佐橋佳幸の仕事 1983‐2015 Time Passes On

久しぶりに音楽ネタを。
80年代から90年代にかけての邦楽は、めまぐるしく変遷を辿った時期だったと思う。
Niagara、アルファ、フォーライフ、Epic、Fitzbeat、Moonなどといった大手レコード会社傘下のレーベルの台頭、アイドルからアーティスト指向への変化、女性ボーカルバンドの出現、自主制作盤(インディーズレーベル)の躍進、外国資本系レコードショップの進出、レコードからCD、CDからMDへと変化し続けた音楽媒体、イカ天、ビーイング、ビジュアル系といった相次ぐムーヴメントにバンドブーム、渋谷系ミュージックや和製ラップブームの到来、洋楽カバーからセルフカバー、70年代以降のアーティストの再評価など、枚挙に暇がない。

とにかくあの頃(ちょうど僕が中学生から大学生にかけての頃だ)は、耳に入る音楽は何でもかんでも聴いてみよう、といった勢いで、ちょっとでも気になる音楽が現れようものならば、すぐに市中心部にあったレコード屋やレンタルショップに走ったものだった。

…やがて、なけなしの小遣いを貯めて、ライブやコンサートにも足を運ぶようになった。

初めて自分のお金で足を運んだコンサート(弘前市民会館で行われた小比類巻かほるのライブ)から30年近く。これまで国内外さまざまなアーティストを観てきたが、国内アーティストのライブ、コンサートを観てきた中で、ダントツの数でバイプレーヤーを務めていたのが佐橋佳幸。そういう意味では、僕がライブ、コンサートで一番多く観てきたミュージシャンこそが佐橋佳幸だと言っても決して誇張した表現ではない。
高校の時に初めて観た渡辺美里を皮切りに、鈴木雅之、佐野元春、山下達郎など、彼がステージ上でギターを奏でる姿を何度見たことか。12年前に開催されたエピック・ソニーの25周年のライブ(LIVE EPIC 25)、今思い返しても凄いメンバーが出演したステージだったけれど、大阪城ホールで観たあの時のバンマスも彼が務めていた。
佐橋佳幸の名前を初めて目にしたのは渡辺美里のアルバム。その後シングル・ヒットとなった「センチメンタル・カンガルー」の作曲を手掛け、それ以降頻繁に彼の名前を目にすることとなった。

彼と初めて遭遇したのは青森で観た渡辺美里のコンサート。確かその時にも彼はバンマスを務めていたが、二人が高校の先輩後輩だという情報は織込み済みで、下世話な言い方をするならば、僕はこの二人はきっと「デキている」のだろうと信じて疑わなかった。
こう言っては失礼だが、決して大きくない背格好でありながら、ステージ上では圧倒的な存在感。何度も息を飲むような演奏を目の当たりにし、その都度「おお…佐橋すげえ!」と心の中で感嘆していたものだった。
そして今回、そんな佐橋佳幸の30年にも及ぶキャリアを総括した作品が発表された。

その名も、佐橋佳幸の仕事(1983-2015) 〜Time Passes On〜
「演奏、作編曲、プロデュース、ボーカルにコーラス…佐橋佳幸のお仕事あれこれ、音楽生活32年ぶんをみっちり詰め込んだ前代未聞のコンピレーション。」と、触れ込みが凄い。

先日さいたまを訪れた際に、たまたま浦和パルコ内にあるタワーレコードでこの作品を見つけたのだが、あまりにも凄すぎる収録曲に驚愕し、さらに3枚組45曲というそのボリュームにも驚愕し、これは絶対に購入しよう!と即決したのだった…ちなみにその場で購入しなかったのは、少しでも帰りの荷物を減らしておきたいという思惑があったから。その割には他の余計なもの…いやいや、優先順位からどうしても必要だったものは何の迷いもなく購入してしまったのだけど。
何せこの作品、店頭ではタワーレコードのみ、通販もタワーレコードとソニーミュージックショップでしか販売されていない代物。しかし、複数のレコード会社、レーベルの垣根を越えた作品てあり、更には山下達郎と大瀧詠一の未発表曲が収録されているという、これだけでも充分マストアイテムなのだ。
50ページ以上にも及ぶライナーノーツ。ここでその内容を明らかにすることはできないが、それぞれの楽曲解説に綴られた「裏話」が、非常に興味深い。これを読むだけでも、日本の音楽業界、とりわけその当時売れに売れまくっていた楽曲にどれだけこのサハシのエッセンスが吹き込まれていたのかがわかる。というか、このライナーノーツだけでもホント凄いんですわ。

