奈良美智『A to Z』最終日

奈良美智+grafによる「A to Z」展が最終日だということで、妻と一緒に行ってきました。
http://a-to-z.heteml.jp/modules/news/

何を隠そうこの会場、その気になれば家からは歩いてでも行けるほどの距離。しかも、毎日毎日通勤途中で会場の横を通っているのに、よりによって最終日まで行かなかった俺って、ホントにバカだなぁと思いました。

最終日だし、きっと混んでいるんだろうなぁ。

でも午前中なら未だ空いているかな…と淡い期待を抱きつつ会場に行ってみると…。
会場入り口で愕然。
何と、チケット売り場にはとんでもない行列が出来ていたのです!!
ううむ…やはりこういうことになっていたか…。
A to Z

結局、気温15度を下回る曇天の下、時折寒風が吹き付ける中、約15分待ってようやく会場内へ。
妻曰く「どうせザッと見て終わるから、30分位で出れるんじゃない?」と言っていたものの、どうしてどうして終わってみると1時間以上も建物の中にいたことに。ええ。じっくり堪能して参りました。これでも短いくらい、かな?

会場となった建物は、元々酒蔵だった倉庫。煉瓦倉庫として市民でも知らない人はいないくらい有名。しかしその役目を終えてからは、廃墟同然にただ「建っているだけ」の建物でした。
市でも利活用を図るべく公金を投入しての購入を検討しましたが、結局合意に至らず、現在も個人の所有物のまま。

この建物を美術展の会場にするという構想は以前からあったものの、本格的な美術展が開催されたのは奈良氏の個展が初めてで、奈良氏の個展は今回が通算3度目の開催。
どうやら本人の話では、「ここを会場にするのはこれが最後」ということで、2度目を見そびれた僕としては何としても行かなければ、と思っていたのですが、後手後手に回ることとなり、最終日まで行けずじまいだった、というワケでして…。

さて、会場に足を踏み入れた我々を待ち受けていたのは、薄暗く埃っぽいスペースでした。
そこには、AからZまでナンバリングされた26の小屋(ブース)が。
最初の展覧会の時と比較するのはナンセンスなのかも知れませんが、単なる作品の展示会といった印象の強かった初回とはうって変わって、会場に根付く「息吹」のようなものを強く感じました。
それは恐らく、AからZまで設けられた小屋に配置された作品の一つ一つに、「魂」が込められていたからなのでしょう(もちろん最初の展覧会の時も「魂」は込められていたとは思いますが…)。
小屋の設置はgrafが行い、その中に奈良作品を展示するというコラボレーション。

タイかベトナムあたりにでもありそうな小さな村を彷彿させるような「建物」の数々が、広々としたスペースに一つの街並みを形成していました。
その中に佇む自分自身が、奈良ワールドの一住民にでもなったような、そんな気分に駆られました。
もっと早く足を運べばよかった…と、激しく後悔。
更に、首からiPodをぶら下げる女性を見て、以前「A to Z」のポッドキャストをDLしておいたiPodを持参するのを忘れたことに気づき、またまた後悔。

そんな後悔の連続ばかりでも作品を堪能することが出来ないので、特に印象的だった作品等をいくつか。

・あちこちにあった覗き穴
・県立美術館に展示されている「あおもり犬」のミニチュア。
・「八角堂」(Z)で涙を流す女の子たちの姿。
・随所に見受けられた動物たち。
・壁一面に張り巡らせられたLP盤のジャケット。
・キリンの顔を見ようとはしごに登り、天井の上からヌゥッと顔を出す観覧者。
等々…。

換気が悪く、しかも来場客が非常に多いため、若干酸欠気味になっていることを感じつつ、次のブースへ。
タイル張りの寒々としたスペース。
そこにあったのは、今回の「A to Z」展に至るまでの経緯を垣間見ることの出来る写真の数々。

更に、今回初登場となる2階のブース。急な階段を登って2階に行くと、桟橋が続いています。桟橋の先には「黒い海」。そして、「金の船」。更には…ムフフちょっと言えないな。
これもまた非常に不思議な空間でした。

そこを見終えて戻る途中にあったのは、古い学校を彷彿させる空間。
その部屋の中には、奈良氏自身が使っていると思われる道具の数々や奈良氏本人宛に送信されたFAX原稿や、スケジュールの記載されたカレンダーなどが無造作に配置されていました。

2階のブースは展覧スペースが限られているために入場制限が課せられており、我々が2階に上るまでには10分ほど待たされましたが、見終えて1階に下りてくると、その列は更に長くなっていました。
思うに奈良さんは、非常に細かい作業が得意なんだろうな、と。よく言えば繊細な技術の持ち主、悪くいえばチマチマした作業好きなオッサン(笑)。妻曰く「性格が似てるんじゃない?」(苦笑)。

約1時間15分の展覧を終え、妻が「これじゃグッズも欲しくなるよね!」というのでグッズ売り場に向かうと…。

何と、チケット売り場を凌ぐ行列!!(ちなみにこの時点でチケット売り場の行列はなくなっていた。)
聞くと、50分待ちだそうな…。
さすがにこれには辟易し、結局グッズ売り場には足を向けず…。
もっと早く来ていれば、こんなことにはならなかっただろうに…(苦笑)。

夕方もう一度来て、グッズ購入しようか、なんて話にもなったんですが、結局グッズの購入は見送り。ま、恐らく更に混雑していたことは間違いなかったことでしょう。仕方ないか。

弘前「AtoZ」展 3カ月の展示に幕

弘前市出身の現代美術家奈良美智さんが、七月から同市の吉井酒造煉瓦倉庫で開いていた三度目の展覧会「A to Z」が二十二日、閉幕した。最終日は三千五百人余りのファンが詰め掛け、期間中の来場者は約七万九千人となった。

http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2006/20061022211104.asp

開催期間中、『A to Z』の観覧目的で大勢の観光客(特に若い人たち)が訪れた弘前の街には、間違いなく「潤い」があり、「活気」がありました。
弘前市民として一つだけ欲を言うのであれば、関東方面から夜行バスでやって来て、弘前に朝到着、その日のうちに『A to Z』展を堪能して、またその日の夜出発のバスに乗り込んで帰る…という人が多かったらしく、事実上日帰りの行程で弘前を堪能されたみたいですが、せめて1泊していろんなところを観て欲しかったな…。

今朝も会場の脇を通って通勤しましたが、まだ「祭りのあと」といった空気が漂っていました。
きっと、建物から展示物の撤去が始まって、またもぬけの殻に戻るまでは、そんなに時間は要さないんだろうな。

集客力のあった『A to Z』展が終わり、これから弘前の街はどうなっていくんだろう。
また以前のような、閉塞感漂う街に戻ってしまうのかな…。

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