一生に一度は見ておきたいと思っていたアーティストのチケットを手に入れた。
15,000円というその価格は、ディナーショーなどを除けばこれまで観た日本人アーティストの中で最高額。価格に比例するかのごとく、自分の中で期待度がどんどん高まっていく。そしていつしか自分の中で勝手に「ライブで聴きたい曲」のセットリストを作り始め、いよいよその日が近づいていることを実感し始める。
挙句の果てには、会場で聴きたいと思っていた曲を聴きながら思わず涙する自分を想像して、思わずグッとくるという状況までその高揚感が勝手に高まっていた。
竹内まりやによる8都市14公演で開催される11年ぶりの全国アリーナツアー。
Wikipediaによると、2000年以降には、「souvenir」(2000年、@東京・大阪)、「souvenir again」(2010年、@東京・大阪)、「souvenir 2014」(2014年、@東京・大阪・札幌・仙台・広島・福岡)と銘打ったライブを行ったほか、2018年にはファンミーティングを開催、その後、2020年に新型コロナの影響で中止となった初のライブハウスでの公演の代わりに、無観客ライブを限定配信(抽選で当たった2000名のみ)しているが、その後有料配信も行われた。
2021年、7年ぶりに本格的な全国ツアーが行われることが発表されたが、これも新型コロナの影響で中止となった。僕もこの時の公演チケットを入手し、初めて彼女のライブに足を運ぶことができると心躍らせていたが、結局その機会を逸してしまった。
嗚呼!新型コロナのバカ!バカ!大馬鹿野郎!
…しかし、いよいよ!
2025年4月から、改めてアリーナツアーが開催されることが発表される。
2021年のライブチケットを入手していた僕は優先抽選権が与えられ、再申し込みで無事にチケットをゲット!
これまでの開催状況に鑑みれば、一生に一度しか観られないライブになるかも知れない。もう、楽しみで楽しみで仕方がない!
2025年4月15日、遂に名古屋を皮切りにアリーナツアーが始まった。
そしていよいよ迎えた5月3日の仙台公演。
逸る気持ちをとにかく抑え、自分が描いたセットリストの楽曲がどれぐらい披露されるのだろう、とか、バンドマスターの山下達郎も色々出番があることだろう、とか思いを巡らせる。そう考えると、15,000円のチケットも安いものかも知れない。

開演時刻まであと20分ほど
約8か月ぶりに再訪したセキスイハイムスーパーアリーナ。席はスタンド西側のステージ寄り、階上席ながら前から6列目。ステージの全景が望める位置だ。何より、ステージ左側に陣取るバンドマスターの姿がバッチリ見えるポジションだった。
18時の開演時刻から10分ほど経過した頃、突如ステージは始まった。
内容についてはツアー中なので省略。
自分がこれを演って欲しいと思い描いていたセットリストの大半が披露されるという奇跡(演らなかったのは2曲だけだった)。
初めて観るコンサートなのに「ベスト・オブ・ベスト」をいきなり観せられた、そんな感じだった。
昨年新しいアルバムを発表したが、今回はそのお披露目でもないので、ツアーの選曲にはあまり影響を及ぼさなかったようだ。(むしろアナログ盤のBOXセット推しといった感じ)
客層は、男女比がほぼ半々だったと思うが、圧倒的にシニア世代が多く、僕より若手と思しき人は、ざっと見まわしても片手で足りるぐらいしかいなかったように思われる。ちなみに、チケットの申し込みは50万件(!)ほどあったらしい。
考えてみると、ステージ上のメンバーの多くもシニア世代。
当の本人は3月に古稀を迎えているし、バンドマスターを務める夫は72歳の年男。
ひと昔前であれば、70歳を超えた人たちはいわゆる爺さん婆さんの括りだった。
それが昨今では、頂点を極め今もなお最前線を走り続ける人たちが大勢いるという事実。
コンサートの終盤、自分より年上の人たちが立ち上がり、声援と拍手を送る。
そんな中で改めて周囲を見回す。自分もあと10年ほどでこんな感じになるのだろうか。
何とも言えぬ想いが去来し、複雑な気分になった。
そして、まるでレコードでも聞いているような正確無比かつ清涼感に満ちた声と、絶対的信頼を置くバンドメンバーとが醸し出す一体感。完璧ともいえるようなパフォーマンスが目の前で繰り広げられていることに対し、徐々に不思議な気分に陥っていく。
そもそも竹内まりやと山下達郎が同じステージに立って、肩を並べて演じているという状況を目の当たりにして、次第にこれが現実なのか夢なのか、よくわからない感覚に襲われるようになった。
70歳とは思えない声量と美貌。僕は一体今、何を観ているんだ?これは本当に現実なのか?
そんな時間はどんどん過ぎ、やがて終演を迎えた。
仙台駅へ向かう帰路のシャトルバスの中は、同行した人たちが感想を互いに語り合うわけでもなく、誰もが無言だった。感慨に浸っているのか、疲れただけなのか、あるいは…。
僕はといえば、この日の18時以降から数時間で展開されたステージが現実のものだったのか未だに咀嚼できず、何とも言えぬ空虚感に駆られている。あまりにも期待通り、いや、期待以上過ぎた。
この感覚は、まさに夢心地から未だに脱していないということを指すのだろうか?
ツアーは2025年6月末まで続く。
これから会場に行かれる皆さんは、ハンカチティッシュと体力の確保をお忘れなく。

