偶然ではなく、必然となりつつある災害

8月3日から断続的に発生した大雨により、青森県内では各地で大きな被害が発生しています。また、秋田、山形、新潟の各県でも甚大な被害が発生したほか、そのほかの地域でも被害が発生しました。このたびの大雨で被災された皆様方に、心よりお見舞い申し上げます。

前の職場では県民の方々に直接お話しさせて頂く研修や出前トークといった機会が何度かあり、その都度「青森県に大きな災害が起こらないのはなぜだか分かりますか?それは、単なる偶然です。」と説明していた。

会場からは時折小さな笑い声も聞こえていたが、昨年の夏、本当に偶然であることが下北半島で発生した災害で立証され、更にそれから1年経った今年も、再び災禍に見舞われることとなった。

昨年そして今回の大雨災害に共通することがあるとすれば、いずれも台風から変わった低気圧によってもたらされたものであるということだろうか。

台風のまま接近するのであれば、向こう何時間後の予想位置や勢力が気象庁のホームページなどで明らかにされており、それなりの予測を立てることもできるが、厄介なのは、台風から変わった温帯低気圧や熱帯低気圧は、ただの低気圧ということで、具体的な予想位置や勢力がわからなくなってしまう。結果、気付いたら既に時遅し、といったケースも散見され、特に今回は、大雨や洪水警報の発表と土砂災害警戒情報の発表が間髪入れずに続き、あっという間に溢水、冠水、氾濫してしまったような気がする。

弘前市で冠水したりんご園は、河川敷地の中にあるため、そもそも浸水想定がされていない。

今年の梅雨は東北北部を除いて非常に短期間であったが、その後になって梅雨前線のような停滞前線が現れたり、それがまた西日本に梅雨明け末期を彷彿させるような大雨をもたらしたり、「梅雨」がないはずの北海道で大きな被害が発生したり、これまで南太平洋で発生していた台風が日本近海で相次いで発生したり、とにかく気候変動が顕著になってきている雰囲気。「梅雨」そのものの認識を改める時期に差し掛かっているような気がするし、個人的には夏だけではなく冬の豪雪にも最大限警戒したいところだ。

県内で人的被害がなかったことだけは本当に不幸中の幸いだが、一方で、交通網をはじめとする各種インフラは相当なダメージを負ってしまった。

青森県内で依然として停電している地域では、送電設備が酷くやられているらしく、更に、そこに通じる道路も通行できないため、復旧まではかなりの時間(1ヶ月2ヶ月というレベルではない模様)を要する見通し。

更に、国道を含む複数の道路が土砂の流入などによって通行止めになっているし、青森県から県境を越えた秋田県内の東北自動車道でも大規模な土砂流入があり、こちらも復旧に時間を要しそうな雰囲気だ。

広範囲にわたる被害というよりは、ピンポイントで局所的な被害、それも、半島の先や沿岸部、更にはひとたび災害に見舞われると復旧まで時間を要するようなエリアで災害が起きてしまった、という感じがある。

ここしばらくは、少しの雨でも再び災害が発生する可能性も秘めている。現に、雨がやみ、警報が解除されてしばらくしてから、十和田湖周辺の国道で大規模な土砂崩れが確認されており、当面の間は気が休まらない日が続きそうだが、ともあれまずは、被災された方々が一日も早く元の生活に戻ることができることを願うばかりだ。

もう一つ気がかりなことがある。

県内を走るJR奥羽線、五能線、津軽線の線路施設が大きな被害を受けており、タイミング悪く先月末に報じられた路線ごとの収支と相まって、この先もこういった災害が続くようだと、本県だけではなく東北各地で路線の存続について議論が巻き起こりそうな気がする。

7月28日の報道内容(NHKより)

私事ではあるが、普段は通勤に奥羽線の青森~弘前間を利用しているが、現在この区間でも線路設備への被害によって、長期にわたる運転見合わせが見込まれるとのこと。JRによる代行バスの運行は行わないということで、結果、自家用車での通勤を強いられることになった。地元を走る弘南バスが、つい先日から弘前~青森間に臨時の路線バスを運行し始めたが、片道1000円。自家用車がない、免許を保有していない等で鉄路からバスに乗り換えざるを得ない通勤者もいると思うが、事業者が異なるためJRの定期券も使えず、通勤に往復2000円、1週間で約1万円、1か月だと約4万円って、なかなか払うのに躊躇する額だと思うんですよね。(※JRが運転を再開したことに伴い、バス運行は16日で終了。)

JR線だけではなく、私鉄や第三セクターも災害によるダメージは相当なもの。過去には廃線を余儀なくされた路線も。

災害が起きてしまうと、それをもたらしたのが何なのかなんて、どうでもいいことだけれども、ここ数年で大きく変わりつつある気候変動が、これまで「偶然にも」大きな災害が発生していなかった青森県に、立て続けに災害をもたらしていることは紛れもない事実。これが一過性のものではなく、これから先も続くのかと思うと、気が重くなる。

今回は、指定避難所に駆け込んだ方が数多くいた。これまでであれば避難所を開設しても、酷い時はゼロからひとケタ、多くて数十名程度が避難するような状況だったが、各地で数百人が避難していたことは、身の危険を感じ、自分の身を護るために行動する(自助)という点では非常に大切なことだと思う。空振りを憂慮するのではなく普段から素振りを心がけることが、この先も必要となってくるだろう。

一方で、既に浸水、冠水している状況で避難所に向かおうと思ってもたどり着けなかったケースや、肝心の避難所が開いていなかったケースもあったと聞いている。避難所に無理して行かなくとも、自宅で垂直避難を、とは言うものの、平屋の住宅のどこで垂直に避難すればいいのか、といった課題も出てきた。こうした課題に対してどう対応するのか、災害対応とは本当に日々刻刻と変化を求められる。

鰺ヶ沢町の浸水想定区域。濃い水色の中村川が氾濫した。

これはのちに検証されることだと思うが、今回の大雨によって引き起こされた河川の氾濫や浸水被害については、各市町村で発行しているハザードマップの想定範囲と、さほど相違ないのではないだろうか。ほとんど報じられていない五所川原市内の浸水も、ほぼ合致しているような気がする。なので、これを機に改めて自分の住んでいる地域のハザードマップは、絶対に確認しておいた方がいいです。