懺悔を込めて告白

結婚して10年が経ちましたが、うちら夫婦には子供がいません。
「(身体が)どこか悪いんじゃないの?」なんて失礼なことを聞いてくる人もいますが、これはうちら夫婦が意図してそうしていることであって、今日も子供の必要性を特に感じたことはありません。
うちにはペットがいるから、と嘯いてみるものの、実のところ、私自身の中に「幼稚な部分」がまだ存在していることを自負していて、自分がまだ子供じみた大人だという意識を払拭できず、親になるということに対して自信が持てないからだと思います。
そして何よりも。自分が親になったら、子供を力一杯虐待してしまうんではないか、という恐怖があるからです。
昨晩の出来事は、そのことを裏付けるにふさわしい、つくづく自分という人間が嫌になる、非常に衝撃的なものでした。といっても全て自分の取った行動ですが…。


我が家には犬が3匹と猫が2匹います。人間の数より多いです。猫は我が道を行くといった生活をしており、自由に外出し、腹が空けば帰ってきて、眠くなったら勝手に寝る、といった行動を取っています。2匹とも雄ですが、去勢済み。生を受けてから既に15年以上経ちますので、いつ逝ってもおかしくないだろう。そういう覚悟だけは持っているつもりです。
一方の犬3匹は全て雌で、雑種とポメラニアンとミニチュアダックス。犬種も大きさも異なる3匹は、それぞれに家の中で生活しています。最初は、雑種(ハナ)1匹飼っていたのが、翌年には諸般の事情でポメラニアン(モモ)がやってきました。以前からハナについては我が儘に育ててしまったと思っていたのですが、モモが同居を始めてから、我が儘が増えるようになりました。さらに、ミニチュアダックス(チョコ)がやってくると、その我が儘ぶりはエスカレートするようになるとともに、人間から注がれる愛情が減っていることに対してストレスを感じるのか、食事を受け付けなくなったり、お腹を壊したりと、手を焼かせるようになりました。
そのハナが昨晩、一瞬の隙をついて我が家から脱走しました。既に22時を過ぎており、周囲は暗かったのが不幸中の幸いでしょうか。家の周りをグルグル回りながら、こちらからいくら名前を呼んでも意に介することなく、まるで心配するこちらをせせら笑うかのような態度で、全く家に入ってくる気配はありませんでした。しかも、普段懐いている妻は仙台に出張中。
30分後。ようやくハナは母の手によって取り押さえられました。雨が止んだ直後ということもあり、四肢は泥だらけ。母が烈火のごとく怒っているのがわかりました。
玄関先で母に怒られるハナ。見かねた私が母をなだめ、泥で汚れたハナの足を拭こうとしたその時。ハナは私の手に軽く噛み付き、再び脱走を図ろうとしました。
自分の中の何かが、ブチンと切れる音がしました。
時間にして1分も経っていないと思います。しかし気がつくと私は、ハナの頭を何度も叩き、怒鳴り散らしていました…。
ハナの悲鳴でふと我に返った時、ハナは恐怖に満ちた顔でこちらを見ていました。尻尾はダラリと下がり、及び腰のような格好で、今すぐここから逃れたい、そんな表情で私を見ていました。
その顔を見て、私は自分の取った行動を激しく後悔しました。
何てことをしてしまったんだろう…。
思えば、GWが終わり、しかもあいにくの雨で毎日の散歩もままならない状況の中で、ハナが外に行きたがるのは当然のことでした。
実はハナが我が家にやってきてから1週間も経たない頃に、大脱走劇がありました。私の不注意から脱走したハナは、迷うことなく家の前の県道へと走っていきました。まだ幼く、車の危険性など知る由もなく…。雨の降る中、私はサンダル履きでハナを追いかけ、車の往来など関係なしに、道路のど真ん中を走っていました。
ハナが死んでしまう。車に轢かれて死んでしまう…。私は泣きべそをかきながら無我夢中でハナを追いかけ、やっと家に連れ戻したことがあるのです。
実は、その時も今回に近い行動を取りました。そしてその後、激しい後悔の念に襲われました。
あの時の恐怖と同じような感覚が私の中に走り、脱走させてはならないという思いが、私を暴力へと駆り立てたのかも知れません。もちろんこんなのは、ペットに対して暴力を振るったことに対する言い訳に過ぎないわけですが…。
自分のやったことを激しく後悔しながら、ハナの顔をそっと拭きました。ゴメンな…。しかし、ハナの表情は怯えたままでした。
怒りに満ちて暴力を振るい、その行為に対して呆れるという私は、何と調子のいいヤツなのでしょう。そういえば妻が、「最近怒りっぽいよ」と指摘したのも、最近のことでした。
以前から犬猫が粗相をした時にも怒っていましたが、これほど自分が激しく怒り、挙げ句の果てに何度も暴行を加えたということが、ショックでなりませんでした。やっぱり虐待のクセがあるのだろうか。いよいよ自分がわからなくなってきました。自分は一体、何者なんだ…。
しかしどれもこれも、自分を誤魔化すための言い訳でしかありません。そして、どんな非難も享受しなければなりません。ハナに手を上げたのは、紛れもない事実なのですから。
放心状態のまま、私は床につきました。もしこれが自分の子供だったら…いや、自分は子供にも同じようなことをしてしまうのかも知れない。そう考えると、自分がとても空しくなりました。自分にはペットを飼う資格も、親になる資格もないかも知れない…そんなことをボンヤリと考えながら、眠りについていました。
あまり寝付けぬまま、6時前に目が覚めました。
唯一の救いは、ハナが何事もなかったかのように尻尾を振りながら、寝起きの私を迎えてくれたことでしょうか…。ハナより劣る自分の狭量ぶりに、朝から情けなさすら感じてしまいました。

