畏友たちとの「約束事」 #50歳万歳

僕には、気の置けない畏友が5人いる。
大事な仲間であり、同志であり、ライバルであり、そしてホントに困った時に手を差し伸べてくれる救世主であり、僕にとっては絶対に欠かすことのできない、家族同様に大切な存在、「親友」いやまさに「心友」だ。

6人の共通点は、同じ中学校を一緒に卒業したということだけだが、小学校入学前、つまり幼稚園から一緒だったというメンバーがいる一方で、一度も同じクラスになったことがないメンバーもいる。以前から個々の関係はあったが、この6人で何となく集まり始めたのが、確か大学生になった頃だと記憶しているので、かれこれ30年以上も連んでいることになる。

「いつもの」と称した6人での飲み会はもちろん、カラオケに行ったり、キャンプに出掛けたり、釣りに出掛けたり、それぞれの彼女を連れ立って出かけたことも幾度となくあった。

2017年12月末の「いつもの」忘年会。この時はタガシが参加できず。そういえば6人の忘年会、かれこれ四半世紀は続いている気がする。

この間、それぞれが大小色々やらかしながらも、役人に教員、消防職員、そして検査技師と、かなり「お堅い仕事」に就き、そして、家庭を持った。
思い起こせば30年以上の間に色んな紆余曲折があったが、恐らく数年後には孫を抱く、そんな時期がやってくることだろう。

2019年の年の瀬。サトルが参加できなかった時。

昨年のある日のこと。
新型コロナウイルス感染症への対応に追われる中、合間に開催した「いつもの」メンバーとの小宴。健康のこと、家族のことなどをネタにしながら飲んでいるうちに、50歳の大台に突入した者が数名出てきたことに話が及んだ。

「全員が50歳を迎えたら、集合写真でも撮るか。」
誰かが発した冗談めいた発言に、みんなが食いついた。
「それ、面白いね。スタジオに行って写真撮影でもやるか。」

2018年12月の忘年会。この時もタガシが参加できず。

本気半分、冗談半分でのやり取りだったので、その場限りの「ネタ」ぐらいにしか思わなかったかも知れないが、僕の中では、これは絶対にやりたい、という気持ちが芽生え、その思いは日に日にどんどん膨れていった。

ちなみに、6人の中で最後に誕生日を迎えるのは、僕。最初に誕生日を迎えるカツは6月生まれ。なので、僕が50歳を迎えた1月末からカツが51歳を迎える6月までの、実質4か月ちょっとの間で何とか日程をやりくりできないものかと考え始めるようになった。

2月以降はそれぞれが繁忙期を迎え、3月末~4月初旬は全く余裕がなくなるはずだ。
となると、撮影するタイミングとしては4月中旬から下旬。
さくらの花が咲き誇る下で撮影するのもいいかも知れない…なんてことを朧気に考え始めていた。

僕が50歳の誕生日を迎えた直後、恐る恐るみんなにメールを送った。
全員が50歳になった記念に、6人で50歳の記念写真を撮影したいこと。それを、4月~5月の間でやりたいこと。
僕が勝手に決めていた、彼らとの「約束事」だった。
恐る恐るではあったが、意外なほど快諾を得ることとなり、(一堂に会して決めたわけではないが)満場一致で実施を決定!

2019年8月。久し振りに6人が集った。この後はタイミングが合わず、6人集合がなかなか叶わなかった。

ところが今度は、僕の事情がそれを許さなくなった。3月、「現所属残留前提」のうえで、4月中旬から都内で約1週間研修を受けてきて欲しい、という指示が舞い込んできたのだ。
折しも、緊急事態宣言が1月に出され、3月になっても収束する気配がなく、2度目の延長が決定した時期。研修を受けた後2週間は、他の人との接触を避ける必要があるだろう。となると、計画の実行は4月下旬どころか5月、それも後半へとずれ込んでしまうことが懸念された。
…が、結局この研修は僕以外の人が行くこととなり、研修後2週間の心配は不要となった。(ホッ)

自分が会場の手配と日程調整を行うことにしていた手前、さくらの下での撮影を諦め、フォトスタジオに撮影をお願いすることとした。家庭の事情もあり、参加が危ぶまれたメンバーもいたが、万事調整の結果2度の日程変更を経て、5月8日、撮影に臨むことを決定した。

撮影日当日。珍しく緊張して、朝早く目が覚めた。外は、雨が降っている。

たかだか写真撮影ではあったが、青森県内における新型コロナウイルスの感染状況が日に日に悪化傾向を辿っており、弘前保健所管内でも複数の感染者が確認されるなど、楽観視できる雰囲気ではなかったからだ。果たしてこの時期に撮影を強行してもいいものか…。

しかし、このタイミングを逃すときっと「50歳を迎えたいつものメンバーで、まともな集合写真を撮る」という、儚くも実にくだらない僕の小さな目的を達成する機会は、きっとなくなることだろう。

9時45分。三々五々に畏友たちがスタジオの駐車場へと集まってきた。
10時から予約していたので、全員が揃う前に受付を済ませることにした。
入り口で手指消毒、検温を行って、店内へ。
受付票に必要事項とそれぞれの名前を記入している間に、全員が揃った。
実は、一人ぐらい風変わりな格好をする輩が現れるんじゃないかという淡い期待を抱いていたが、全員がスーツにネクタイという、誰かの結婚披露宴にでも呼ばれたような格好だった。そういえば今日は大安。まさに「本日はお日柄も良く…」なのだ。
今思えば、風変わりな格好の役回りは僕だったのかも知れないが、全員が無事50歳を迎えた記念で、独りだけ浮いた格好をすることは、さすがに憚られた。

そもそも6人のオッサンだけで集合写真を撮影するというだけでも、充分に違和感がある。
だから撮影前の全員の表情には、戸惑いと気恥ずかしさ、そして緊張がありありだった。

約30分後、全ての撮影を終え(構図を何度か切り替えたので、結構な枚数を撮影してもらったのだ)、全員で画像のチェックと選定作業に入った。

6人横並びの最初の1枚は、選挙演説を聞いている人たちみたいな佇まいで思わず笑ってしまったけれど、6人で選んだ4枚は、それなりに体裁の整ったものだった。

とはいえもう一度言うが、所詮は50歳になったオッサンどもの集合写真。単なる独り善がりだということは記しておこう。

でもまあ、こういうちょっとした楽しみに興じることができるのも、このメンバーならではだし、僕を除いたメンバーは近い将来、子供たちの結婚式を迎えることになるはずなので、今回の撮影は、その予行演習だったと思えばおかしいものだ。

残念ながら写真が仕上がるのは約2か月後なので、今ここでお見せすることはできないけれど、それまでには諸々が収まり、出来上がった写真を見ながら畏友達と笑いあえる時間が訪れることを祈りたい。だからこそ今は静かに、慎ましやかな日々を過ごすことにしようと思う。