桑田佳祐に打ちのめされた夜

12月7日。天気は曇り。9時09分発の特急つがる12号八戸行きに乗り込む。弘前駅の改札を抜け、1階ホームに降り立とうとした時、どこかで見たことのある姿とすれ違った。妻も気づいたようだった。それは、前日平川市でのディナーショーを終えた中尾ミエだった(笑)。
しかし、中尾ミエよりも何よりも、桑田佳祐である。ここ数年僕の中で勝手にランキングしている「一度は観てみたいアーティスト」の上位だった桑田佳祐に、遂に会える。

電車に乗り込んだ僕は、遠足を待ちわびていた小学生のような気分だ。
一睡もすることができぬまま、約1時間40分後に八戸駅に到着。

新幹線乗り換え口を抜け、10時56分発東京行きのはやて12号に乗り込んだ。金曜日ということもあってか珍しく車内は混んでおり、既に7割以上の座席が埋まっていた。座席に腰掛け、iPodを取り出す。今日ばかりは、桑田佳祐のみ聴いておこう。うっかりというかちゃっかりというか、事前に大体のセットリストを把握していたので、聴いておかなければならない曲を重点的にリピート。そんなことをしているうちに、気がついたら新幹線は仙台駅の近くに迫っていた。結局車中では一睡もすることができなかった。

2年振りの仙台駅下車。桑田佳祐も楽しみならば、「食」も一つの楽しみである。といっても特に何を喰いたいというわけではなかったので、駅の1階にある中華料理屋に入店、真っ昼間だというのに妻と軽くビールを引っかけながら、夜への思いを馳せつつ、舌鼓を打った。

会場の場所が場所だけに、何時に戻って来られるかわからない。ということで、更に駅の地下に行き、夜食としての惣菜その他を買い込み、宿泊先のホテルに向かった。仙台駅から地下鉄で二駅、勾当台公園で下車し、徒歩10分ほどにあるのが、今日の宿泊先のホテル仙台プラザ。15時過ぎにチェックインした我々は、軽い休息を取ったあと、いよいよ出陣。

会場のホットハウススーパーアリーナ(旧グランディ21)は、仙台市の隣、利府町にある。数年前に一度、Jamiroquaiのライブで行ったことがあるのだが(それも招待券を貰ったので)、交通の不便さに閉口するしかなかったという記憶が鮮明に残っており、正直いいイメージはなかった。ちなみに前回、Jamiroquaiの時は仙台駅からJRを利用、利府駅から公共バスを利用して訪れているのだが、バスの混雑ぶりに嫌気がさしたという記憶が残っている。終演後の交通手段も、公共バスは相当前に最終便が出発しており、JR利府駅まではタクシーを利用するしかなく、しかもそのタクシーも台数が極めて少なく、捉まえるのに苦慮した挙げ句(それも一人で乗るにはバカらしいので、他の見知らぬ人達を誘って乗り合いで向かった)、駅に着いてみると電車がやってくるのが30分後ということを知り、愕然…と、散々な目に遭っている。で今回は、仙台駅の東口から出発するシャトルバスを利用し、会場に向かうことにした。

17時過ぎにバスの発着所に行ってみると、とんでもない行列ができていた。それでも、3台目にやって来たバスに乗車することができ、17時25分にバスは出発した。あとは、渋滞に巻き込まれなければいいのだが…。と思ったのも束の間、出発してみると、利府町に入るまではずーっと渋滞(苦笑)。考えてみれば、ちょうど帰宅ラッシュの時間帯で、それも仙台市内から郊外に向かう車が多いに決まっているわけで、無事に時間まで着けるのか?という焦燥も、だんだん諦めにも似た興醒めへと変わっていった。それでもバスは18時30分頃に会場に到着。あとの問題は、開始前のお手洗いの状況だった。
外にあるグッズ売り場を物色し、数点購入。
そしていよいよ会場入り。お手洗いに向かってみると…。
予想通り、女性の列はとんでもない状況になっていた。女性のみならず、男性の列も相当なものだった。しかし、後方にもトイレがあることを知り、そちらに向かってみると、先程の半分にも満たない行列だった。

約15分後。妻とともに席に向かう。既にスクリーンからは、桑田佳祐が出演しているCMが流されている。座席はアリーナではなくスタンド席、それも限りなく最上段に近い位置。せめてもの救いは、真横でなかったということか。
それでもアリーナの最後方より、遙かに視界はいいはずだ、と言い聞かせながら、来るべき時間を待っていた。熱狂的なファン(恐らく応援団)が、客席にウェーブを何度も煽る(結果的にそれはアンコール開始の前に結実したのだけれど)。
開演時間の19時を過ぎ、いよいよ客席のほとんどが埋め尽くされた。超満員、と言いたいところだが、僕の隣、後ろ、更には通路を挟んだ席にも空席がいくつかあり、ほぼ満員、といった表現が適切だろう。いきなりスクリーンに流れたのは、発売されたばかりの新曲「ダーリン」のPV。たかだかPVなのに、手拍子が凄い。期待度がどんどん高まっていく。

19時10分、会場が暗転。一斉に歓声が飛ぶ。
ステージ上にバンドのメンバーが登場、そして遂に目の前に桑田佳祐が現れた!!

