老舗ホテルの衰退

弘前市の本格的な都市型ホテルの先駆けである「ホテルニューキャッスル」(波岸正社長、資本金四億四千万円)の土地と建物に対し、みちのく銀行が青森地裁弘前支部に競売開始を申し立て、開始の決定を受けていたことが二十四日、分かった。競売は二月に予定されている。同ホテルは数年前から赤字計上を余儀なくされるなど、厳しい経営が続いているが、不渡りなどは発生していない。営業は通常通り継続している。

波岸社長は本紙の取材に対し「現在、競売回避に向け調整中であり、全力を挙げている。突然の差し押さえだったが、何としてもホテルの営業を維持していきたい」と語った。

長年僕は、弘前市内のホテルといえばまずキャッスルだと思い込んでいました。確かに老朽化も進んではいましたが、まさかこんなことになるとは…。

このニュースを目の当たりにし、一抹の寂しさを覚えました。
(どうでもいいことですがここのホテルは、私どもが結婚披露宴を挙げた会場でもあります。)

弘前市内は今、ホテルの建設ラッシュが続いています。東北新幹線の新青森駅開業に合わせるためらしいです。特に、全国チェーンを展開するホテルが次から次へと参入し、弘前駅前だけでも現在2軒のビジネス系ホテルが建設中です。

その中にあって今回報道された老舗ホテルの売却話は、今の弘前の現状を露骨に表していると感じました。

以前商店街の衰退の現状をお話をしましたが、ハッキリ申し上げて、雨後の竹の子のようにビジネスホテルが乱立したところで、弘前市内にそれほど多くのビジネスチャンスが転がっているとは思えませんし、観光地としての受け皿も今ひとつだと思います。

弘前には、津軽地域の観光拠点という顔もあります。弘前市内だけでも春のさくらまつりに夏のねぷたまつり、最近では冬季観光にも力を注いでいるようですが、少なくともその入り口である弘前駅については、全くと言っていいほど観光客を受け入れるという気配が見受けられません。小さな観光案内所はあるものの、旅の風情を誘う駅弁はない、待合室も狭い、飲食店もファーストフード系ばかりでほとんど皆無といった有り様。
実は宿泊施設も然りで、近いうちにその話題に触れようと思っていました。というのも、観光客をおもてなししてくれそうな宿泊施設というのが、市内にはほとんどといってくらい存在しないのです。今回競売が決まったホテルについても、やはり似たような感じでした(ハッキリ言えば中途半端)。
その上ホテル競争が始まったことから、このホテルを含め、旧態依然とした市内のホテルは、宿泊客のターゲットをビジネス系から観光系に絞り直し、サービス提供のあり方を考え直した方がいいのではないか、という提案を考えていた矢先の話でした。

それにしても、こういう形で老舗ホテルの売却が進めば、ますます弘前市内に観光客を呼び込める宿泊施設はなくなってしまいます。
ハッキリ言って、修学旅行生がいっぺんに宿泊できるような施設は、弘前市の中心地にはありません。

確かに郊外のひなびた温泉旅館や、それに近い施設で十分対応可能でしょう。ところが実態は、弘前での観光を終えた修学旅行生は、そのまま県外に宿を求めるという話を聞いたことがあります。しかし、弘前公園やその他多くの名勝史跡が市の中心部に集約していることを考えると、観光客に特化しなくても、ある程度そういう受け皿となりうる宿泊施設が一つぐらい中心市街地にあってもいいのではないか、と思ったのです。

現在建設中のホテルや最近開業したホテルから見れば、今回の売却話はライバルが一つ減ったということでほくそ笑んでいることでしょう。残念ではありますが恐らくこの先も、似たようなケースが多々生じるのかも知れません。

弘前はホントこの先、どうなっていくんでしょう。

老舗ホテルの衰退」への2件のフィードバック

  1. じゃん子

    ビックリニュースでした!!!!
    フォアグラの照り焼きやら各種パーティーやら、思い出深いホテルがなくなっちゃうのは淋しい!!!!
    次回帰省時まで営業してんのかなぁ?エビピラフとケーキを食べ納めしたいです・・(涙)。

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  2. nonvey

    フォアグラの照り焼き…懐かしい(笑)
    あの出来事ももう10年以上も前の話ですね。
    今のところは「経営は続けていく」という話ですし、仕掛けたみち銀がハードルを下げ始めましたね。
    ただ、このままだと相変わらず苦しい経営は続くものと思われ。

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