サザンオールスターズ LIVE TOUR 2019 札幌公演(初日)鑑賞記

ネタバレはしていないつもりですが、もしもネタバレと感じてしまったらごめんなさい。

サザンオールスターズのライブを6年ぶりに鑑賞してきた。昨年9月、北海道胆振東部地震の支援活動で厚真町を訪れて以来、約9か月ぶりの北海道。
移動中の機内、そして車窓から北海道の風景を眺めながら、当時のことだけではなく、なぜかぼんやりと父のことを色々思い返していた。


僕にとってサザンオールスターズは、晩年の父と交わした数少ない言葉の媒体だった。無期限活動停止を発表した後の最後のライブ。雨降る日産スタジアムで観た、最初で最後のサザンオールスターズ。

「面白がったが。」「ああ、いがったよ。」

そんな短い会話のやり取りだったような気がする。しかし、ライブの余韻に浸る間もなく、2週間後に父がこの世を去った。

それから5年後、サザンオールスターズは復活を遂げた。復活ツアーのファイナルとなった宮城スタジアムで観たライブ。5年前の横浜が、僕自身にとって最初で最後のサザンではなかったと感涙に咽びながら、父が二度と戻ってこないことへの寂しさを、ひしひしと感じることとなった…。


札幌に到着したのは15時近く。開演は18時だが、ここからの移動を考えるとあまり時間がないと思い、手早く用事を済ませてホテルにチェックインした。初めて訪れる札幌ドームへは、地下鉄南北線(さっぽろ→平岸)250円と、シャトルバス(平岸→札幌ドーム)210円で移動した。

地下鉄東豊線を利用すれば、札幌ドームの最寄り駅となる福住駅まで15分もかからずに移動できると聞いていたが、混雑を鑑みれば他のルートで移動した方が良い、とのアドバイスを受けていた。結局往路は40分ぐらい、復路は30分ぐらいを要しただろうか。行きも帰りもバス(普通の路線バスの車輛)は立ち席となってしまったが、まあ、駅までの行列に苦悶し、ぎゅうぎゅう詰めの満員電車に揺られるよりはマシだったかな、というのが率直な感想だ。

さて、18時過ぎから始まったライブは、21時30分頃まで繰り広げられた。
40周年ということで、初期の楽曲もかなり演奏され、例えば「TSUNAMI」をきっかけにサザンを聴くようになった新しいファンや、最新の企画アルバム「海のOh Yeah!」を聞き込んできたファンからすると、少々肩透かしを食らったような内容だったかも知れない。

ツアーは終盤だが、セットリストは色々なサイトに掲載されているようなので、ここでは割愛したい。

(転売対策。座席は当日の会場で明らかになる。)

僕らは1塁側スタンドのやや下寄りの席にいたので、ステージそのものは見えるものの、結局スクリーンを頼ることとなった。ステージ上の動きをスクリーンで確認する、みたいな感じだ。

メドレーっぽい曲も含め、何と36曲も演奏したのだが、全ての演奏が終わり、ステージに残ったメンバー5人がステージの端から端まで歩いて観客の声援に応えている。その光景を眺めながら、一足早く会場を後にした。

もっとも、終演後の混雑を避けるためだろうか、アンコールが始まる頃から観客の中途退場がちらほら見受けられており、アリーナからスタンドを経由して出口へ向かう人がひっきりなしだった。まだ演奏が続く中、ほんの少しではなく、結構な数の人たちが席を離れていたので、正直驚いた。ちなみに、タクシー乗り場の行列は尋常ではなかった。

もう一つは、トイレ。予想通り開演前のトイレは大混雑。特に女子トイレは、あと20分で開演となるところ、40分以上要するというアナウンスがされていたらしい。結果、演奏の合間で席を離れる観客が、これもまた相当数見受けられた。まあ、ライブの楽しみ方は人それぞれだから、とやかく言う筋合いもないんですけどね。実はもう一つ残念なことがあったのだけれど、きっと俄かファンの為せる業なのだろうと、敢えてここには触れずにおく。ただ一ついえば、サザンオールスターズのライブなんだから、しかと見届けろよ、と。そして、しっかり誰かにこの感動を伝えろよ、と。

ライブに足を運ぶ時は、あれが聴きたい、これを演奏して欲しい、という願望が誰にでもあることだろう。しかし、40年にもわたる歴史を鑑みるに、ライブに足を運んだ人全てのそれを叶えるとなれば、持ち歌全曲を演奏するしかないのではないか。

だからこそ、今回のような奇をてらったような選曲になるのも何ら不思議ではないし、逆に「温故知新」ならぬ「新しきを温めて故きを知る」というのも、僕らみたいな俄かファンにとってはいいことなんじゃないかと思う。そして、例えるならば、誰もが知っているような楽曲、いわば直球のど真ん中ばかりではなく、意表を突いた変化球でファンの虚を突くところがライブの醍醐味なのだと、今回でまだサザンオールスターズのライブを3度しか観ていない俄かファンの僕が感じたことだった。

僕の隣に座っていたオバチャンは、ライブの中盤で何の曲なのか全くわからない状況が続いていたらしく、曲の演奏が始まるたびに「全然わかんない…」とぼやいていたけれど、みんなが知っている曲ばかりを期待するのであれば、CDを聴いていればいいのです。しばらく陽の当たっていない「えっ?この曲何?」というような楽曲を演奏するから、ライブは面白いのです…と思いませんか。そりゃ知っている曲を聴いてハジけるのが一番いいんでしょうけれど、よ。

個人的には、初めての札幌ドーム、そして3度目のサザンのライブを、感傷に浸ることもなく、ただ素直に純粋に楽しんだ。

そして、還暦を過ぎてもなお、日本の音楽シーンの最前線を走り続ける5人のメンバーには、羨望の眼差しと畏敬の念を抱かざるを得なかった。いい意味で「年甲斐もなく…」というフレーズが本当に似合う人たちだと敬服した、そんな一夜だった。

(来場者全員に配られた三ツ矢サイダー)