「8人遭難」の衝撃

5日早朝に発生した、陸奥湾での漁船遭難事故。
第一報を耳にした時は、え?陸奥湾で?と思わず声にするぐらい驚いたとともに、事故現場の場所、そして船が出港した漁港を見て、言葉を失った。

僕は年に何度か漁港に出かけたり船に乗って海からの釣りを楽しんでいるのだが、今回遭難した船が出港した漁港は、まさにその釣りのポイントとしていた一つだった。

しかも、時々仲間と連れ立って船に乗り、陸奥湾に繰り出しているのだけれど、今回事故のあった現場というのは、まさにそのポイント(それも真鯛だけではなく根魚も狙える一級ポイント)だったのだ。

たかが陸奥湾、されど陸奥湾。
僕自身、荒れた時の陸奥湾の恐ろしさを、一度船上から身をもって経験しているので、天候不順の日(とりわけ、風が強い日)は極力釣りに出かけないようにしているのだが、普段平穏な陸奥湾も、地形の関係からなのか、突然突風に見舞われたり、穏やかだった波が、ちょっと場所を変えただけで突然荒れ出したりすることがある。

「8人遭難、行方不明」の報を聞いた時まず頭に浮かんだのは、救命胴衣のことだった。

今回はどうやら8人とも救命胴衣を身につけていなかったらしい…。

海難事故が起こるたびにいつも思うことは、「救命胴衣を身につけていれば…」ということだ。

海上保安庁でも「抜き打ちで」検査をしているらしいのだが、実際のところは、事前におおよその検査時期が知らされているので、その時ばかりは救命胴衣を着用しているようだ。しかし、それ以外の時は、作業の邪魔になるからなのだろう、救命胴衣を身につけている漁師をほとんど見たことがない。

今回もまた、「救命胴衣をつけていれば…」という事態に見舞われてしまったことを考えると、車のシートベルト同様、船舶での救命胴衣の着用は例外なく完全義務化すべきだと考えるし、船舶免許を与えている以上、その罰則規定も強化すべきではないかと思う。


そして、今回捜索が難航している一つの理由として、魚群探知機が役に立たないことが挙げられる。陸奥湾で主流になった真鯛釣りのお陰で、海流や風向について調査されている見聞は比較的多い。しかし、これらのデータはほとんど役に立たないくらい、陸奥湾沿岸には障害物が多いのだ。

養殖施設、海中での漁船捜索阻む

青森市漁協久栗坂支所所属のホタテ漁船「日光丸」の遭難から丸一日がたった六日、海上保安部や海上自衛隊、仲間の漁船など約四十隻が、日光丸が消息を絶った地点付近を必死に捜索したものの、船体は発見できなかった。陸奥湾の沖合一?二キロ、水深三〇メートル前後の海域でなぜ見つからないのか?。捜索関係者の話から、海面下に養殖施設が広がっているホタテ養殖場での遭難が、船体の早期発見を阻んでいることが分かる。

僕らが陸奥湾で釣りをする時は、漁師がホタテの養殖カゴをつるしているブイを(勝手に)お借りし、それに船を繋いで釣りをするのだが、この周辺では、魚群探知機がホタテの養殖カゴに反応するため、全く用をなさない。恐らく沈没したと思われる船体すら見つけられないのは、ここに理由がある。

現場周辺の水深は約30?40メートル。
表面上は穏やかな海であっても、潮の流れが急に速くなることがある。しかも、ここ数日暖かい日が続いているので、結構潮流が激しいのかも知れない。

また、この周辺はフェリーや作業船といった大型船舶が航行後、波が急に高くなることがあるし、風向きによって波も一定ではない。

しかし、そこは漁のプロである以上織り込み済みだろうし、やはり突発的に天気が荒れた、と考えるべきなのだろう。どうしても解禁日だから、と張り切りすぎてしまったのだろうか。

確かにこの日の晩は、弘前市内でも未明から早朝にかけてまるで冬の荒れた天気のごとく突発的に暴風が吹き荒れており、もし同じような風が陸奥湾でも吹いていたとすれば、ひとたまりもなかったに違いない。

しかし…残された家族の心中を察すると、どう言葉に表現したらよいのかわからないが、今はただ6名の発見を祈るばかりだ。

この時期、陸奥湾には暢気にノコノコと釣りに出かける訳にはいかないだろう。当面、陸奥湾での釣りは自重しなければならないと強く感じた。

追記。予想どおり船舶はホタテ養殖施設の付近に沈んでいたらしい。更に一人船内から見つかったようだ。残る全員も早く見つかることを祈る。

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