さすがに知らない楽曲も幾つかあるけれど、きっと我々同世代にしてみれば、まさに青春の多感な時代に、実はどれだけ佐橋ミュージックのお世話になっていたかを垣間見ることのできる作品集。
一ギタリストと言ってしまえばそれまでだが、収録されているミュージシャンの顔ぶれを見ただけでも、彼がいかにこの業界で必要とされ、そしてそれに応えていたか、ほんの一部であるが彼の音楽ヒストリーを辿ることができる。
さまざまな楽曲の中で奏でられる彼のギターの音を聴きながら、この作品を単なるコンピレーションアルバムという括りで片付けるのはあまりにももったいなさ過ぎる。

クインシー・ジョーンズやジャム&ルイス、ベイビーフェイス(LA &フェイス)など、敏腕プロデューサは海外にたくさんいるし、国内にも古賀政男を筆頭に阿久悠や松本隆といった素晴らしい作詞家作曲家がたくさんいるけれど、僕が知る限りでは、バイプレーヤーでここまで称賛されるのは、村上”ポンタ”秀一かこの佐橋佳幸ぐらいじゃないだろうか、と思った次第。

百聞は一見にしかず、ではなく百見は一聞にしかず。
同年代の邦楽好きの皆さん、これはマストバイですぞ!

sahashi

2015年11月13日発売
品番:MHC7-30038
価格:¥4,630+税

CD3枚組 三方背ボックス入りデジパック仕様 Blu-spec CD2
タワーレコード、Sony Music Shop限定販売

【収録曲:DISC-1】
1. UGUISS / Sweet Revenge (1983)
2. NOBUYUKI, PONTA UNIT / Digi Voo (1985)
3. 藤井康一 / LITTLE BIT LOUDER (1986)
4. EPO / 12月の雨 (1987)
5. 岡村靖幸 / 不良少女 (1988)
6. 大江千里 / ROLLING BOYS IN TOWN (1988)
7. 渡辺美里 / センチメンタル カンガルー (1988)
8. 宮原学 / WITHOUT YOU (1988)
9. Peter Gallway / BOSTON IS BURNING (1989)
10. 鈴木祥子 / ステイション ワゴン (1989)
11. 佐橋佳幸 / 僕にはわからない (1989)
12. 杉真理 / Wonderful Life〜君がいたから〜 (1990)
13. 桐島かれん / TRAVELING GIRL (1990)
14. 矢野顕子 / 湖のふもとでねこと暮らしている (1991)
15. 小田和正 / ラブ・ストーリーは突然に (1991)

【収録曲:DISC-2】
1. 槇原敬之 / もう恋なんてしない (1992)
2. ROTTEN HATS / ALWAYS (1992)
3. 藤井フミヤ / TRUE LOVE (1993)
4. 佐橋佳幸 / Zócalo (1994)
5. 佐橋佳幸 / Time Passes On (1994)
6. 鈴木雅之 / 夢のまた夢 (1994)
7. 氷室京介 / 魂を抱いてくれ (1995)
8. GEISHA GIRLS / 少年 (1995)
9. 福山雅治 / HELLO (1995)
10. 山下久美子 / TOKYO FANTASIA (1996)
11. 佐野元春 and The Hobo King Band / 風の手のひらの上 (1997)
12. 川本真琴 / 1/2 (1997)
13. 坂本龍一 featuring Sister M / The Other Side Of Love (1997)
14. 山下達郎 / 氷のマニキュア (2015REMIX) (1998)
15. SOY / 約束 (1998)
16. 山弦 / SONG FOR JAMES (1998)

【収録曲:DISC-3】
1. 大貫妙子&山弦 / あなたを思うと (2001)
2. 竹内まりや / 毎日がスペシャル (2001)
3. Fayray / I’ll save you (2001)
4. 小坂忠 / 夢を聞かせて (2001)
5. MAMALAID RAG / 目抜き通り (2002)
6. Emi with 森亀橋 / Rembrandt Sky (2005)
7. 松たか子 / 未来になる (2005)
8. スキマスイッチ / ボクノート (2006)
9. GLAY / MILESTONE〜胸いっぱいの憂鬱〜 (2012)
10. 真木よう子 / 幸先坂 (新緑篇) (2013)
11. Darjeeling / 21st. Century Flapper (2014)
12. 渡辺美里 / オーディナリー・ライフ (2015)
13. 佐橋佳幸 / ジヌよさらば メインテーマ (2015)
<ボーナストラック>
14. 大滝詠一 / 陽気に行こうぜ〜恋にしびれて (2015村松2世登場!version) (1997)

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