沖縄旅行顛末記(後篇)

大体こういう時は、飲んで寝るに限る。そう、「ふて寝」だ。
しかし、妻は僕よりはるかに「大人」である。こういう時に何をすべきかを理解していて、実に的を射た行動を取る。
部屋に着くなり、何事もなかったかのように「ビール、冷やしておこうか」「あ、その肉適当に切ってくれるかな?」と、ごく普通に振る舞い始めたのだ。自分自身の言動に愚弄さを感じた僕は、ただただ猛省せざるを得なかった。
そして、何事もなかったかのように夕食を済ませた僕たちは、再び爆睡…のはずだった。ところがこの日は、夜な夜な国道を疾走する地元の暴走バイクの爆音と、知らぬ間に出来ていた虫さされのかゆみに悩まされることとなった…。
◆9月16日 さらに初の…(その2)
いよいよこの日は、生まれて初めての「海底散歩」の日である。せっかくなので体験ダイビングを、と行きたいところではあるが、何せ妻は極度の近視、しかもコンタクト着用者であることから、どうしても「ダイビングは怖い」ということで、海底散歩(=水中ウォーキング)と相成った。しかしこの水中ウォーキング、やろうと言い出したのは他ならぬ妻である。ちなみにこれも、通常ならば一人6,000円であるが、特典により「タダ」である。
10時15分には集合場所に向かい、簡単な体調確認票に記入。実はまだちょっと風邪気味だったが、そんなことで初の体験を棒に振るのも癪なので、そこは敢えて「虚偽申告」した。

10時30分。我々を含めて11名の人たちが、いかだのような船に乗せられて沖合300mほど先にある「固定いかだ」に移動。そこで、レクチャーを受ける。近くて遠い場所に、ホテルが見える。
機材の都合上、5名6名と半々に別れてやらなければならないとのことだったが、先発隊を買って出るほど自信も勇気もなく、若い人たちに先を譲った。その間、水中に沈んでいるヘルメットのようなものを見ながら、一体どんな景色が待っているのか、ドキドキしてきた。
約5分後。若いカップルが、いきなり水中ウォーキングをやめて戻ってきた。具合が悪くなったのか?更に不安を掻き立てる。
約15分後。残りの先発隊が戻ってきた。見ると、誰一人髪が濡れていない。そりゃそうだ。あのヘルメットの中に水が入ったら、溺れること必至なのだから。
「では次のグループ、行きまーす!」



ゆっくりと階段を下りる。肩まで海面に浸かったところで、重さ40キロ近くあるという「ヘルメット」が頭に乗せられる。この重みで、海中にいても身体が浮き上がるということがないらしい。途中、突如襲う水圧に何度も耳の空気を抜きながら、一歩一歩海中へと降りていく。一瞬パニック状態に襲われそうになるが、コバルトブルー色の水中に、思わず息を潜める。次いで妻も無事海中に降り立ち、晴れて水中ウォーキングの第一歩を踏みしめた。

一応カメラだけは、水中仕様にしてきたので、辺り構わずシャッターを押し続ける。恐らく、水深は3mくらいなのだろう。岩場に近づくと、イソギンチャクの間から大きなクマノミが顔を出している。折角なので、と写真を撮ろうとするが、慣れないヘルメットと足下が掬われる感覚でバランスを崩しそうになり、なかなかシャッターが押せない。結局クマノミは諦め、周囲で泳ぐ魚たちにレンズを向けた。
後になってわかったのだが、縞模様の魚以外の魚がたくさんいたにもかかわらず、なぜか画像には縞模様ばかりが写っていた。正直、ちょっとショックだった。
約15分の水中ウォーキングを終え、11時過ぎに「帰港」。子供たちが、飼育されているイルカと楽しそうに戯れていた。実は妻は、イルカに触れたいのが本心らしいが、そこはグッと我慢。
部屋に戻り、昨日とほとんど同じブランチを堪能し、午後は北の方に向かってみる。当初「美ら海水族館」まで足を伸ばすことも頭をよぎったが、実は10年前、現在の「美ら海水族館」になる前に一度訪れたことがあり、今回のコースから外した。

