ジョンガリアンの憂鬱 -平川市・たけのこマラソン-

自分の中ではあまり意識したことがないのだが、僕は脚だけが異常に発達しているらしい。

「脚だけ見ると…速そうだねえ。」と言われたこと、数度。「脚、凄いっすね!」と言われたこと、数度。
周囲に言わせると、大腿部からふくらはぎにかけての筋肉が隆々としていて、もの凄い健脚の持ち主のように見える、のだそうだ。
ただし、「ように見える」だけなので、凄い健脚の持ち主ではないことだけは断言しておこう。

平川市碇ヶ関で行われた「たけのこマラソン」。
前日までの雨は未明までに上がり、涼しくも多少蒸し暑い大会当日を迎えた。例年この大会は暑い、といった印象が強いけれど、今年は例年に比べるとまだ走りやすそうな気がした。

それまではハーフマラソンにエントリーしていたが、昨年から10kmにエントリーするようになった。

このコースを走り終えた(翌日ではなく)翌々日からの筋肉痛や疲労度がハンパではなく、しばらく尾を引くこと、なぜか大会の前後にケガをすることが多いことなどがその理由だった。

もっとも、昨年はケガで走ることができなかった。だから、今回がこの大会での10km初挑戦ということになった。

何となくコースはわかっていたが、10kmを侮るなかれ。
一番の問題は、自分自身のモチベーションが全く上がっていなかったこと。
「ケガをしないためにも、無理しない」という言い訳を、走る前から何度も反芻する。

設定タイムは、45分。前半は抑えて3kmまでの上りに耐え、そこからしばらく続く下りで加速、勢いのまま残り3kmの上り下りをやり過ごす、というプラン。

9時40分、10㎞がスタート。4分半のイーブンペースが理想だけれど、コースのアップダウンを鑑みるとそんなにうまく行くはずがない。

スタートして500mぐらいのところから最初の上りが始まる。1キロ付近で一度フラット(実際は緩い上り)になるも、先の約1.5kmは延々と上りが続く。

ゴールしてから記録を見て知ったことなのだが、最初の1kmを4分ちょうどで走っていたらしい。完全に突っ込み気味だった。そこから3kmまでは上り基調となり、1km当たり5分を要した。その後しばらく続く下りを、3分40秒前後で駆け抜けていた。ハーフとの分岐点で畏友NZM氏の姿を確認。ある意味、この大会を陰で支える彼の顔を見たくてこの大会に出ているようなものだ。手を振って声援に応えるも、その先の7km手前でガクンと失速が始まった。

古懸地区に入る上りで、脚を使い過ぎてジ・エンド。

結局、見かけ倒しの筋肉は何の役にも立たなかった。上り坂を歩きつつ、声援を送る地区の皆さんに愛想を振りまきながら、そこから先は走って歩いてを繰り返す体たらくっぷりで、脚も気持ちも完全にプツリと切れた。多分3~4回歩いただろう。

まあ、もともと無理をしないという前提だったから…と言い訳を考え始める。
緩い上りが続く中、後続のランナー数名が、荒い息で横を駆け抜ける。がしかし、僕にはそれに追随するだけの根性がなかった。
結果、7kmから8kmまでで、5分半も要することとなった。

これでは、普段の練習と何も変わらないじゃないか。大会に出場した以上は、何かを掴み取らないと。
気持ちを切り替えて、走り出す。

前半のペースを取り戻すまでには至らなかったが、残り1km地点、地元の小学校の生徒の声援に手を振り声を上げて応じ、坂を下る。残り700m、最後まで笑って声援に応えようじゃないか。
「ありがとう!」

声援に応えているときは調子がいいというジンクスが崩れたが、それはそれで仕方のないこと。年齢相応の走り方というのがあるのだから、いつまでもジンクスに頼っているわけにはいかないのだ。

結局、設定より1分早い44分という、ごくごく平凡なタイムでゴールとなった。いや、設定通りだから別にいいのか…。

せっかく大会に出場したのに、得られるものがほとんどない中、改めて現状を思い知らされたことが唯一の収穫、といったところだろうか。理由はわかっている。わかっているだけに、それを放置したままにしていた自分に憤りを感じていた。

ただ、基本的に「たけのこマラソン」は、コースや景色を楽しみながら走るのが一番性に合っている気がする。

地元にとっては、年に一度のお祭りのようなものなのだろう。
午前中の限られた時間とはいえ、生活道路をランナーのために開放しなければならないという不便を強いられながら、「頑張れー、頑張れー」と声援を送り続ける地元の皆さんや、休日返上でエイドでの給水や受付に当たっていた中学生や声援を送っていた小学生たちには、本当に頭の下がる思いだ。

それにしても、ランナーに振舞われる「たけのこ汁」は、今年も抜群に美味しかった。

ただ、強いて改善点を挙げるとするならば、トイレ問題。以前から仮設トイレが設置されていた中学校体育館脇では、列に並ぶ男性が「なんでこんなに仮設トイレの数が減ったんだ!」と憤慨していた。数が減ったことで、ちょっとした混乱を招いていたように見受けられた。トイレの場所はランナーにとってとてつもなく重要なことだから。

あと、毎年Tシャツを頂いているのだけれど、温泉の無料入浴券が添えられているのなら、タオルでもいいのかな、とか思ったり。(業者さんとの契約などもあり、難しいんでしょうけれど。)

毎年大会が終わった後には「二度と出るものか!」と思うのだが、時が流れ、開催案内が届くと、「しょうがない、またエントリーするか…」と思わせてしまう、不思議な魅力なのか魔力なのかそれとも魔物なのか、そんなものがこの大会には潜んでいるような気がする。

さて、来年はどうなることやら。