6 thoughts on “懺悔を込めて告白

  1. 迷い人

    そんな気にすることないよ。親だって人間。飼い主だって人間。オレだってブチ切れて3歳児を小突くコトよくあるよ。

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  2. nonvey

    ありがとう。普段お馬鹿な話しかしていませんが、キミからそういうことを言われると、なんだか胸が熱くなります。でも、3歳児も可哀想なので、あまりブチ切れしないように。

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  3. mash

    わたしも、子供をたたいてしまった事あります。
    そして、やっぱり自己嫌悪になって、
    そのあと、必ず子供に謝りました。
    人間は、もともと悪なのでは・・・と、わたしは、最近思います。
    その中で、美しいものを楽しむのが、人生かナ〜と。

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  4. nonvey

    何か皆さんを巻き込んで私の「苦悩」にお付き合いいただいて、本当にすいません。
    でね、一応一つの結論というか、まぁあんまり気にしなくていいんじゃないの?ということになりまして、いつまでもズルズルと引っ張るのも何かバカらしいし、楽しくないので、ここはmashさんもおっしゃるとおり、楽しいものを探しながら楽しんでいくことにしました。ええと、何か意味不明な文章になっていますが、いいんです。ある方もおっしゃっていましたが、完璧な人間なんてこの世には存在しないわけですしね。

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  5. p-park

    すごい体験記ですね。
    こんなにも赤裸々と綴られたブログは、チョメチョメ関係なブログ以外で読んだことありませんよ(汗)。
    まるで、島尾 敏雄の『死の棘』を読んだ後に生じた、やるせない気持ちです。。。
    頑張って、nonveyさん!

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  6. nonvey

    >> p-parkさん
    いやいや、そんな仰々しいものじゃないですよ。まぁ、逆にこの話をしたら吹っ切れたというか、何かスッキリしました。ここ最近の自分の行動を反省しつつも、今後の行動に生かすべく頑張ります(笑)。
    ありがとう。

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