途中、万座毛に立ち寄る。隆起サンゴに天然芝。風光明媚な景色が広がる。そういえば僕らが宿泊しているホテルやこのあたりは、「恩納村」という場所にある。ひらがなにすると「おんなそん」。ホテルのすぐそばに「おんなの駅」なんていう物産販売所も見かけたが、決して女性専用という意味ではなく、「恩納」をひらがなにしただけなので間違えないように(妻はしばらく前者の方だと信じて疑わなかった)。
万座毛から更に北に進むと、「御菓子御殿」なる奇妙な建物を発見し、立ち寄る。製菓会社が営んでいる建物らしいが、「わ」ナンバーの車が多数停まっている。更に中に入ってみると、おみやげ用のお菓子が大量に並んでおり、奥には泡盛の試飲コーナーまで併設されている。更に眼下には東シナ海が広がり、泳いでいる人の姿もちらほら。「会社の人にお菓子を買わなきゃ」と考えていた妻にとってはまさに渡りに船で、この「御殿」で取りあえずほとんどの用事が済んだ。
ここから今度は南下し、ホテルを通り過ぎ、「沖縄黒糖」にてサトウキビから黒糖が生まれる様子をちらりと覗き、読谷村にある「やむちんの里」でトイレ休憩、ガラス工房にてグラスを安価で購入し、再びホテルへ。
妻のたっての希望もあり、タラソテラピーサロンにて膝下のマッサージを実施。ふくらはぎのあたりに強烈な痛みを覚えつつ、約20分のマッサージに耐える。今回が2度目の「足裏マッサージ」となるが、不思議なことにこれまで「痛い」と思ったことがない。自分で思っているほど内臓の状態は悪くないということだろうか。
ちなみに妻は、相当激痛が走ったそうだ。
夜は、ホテル敷地内にある「海風(うみかじ)」という炭火焼レストランにて、地元の海山の食材を堪能。そして、忘れてはならない「海ぶどう」。1年ぶりの歯ごたえを、しっかりと堪能してきましたよ!
◆9月17日 もう一つ、忘れてはならないこと
どうしてもホテル内でやっておきたかったことがある。それは、「温泉入浴」である。実は、10年前に来た時も温泉は存在していたのだが、その時は見向きもしなかった。しかし今回は、どうしても温泉に入浴したいと考えていた。
ここまで来て…とも思ったのだが、沖縄の温泉が一体どんな感じなのか試してみたく、この日の朝、遂に入湯することにした。温泉の名前は、「YAMADA SPA」。山田というのは、この周辺の地名らしい。
予想はしていたもののどうやら循環湯らしく、あまり温泉らしい匂いはしない。それでも、約38〜40度のお湯は肌に優しく、誰もいない大きな浴槽で、僕は一人大の字になっていた(いや、正確に言えば「太」の字か?)。しかし、この暑い中での長湯は禁物。20分ほどで浴場を出て、いよいよ帰り支度である。

