「これはセルフカバー・アルバムじゃない。オリジナル盤と匹敵するくらいのコンセプチュアルな作品だ。これまでのファンだけじゃなく、新しい世代の音楽リスナーにも聴いてほしい」
デビュー45周年、そしてコヨーテ・バンド結成 20 年を迎えた佐野元春。
「元春クラシックスの再定義」いうテーマで取り組まれた本作は、過去に発表された楽曲、THE COYOTE BAND名義ではなかった楽曲を「佐野元春 & THE COYOTE BAND」名義で制作したもの。
佐野元春の45年のキャリアの中で、気がつくと半分近くの時間を共に過ごしてきたTHE COYOTE BANDが紡ぎ出す過去の作品。
…といいたいところだが、これは過去の作品ではなく、THE COYOTE BANDが息吹を吹き込んだ新たな楽曲、と定義してもいいだろう。
再定義というよりも、THE HEARTLANDそしてTHE HOBO KING BANDを超えるキャリアとなったTHE COYOTE BANDによる新解釈だろうか。
何よりそれを端的に表しているのが、過去の楽曲とは異なるタイトル ―といっても英語のタイトルを日本語にしたものも多いが ―が付された作品が多いこと。
そしてそれは、20年にも及ぶキャリアの中でバンドとともに積み重ねてきた経験そして信頼の上に成り立ったサウンド構成となっていて、懐古的な雰囲気は全くといっていいほど感じられない。
CDアルバムの歌詞カードには、縦書きの詞が並ぶ。
歌詞カードの日本語を英語に変換して(原曲のママで)唄っているものも多数あるが、その意味するところは、もしかしたら日本語の良さ、表現の奥深さをここで表したかったのではないか、と歌詞カードを読みながら思った。
過去にもリテイクしたアルバムを2作発表しているが、本作に関しては、それらとはまた雰囲気の異なる、現在の「佐野元春 & THE COYOTE BABD」の表現力を完膚なきままに見せつける、そんな作品になっている。
1曲目、冒頭の音出しから思わず「おっ!」と声が出る。微妙に変化したサウンドアレンジ、そして日本語に置き換えられた歌詞。過去と同じタイトルのままでありながら、「再定義」と呼ぶに相応しいオープナーとなっているし、「つまらない大人にはなりたくない」と言い切ってしまう69歳が羨ましい。こういう大人に私もなりたいです。ちなみに桑田佳祐も69歳。ロックなお年頃なのですね。
ライブでも披露されていた「Individualists」のリアレンジは「自立主義者たち」としてこのアルバムにも収録。かつてとはリズムやテンポの異なるこの曲は、まさにバンドと築き上げた楽曲の片鱗といっても良いと思う。代表曲の一つ「約束の橋」は、期待を全く裏切らないサウンド構成で、アルバムの締めくくりにふさわしい一曲となった。
今回のアルバムタイトルが「HAYABUSA JET I」ということは、必然的に「II」を期待してしまうのだが、どうやら年内には「II」の発表が予定されているらしい。(いっそのこと2枚組でもよかったんじゃ…とか思ったり。)
しかし、このタイミングでデビュー45周年の佐野元春がアルバムを発表し、35周年の東京スカパラダイスオーケストラがベスト盤を発表、更にサザンオールスターズが10年ぶりとなるオリジナルアルバムを発表。どれもこれも素晴らしい作品だけにここ最近は耳が疼きまくっています。
1 Youngbloods(New Recording)
2 つまらない大人にはなりたくない(New Recording)
3 だいじょうぶ、と彼女は言った(New Recording)
4 ジュジュ(New Recording)
5 街の少年(New Recording)
6 虹を追いかけて(New Recording)
7 欲望(New Recording)
8 自立主義者たち(New Recording)
9 君をさがしている – 朝が来るまで(New Recording)
10 約束の橋(New Recording)THE COYOTE BAND
佐野元春 Vocal,Guitar
小松シゲル Drum
高桑圭 Bass
深沼元昭 Guitar
藤田顕 Guitar
渡辺シュンスケ Keyboards
