反省のフリなら猿でもできる ~ペースランナー失態記(前編)~ #弘前白神アップルマラソン

昨年は台風の影響で中止となった弘前・白神アップルマラソン。今年もギリギリまで台風の進路と天気に気を揉むこととなった。

私事で恐縮だが、今年は大会前日からミニ観光ツアーの中でコース案内の役割を担うなど、これまで以上に大会への関与の度合いが深まった。それもこれも亡父が繋いでくれた御縁のお陰と感謝しながら、しっかりと最低限の役割を務めた。夕方からの前夜祭にも参加し、突然の無茶振り(ペースランナーから見たコースのポイントや留意点を説明して欲しい、というもの)があったものの、真ん前にいたゲストランナーの吉田香織さんがうん、うん、と頷きながら笑っていたので、まあ、間違った説明ではなかった、ということで。(ちなみにどんな説明をしたのかは、秘密です。)

前夜祭が終わって外に出ると、本格的に降っていた雨がやや小降りになっていた。未明にはきっと雨も上がるだろうが、この雨がどういう影響を及ぼすか、少し気になるところではあった。

今年もフルマラソンで4時間のペースランナーを務める、というアナウンスをし続けていた。これが最大の役割であり、しっかり全うする気満々だったが、8月末から1か月以上引かない咳、10日前に突如再発したアキレス腱痛、更に4日前には歯痛に苦しむという状態。アキレス腱痛はロキ○ニンではない市販の貼り薬が絶大なる効果を発揮し、歯痛は同じランニングクラブの名医・よっちの手で痛みの要因を取り除いてもらった。満身創痍の状態からは脱したものの、アキレス腱痛の影響で全く走り込んでいないことが気がかりであると同時に、大きな不安材料だった。

大会当日は5時過ぎに起床、普段通りの日曜日の朝を過ごした。いつもより米を多めに食べ(今回は、大会前に必ず口に運んでいた餅を食べなかった。思い返せばこれも失敗の要因)、7時40分頃に自宅を出発。

スタート地点までは、自宅から歩いてちょうど1kmのところにある。こんな間近な場所でマラソン大会が行われるということにありがたみを感じつつ、遠くは九州や海外から来られたランナーのためにも、しっかり役割を全うしようと、気合いだけは充分だった。
8時過ぎ、弘前公園の南にある追手門の前で、弘前公園ランニングクラブの集合写真を撮影。

クラブは今年で結成10年を迎えるが、僕も顔を出すようになってから7年以上の年月が過ぎていた。いろんな事があったけれど、今もこうやってたくさんの人が集まることが、何だか自分のことのように嬉しかった。

続いて、本日ペースランナーを務める面々での集合写真。フルマラソンは3時間30分から30分刻みで5時間30分まで、ハーフマラソンは2時間と3時間にそれぞれペースランナーを配置。全員気心の知れたメンバーで、経験者も多いので、きっとしっかり役割を果たすことだろう。

それよりも、自分自身が役割を果たすことができるのだろうかという不安がずっと付きまとっていた。以前であれば、絶対にやれる、やりとげるという自信しかなかったのだが、情けないことに今回はそう言いきれる要素があまりにも乏しかった。そしてその不安は、この後見事に的中することとなってしまった。

今一つ乗り切れない気持ちを鼓舞するように、大丈夫、大丈夫、とずっと言い聞かせる。
スタートの時間が迫り、スタート地点へと向かう。「4時間以内」と書かれたプラカードを手にする係員の前におもむろに立つ。周囲に聞こえるように、注意点を幾つか話す。今年はハーフマラソンと同じコースであるため、給水ポイントの混雑が必至であること。一部コースが狭いところもあるので、接触に注意すること。1kmを概ね5分40秒前後で走る予定であること、など。

今回この時間帯を受け持つのは3名。トミーは弘前公園RCのキャプテンであり、今のペースランナーが定着する前に非公認で一緒にペースランナーを務めた、ペースランナー導入の提唱者。スギさんは、今回が初めてのペースランナーだが、ここ最近はコンスタントにタイムを弾き出しており、3人の中でも抜群の安定感がある。

9時に号砲が鳴り、いよいよスタート。

スタートの混雑もそれほどではなく、比較的スムーズに走り出した。下りの城西大橋では、ランナーから「あれが岩木山ですか?」と聞かれる。
「そうです、あれが岩木山です。」

ランナーからの問いかけに答えるのもペースランナーの役割だと自負している。途中の給水ポイントや留意すべきところ、路面の状態などは周囲にしっかり伝えていく。やり過ぎかもしれないが、僕はそれぐらいの役割を担っているという気概を持っていた。

残念ながら岩木山は山頂付近に雲が乗っかっていて全景を望むことはできなかったが、じゃ、行ってくる、と心の中で呟きながら、いよいよ42kmのプチ旅行が始まった。

百聞は一見に如かず。11kmまでのラップは以下のとおり。

1km当たり5分35秒から5分40秒というターゲットタイムを、ほぼ踏襲しながら走っている。給水ポイントは両側に設けられていたが、相変わらずテーブルの数が圧倒的に少ないため、予想通り大混雑。僕自身も数ヶ所で取りこぼしがあり、手持ちのOS1ゼリーで場をしのいだものの、結果的にはこれが後半に大きな影響を及ぼす伏線となった。

続いて中間地点を過ぎた辺りまで。多少ばらつきがあるのは、給水でもたついたから。ちなみに4時間以内で完走するには1km当たり5分41秒前後が設定タイムとなるが、それよりもやや速めにしていたのは、後半になってペースが落ちてくるランナーが多いことへの配慮。少し余裕を持って折り返すという作戦だった。

そうそう、結果として往路は僕が先頭を切って走る格好になったが、前述のとおり途中の給水や下り坂、水溜まり注意等のアナウンスを怠らなかったし、後方にいたスギさんはハーフマラソンのランナーの追い越しに注意するよう喚起していた。トミーは中盤で全体を統率しているといった感じで、全く事前の打ち合わせなしでそれぞれが役割をこなしていることが、何だか誇らしかった。

(後編へ続く)