箱根駅伝に垣間見たちょっと異様な事態


第96回東京箱根間往復大学駅伝は、青山学院大学が5度目の総合優勝を飾った。

それまでの記録を7分近く短縮する、5時間45分台という驚異的な大会記録を叩き出し、王座を奪還して幕を下ろした。

優勝した青山学院大学の原監督はこの大会記録に、「超高速時代が到来した」と声高らかに叫んでいた。

他の監督も「総合的なものの向上」「大学生のレベルが上がった」と評価していたほか、「靴で全然変わってくる」と、シューズが結果に何らかの影響を及ぼしたことに言及する監督もいたらしい。

往路は2区から5区までの4区間で区間新記録が生まれ、復路も6区、7区、そして10区で区間新記録が生まれた。いくら大学生のレベルが向上したとしても、例え気象やそのほかの条件が競技を行うに最適だったとしても、総合成績での記録更新のほか、往路成績でも復路成績でも大会記録が更新された。その中でも、10区間のうち7区間での記録更新は、ちょっと異常な事態ではないかと僕は思った。

今回、往路ではほとんどの選手がピンク色のシューズを履き、復路では左右非対称のカラーのシューズを履いていた。ランナーの間では広く知られていることだが、ソールの部分にカーボンプレートが埋め込まれた、高反発を謳ったあの厚底シューズは、ナイキ製の製品だ。

12年前、水着の着用を巡ってひと騒動があったことを覚えている人もいることだろう。

スピード社が開発した競泳用水着「レーザー・レーサー」。
この水着を着用した選手がそれまでの世界記録を相次いで更新、縫い目のない特殊素材で作られたその製品に注目が集まった。北京五輪では、ほとんどの選手がこの水着を着用、結果、23もの世界新記録が生まれた。

その後、各社はこの水着を越える競泳用水着を開発しようと躍起になったが、2010年に水着素材を布地のみに制限するルールが決定され、更には身体を覆う範囲まで決められることとなり、結局「レーザー・レーサー」をはじめとする新型水着を公式大会で使用することが、禁止された。

さて、厚底シューズの台頭を振り返ると、今回の箱根駅伝の前、例えば2018年の東京マラソンで16年ぶりに日本記録を更新した設楽悠太選手も、その8か月後のシカゴマラソンでさらに記録を塗り替えた大迫傑選手も、ナイキ製の厚底シューズを履いていた。

そういう意味では、このシューズは記録製造シューズといってもいいのかも知れない。世界に目を向けると、非公式ながらフルマラソンで2時間を切るという、とんでもない記録が出ている。

確かに11月に出場したつくばマラソンでも、ナイキ製の厚底シューズを着用する選手がたくさんいた。(かくいう僕も、その日はナイキ製のシューズを履いていたけれど。)

一時期、ランニングはいかに薄底であるべきかが追求されていたと思ったが、日本記録の更新をきっかけに、あっという間に厚底ブームがランニングを席巻していた。

でも、数年前までは箱根駅伝でも薄底の「adizero boost takumi」シリーズが幅を利かせていた時代も、確かありましたよね。

…ということは、ランニングはこの後も薄底と厚底のブームが交互にやってくるのだろうか。

「2020箱根駅伝 “厚底”に履き替えた青山学院大が優勝奪還/ナイキ着用率はナント84.3%に急増!」

「箱根駅伝、選手が「厚底」靴をあえて選ぶ5大理由」

箱根駅伝を見ながら気になったのは、85%近くのランナーがナイキ製のシューズを履き、そして区間新が続々と更新されたという事実だ。

確かに駅伝やランニングは、いかに速く走るかを競う競技。このシューズが規制されているわけではないし、何を履くのかはランナーの自由だ。速ければそれに越したことはない。しかし、今回のこの状況を見て、素直に「凄いな」とは思えなかった。実力のある選手が揃い、群雄割拠の状況の中、選手の皆さんがシューズの傀儡になっていないだろうか、とふと思ったのだ。

今後、この状況に何らかの制限が課せられる可能性も全く否定できないだろう。12年前の水泳での騒動が、もしかしたらマラソン業界でも起こりうる、ということがちょっと気がかりなのだ。

それでもメーカー各社が、「厚底」を超え「速さ」を追求するため、更に次の仕掛けを用意してくることは明白。

さて、2020年以降はどんなシューズが台頭し、そして席巻するのだろう。

正直、今回のような3万円を超えるシューズを僕は購入する勇気がないし、履きこなせる自信もない。いや、何を履こうとランナーの勝手なので、これは単なる嫉妬と嘲笑して頂いて結構。

思い返してみるとこれまで僕がランニングに取り組んでいたとき、足に合うシューズを探すよりも、シューズに合う脚づくりに奔走していなかっただろうか。

足を怪我しているタイミングは、シューズを切り替えた時が多いかも知れない。

色んなランニングシューズが世に輩出されているが、僕はシューズにに関する知識も蘊蓄も全く持ち合わせていない。

当たり前のことだが、結局最後は自分の脚に合うか合わないか、これに尽きるんじゃないですかね。いや、僕もランニングデビューはナイキ製のシューズだったし、今も数足持っているんだけどね。


投稿者: のんべ

1971(昭和46)年 青森県生まれ。弘前市在住の青森県職員。 プリンスとビールと豆腐とラーメンを愛する。安いカメラでいかに安っぽくない写真を撮影するかに興味あり。 ブログの内容の多くは、いつの間にか趣味となった「走ること」がメインです。