山下達郎というジャンルの音楽

「こんばんは青森!1年振りの青森、どうぞよろしく!」

2019年6月16日、青森市にあるリンクステーションホール青森(青森市文化会館)で開催された山下達郎のライブに足を運んだ。

実は1年振りじゃなくて2年振りなんだよなあ…なんてことを思いながら、結局ドップリと3時間以上、彼の音楽に浸った。

サザンオールスターズの札幌公演からわずか1週間後。

二つの音楽的なジャンルは異なるし、ノリも規模も全然違うが、どちらも日本国内のエンターテイメントの最高峰だと僕は勝手に思っている。その両巨頭のライブを立て続けに鑑賞するということで、果たして自分の中での気持ちの切り替えができるものなのかと思っていたが、いざ始まってみると全く違和感なくコンサートの雰囲気に溶け込むことができた。

ここ数年、達郎氏のライブにはなるべく足を運ぶようにしている。青森市の会場は毎回リンクステーションホール(青森市文化会館)だが、会場の規模や音響も気に入っているようで、かつては2日間続けて公演を行ったこともあった。あの青森で、だ。

しかし冒頭で触れたとおり、毎年のようにコンサートツアーを開催している中、昨年は青森県内での開催がなかったため、仙台に足を運ぶこととなった。

今年のツアーは6月6日の千葉県市川市を皮切りに5か月間、26都市50本の長丁場となる予定だったが、キーボードの難波弘之氏が病気療養に専念した結果、6日の市川市と10日の宇都宮市での公演が延期となった。結果、14日の盛岡市での公演がツアー初日となり、青森市での開催はツアー2本目となった。大瀧詠一さんの生まれ故郷である岩手県から始まったというのも、何だか因縁めいている。そういえば、声が出なくなって途中で公演を中止、延期したのも盛岡だった。

さて、2本目の青森公演は、ある意味肩慣らしみたいなものだろうか。肝心の難波さんは大丈夫なのだろうか。齢を重ねたことを言い訳にして、例年より短めで済ませてしまうんじゃないだろうか。
結局そんなこちらのアホみたいな邪推を嘲笑うかのように、いつも通りパワフルなステージを繰り広げた。
全幅の信頼を寄せているであろうバンドメンバーの安定感たるや、もう…。

そういう意味では、誰よりも浮き足立って見えたのがご本人だった、とも言えるかも知れない。

ネタばらしになってしまうので詳細は明かさないが、たまに見え隠れする些細な本人の動揺が、まだツアー2本目だということを逆に印象付けた。

それにしても脇を固めるメンバー、ホントに凄い。佐橋佳幸氏のギターに惚れ惚れし、伊藤広規氏のベースにうっとりし、小笠原拓海氏のドラムに仰天し、柴田俊文氏のキーボードに敬服し…。もちろん他のメンバー、病み上がりの難波氏、コーラスのお三方、サックスの宮里さんらが繰り広げるステージ上のパフォーマンスに、時が経つのも忘れてしまうぐらい熱中していた。

先に触れたとおり、サザンオールスターズと山下達郎はジャンルが異なるが、桑田佳祐氏と達郎氏は時々意気投合して、夫婦で楽曲にコーラス参加したりもするので(山下達郎「蒼氓」、竹内まりや「静かなる伝説(レジェンド)」)、どこか共鳴するところがあるのかも知れない。もっとも今回のMCでは、おや?と思うような発言もあったが、まあ、それもいつものこと、ということで…。(恐らく口パクとアクロバットまがいでドームを席巻するアイドルを揶揄してのことなのだと信じたい。)

そしてこの二組に共通しているのが、コンサートで外せない「鉄板」を幾つか抱えているということだ。

少なくとも達郎氏においては、コンサートの冒頭、アカペラコーナーがある中盤、そして本編最後とコンサートの締めくくりは、毎回同じ曲だ。(少なくとも、自分が足を運んだコンサートは、ここ数年毎回同じ展開だった。チケットが取れなかった2014年のマニアックツアーは違う展開だったようだが。)

毎回同じだからこそ「さあ始まったぞ!お、中盤だな、いよいよラストか。ああ、もう終演か。」という展開が手に取るようにわかるので、終演後の観客の「引き」も早いのだ。

ただし、それ以外で何が飛び出すかがわからないので、超楽しいし、何度足を運んでも全く飽きないのだ。
事実今回だって、終演後に会場を出てから、完成形を見たくて他の会場のコンサートを観ることができないかと模索を始めるぐらいなんだから。

ということで、コンサート観るなら誰がいい?と聞かれたら、間違いなく「山下達郎!」と即答することだろう。

あ、そうそう。一つだけネタばらし。

ここ最近のツアーは冬以外の時期に開催しているけれど、2020年は夏に東京五輪が開催されるし、その関係で宿泊先を確保するのが大変になる、という配慮から、来年はツアーをやらないそうだ。そして、積み残しとなっているあれやこれやを進めながら、「勉強する」といったことを話していた。

66歳になってもなお、現状に満足することなく音楽と向き合う姿勢、素晴らしいです。

こうなるとホントに、どんなジャンルにも属さない「山下達郎」という音楽ですわ。そう、僕が好きな「Prince」みたいに。
ということで2年後、更にパワーアップした姿を見られることを願って。

…さてまじめな話、次の鑑賞はどこに狙いを定めようかな。

(一部敬称略)