あまり詳細に記載すると超ネタばれになってしまうの(WOWOWでは大晦日23時30分から、年越しライブを生中継する予定)で、断片的に。
ライブは事前に入手していたセットリスト通りの展開。ソロナンバーのみならず、KUWATA BANDの楽曲(それも全てシングル)も披露した他、クリスマスを意識させるようなパフォーマンスも何度か繰り広げられていた。

4つある大きなスクリーンには全て歌詞が表示されるので、ほとんどカラオケ状態だった(笑)。
目の前で繰り広げられているステージが、何かまるで夢でも見ているような、そんなポワーンとした不思議な高揚感にかき立てられる。

観客を煽り、盛り上げる桑田佳祐。そして生み出される会場との一体感。大げさな言い方をするのであれば、エンターテイメントの神髄を見た、そんな感じ?

いよいよアンコール突入。一曲目は、強烈に世相を皮肉った「漫画ドリーム」。13年も前の、しかもアルバムに収録されている一楽曲なので、(少なくとも周囲からは)一瞬「え?これ何の曲?」という空気が流れるも、痛烈な歌詞が繰り返されるうちに、自然と会場から喝采の拍手が上がる(WOWOWでOA大丈夫かな?これ)。
2曲挟み(1曲はKUWATA BAND、もう1曲はCMで使用されたおなじみの曲)、いよいよラストナンバーに突入。約2時間30分、若干のMCを挟みながらほぼぶっ通しで繰り広げられたこのステージも、終わりを告げようとしている。こんなに楽しい時間が、とうとう終わってしまうのか…という一抹の寂しさを覚えつつ、感動をみんなの胸に刻んだライブは、遂に幕を閉じた。

「大晦日、テレビやりますから!来年もいい年を迎えてください!お前ら、死ぬなよ!絶対死ぬなよ!」

そう叫び、何度も会場に手を振りながら、桑田佳祐がステージ中央から奥へと引っ込んでいった。

桑田佳祐から発せられる物凄いエネルギーと、観客から発せられるエネルギーとがぶつかり合い、そして昇華し、終演後も会場は物凄い熱気に包まれていた。

嗚呼…終わってしまったよ。何だか放心状態になっている。
こんなに飛び跳ね、拳を振り回したのも久しぶり、こんなに熱くなったのも久しぶり、こんなに歌いまくったのも久しぶり。
それぐらい楽しいライブだった。それぐらい熱いライブだった。

再び彼に会える日は来るのだろうか。いや、いつかまた来て欲しいという期待を寄せつつ、2日遅れのレポートとしたいと思う。
長文駄文、失礼しました。

桑田佳祐に打ちのめされた夜」への3件のフィードバック

  1. じゃん子

    のんべどんの興奮が嫌というほど伝わってきて・・。
    憎たらしいです(笑)。
    いいなぁ、桑田!!!いつか見たい!!!!

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  2. nonvey

    いや、これでも書きたいことの半分も書いてないんだよね。例えば当日の衣装とか、ステージの状況とか、観客のノリとか、MCで話した内容とか、もちろん当日演奏した曲のこととか。
    大晦日の紅白歌合戦が終わる頃から始まるWOWOWを観たら、また記憶が鮮明に蘇りそうですな。保存版になりそうな予感。

    返信
  3. nonvey

    1.哀しみのプリズナー
    2.BAN BAN BAN
    3.いつか何処かで
    MC
    4.男達の挽歌
    5.NUMBER WONDA GIRL ?恋するワンダ?
    6.My Little Hometown
    7.Merry Christmas in Summer
    8.スキップ ビート
    9.BLUE MONDAY こんな夜には踊れない
    10.白い恋人達
    MCとメンバー紹介
    11.こんな僕で良かったら
    12.遠い街角
    13.地下室のメロディ
    14.東京ジプシー・ローズ
    15.東京
    16.月
    17.風の詩を聴かせて
    18.明日晴れるかな
    19.ダーリン
    20.悲しい気持ち
    21.波乗りジョニー
    22.真夜中のダンディー
    23.ROCK AND ROLL HERO
    アンコール
    1.漫画ドリーム'07
    2.ONE DAY
    3.可愛いミーナ
    4.祭りのあと

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