丸3日間お世話になった646号室。この部屋から見える海を、もう一度目に焼き付けて、部屋を後にした。ロビーに佇むオウムともお別れ。またいつか、きっと…。

11時にホテルを出発、一昨日道を間違えたジャンクションでは同じ轍を二度踏むことはなく、一般道に入ってからもほとんど道を間違えずにレンタカー会社に到着(もちろん、カーナビがあったからとも言えるが)。
マイクロバスでホテルまで送り届けて貰った後、もう一つ忘れてはならないことを敢行。それは、「沖縄そば」を喰うことである。事前にへな子さんに教えて貰っていた、那覇空港4階にある「天龍」へ。二人とも迷うことなく「ソーキそばセット」を注文し、まずは中ジョッキ1杯を半分ずつ胃の中へ。
続いて運ばれてきたソーキそばセット。ソーキ(豚肉)が軟骨も溶けるくらいまで煮込まれており、スープもあっさり。でも、焼きそばみたいな黄色い麺と絡むと、しっかりとした味わいになるのだから不思議!
うーん、旨い!ほとんどスープを飲み干し、大満足で店を後にする。
買い漏らししていた残りのおみやげを購入し、1時間前には検査場へ。中に入り、ちょっとだけDFS(免税店)を覗く。
どうやら帰りの便も満席らしく、空席待ちカウンターには、多くの人が列を作っていた。
JAL1914便東京羽田行きは、定刻から5分遅れで沖縄那覇空港を飛び立った。
帰りの便だけは、疲れを癒すということからも、ささやかな贅沢。敢えてクラスJ(いわゆるスーパーシート)に予約を入れたまではよかったが、後ろの席に座った赤ちゃんの泣き声に終始悩まされることとなり、結局30分眠っただけで、疲労回復には到底及ばなかった。
17時10分、羽田着。
この日は都内に宿泊、妹じゃん子と夕食を共にしながら、土産話に花を咲かせた。
◆9月18日 最後の最後まで…
いよいよ最終日。昼前にチェックアウトし、銀座・お台場方面を物色。
沖縄で既に十二分すぎるほど堪能したので、僕はただ妻について行くだけ。強いていえば、銀座で寿司を食らい、スタバでコーヒー豆を購入したくらいかな。
で、この日の出発は17時55分。東京テレポートから東京臨海高速鉄道で天王洲アイルまで向かい、東京モノレールに乗り換え、羽田空港第一ターミナルへ。
ところが搭乗手続をすると、青森空港周辺悪天候のため、またしても条件付き運航となる。それでも定刻には羽田を飛び立ち、青森に向かう。乗客は半分もいるのだろうか。遠くに見えていたオレンジ色の夕焼けをかき消すように、徐々に黒い雲が立ちこめ、揺れが少しずつ増えてくる。ここで機長からアナウンスが入る。
「ただいま、青森空港に向かい最終の着陸態勢の準備をととのえているところです。が…」
が…!?
「が…管制塔から待機を命ぜられました。先行する飛行機の着陸を待ってからの着陸となりますので、10分ほど遅れて…」
ああ、よかった。引き返すのかと思ったよ…。
19時15分。思ったほど大きな揺れもなく、無事着陸。
しかし、やはり我々を待っていたのは、出発した日と同じ、冷たい雨だった…。
でも、僕らは満足げに雨に濡れながら、5日間も野ざらし状態だった愛車に乗り込み、自宅までの帰路に就いたのだった。
(おわり)

4 thoughts on “沖縄旅行顛末記(後篇)

  1. けいこりん

    お疲れ様でしたぁぁぁ♪
    楽しかったみたいですね。 いろいろあったようですが。
    疲れはもうとれましたか?
    楽しい旅行なのに家に帰るとホッとするのはナゼでしょうね。
    海中散歩の写真の笑顔?最高でした!!!

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  2. ペーズリー

    3部作、楽しく読ませて貰いました。
    シーウォーク、いいなぁ〜!私も春やればよかった、と後悔の嵐です。(@ケアンズ)
    グァムではボートダイビング(?)といって、ボートにボンベを積んで、そこから長いマスクして泳ぎましたが。(小学生の子供らも)
    nonveyさんの旅行記は、必ず何かが起きるので面白かったです。
    また期待してます!

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  3. へなこ

    おおお!奥様のお顔をはじめて拝見!!!!! とっても可愛い方ではないか!びっくりしたよ!
    で、お可愛い奥様と一緒にいつもお2人で旅行してるのですね〜。仲が良くってなにより!
    私も沖縄に行きたいっす。その前に青森で再会!お付き合いよろしくお願い致しますね〜☆

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  4. nonvey

    >>けいこりんさん
    ありがとうございます。家に帰って、犬の顔を見たらホッとしました(笑)。疲れは取れましたが、休みボケです。って明日から3連休ですか…おとなしくしていよう。ちなみに水中での写真は笑顔ではなく、明らかに引きつっています。
    >>ペーズリーさん
    ハイ。今年も懲りずに行ってしまいました。ダイビングはやっぱり今回もやりませんでしたが、初めて海底を歩いたことは、大きな前進です。ホント綺麗でしたし、感動しました!
    >nonveyさんの旅行記は、必ず何かが起きる
    わはは。意図しているワケじゃないんですけどねぇ。確かに「何か」起きますね(苦笑)。
    来年はどこに行こうかな。
    >>へなこさん
    事前の情報、ありがとうございました。隣に写っている人?あれは妻ではないんですよ…って、ウソですウソ。
    可愛いですか?何故か僕が照れました(笑)。でも、写真をアップしていることは、今のところ妻には内緒です(すぐバレますけどね)。
    いよいよ来週ですね!お待ちしておりますよ〜!

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