日コロナの感染状況が全国2番目、過去最大規模の状況と報じられたばかり。その渦中にあって、まんまと流行に乗っかってしまったわけだ。

かかりつけ医の先生によると、月曜日だけで比較すると先週より受診者は減少しており、ピークアウトの兆しも見られるようだ。ただ、やはり風邪との区別がほとんどつかないらしい。

誰しも感染の可能性があるとはいえ、このタイミングで感染したこと、完全に気が緩んでいた自分に腹が立つ。一方で、久し振りに連続した日数を休肝日に充てることができるのは、怪我の功名といったところか。嗚呼、情けない。

昼は肉丼と副菜のワンディッシュと素麺。どれも使い捨て容器に入っている。当然食後の容器は自分で廃棄。ところで味覚の異変は、恐らく喉の奥に残る痛み、違和感が起因しているのだろうか。僕が感じたところでは、辛味と酸味が強く、塩味が薄く感じられる。一方で、酸味が影響するはずの「出汁」の風味が全く感じられない、そんなところだ。

この頃になると、熱が37℃を下回るようになった。ようやく迎えた解熱。ウイルスとの戦いに終止符が打たれようとしているらしい。頑張れ、自分。でも、先は長いぞ。

ここまでの症状等を整理すると、

  • 明らかに風邪に似た症状。発熱、喉の痛み、咳、そして鼻水。
  • 風邪と違うのは、咳が腹の奥底から発せられること。
  • そして、喉の痛みが食道付近に感じられること。
  • 味覚に対する違和感。
  • ダラダラ続く発熱。
  • 発汗の度合い。37℃を超える発熱が丸2日続いたこともあり、ずっと汗が吹き出る感覚。
  • 結果、トイレに行く回数が極端に減った。
  • 気のせいか、胸がモヤモヤ。

家の中は緩く規制線を張っていて、基本は部屋に引きこもり。部屋の前には使い捨てのビニール手袋、空のごみ袋が置かれている状況。家から誰もいなくなった隙を狙って、自分のものを洗濯したり布団を干したり。買い物やその他のことは、家人に任せている状況。さすがにここで出しゃばって感染を広げたら、元も子もないから。

喉の痛み、咳、鼻水はまだ残っている状況だけど、解熱しただけで身も心も相当楽になった。

この日の夜、畏友Zから一通のメールが届いた。

「玄関の外に少しばかりですが食料品を置きました」

僕が新型コロナ陽性になったことを知った彼が届けてくれたのは、とても一人では消化しきれない、しかも明らかに高額な品々。たかだか一人がこんな状況に陥っただけなのに、という申し訳なさが渦巻いたが、ここは素直に甘え、心の底から感謝することにした。

頂き物はこれにとどまらず。本当にありがとう。

(つづく)