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佐橋佳幸の仕事 1983‐2015 Time Passes On

久しぶりに音楽ネタを。
80年代から90年代にかけての邦楽は、めまぐるしく変遷を辿った時期だったと思う。
Niagara、アルファ、フォーライフ、Epic、Fitzbeat、Moonなどといった大手レコード会社傘下のレーベルの台頭、アイドルからアーティスト指向への変化、女性ボーカルバンドの出現、自主制作盤(インディーズレーベル)の躍進、外国資本系レコードショップの進出、レコードからCD、CDからMDへと変化し続けた音楽媒体、イカ天、ビーイング、ビジュアル系といった相次ぐムーヴメントにバンドブーム、渋谷系ミュージックや和製ラップブームの到来、洋楽カバーからセルフカバー、70年代以降のアーティストの再評価など、枚挙に暇がない。

とにかくあの頃(ちょうど僕が中学生から大学生にかけての頃だ)は、耳に入る音楽は何でもかんでも聴いてみよう、といった勢いで、ちょっとでも気になる音楽が現れようものならば、すぐに市中心部にあったレコード屋やレンタルショップに走ったものだった。

…やがて、なけなしの小遣いを貯めて、ライブやコンサートにも足を運ぶようになった。

初めて自分のお金で足を運んだコンサート(弘前市民会館で行われた小比類巻かほるのライブ)から30年近く。これまで国内外さまざまなアーティストを観てきたが、国内アーティストのライブ、コンサートを観てきた中で、ダントツの数でバイプレーヤーを務めていたのが佐橋佳幸。そういう意味では、僕がライブ、コンサートで一番多く観てきたミュージシャンこそが佐橋佳幸だと言っても決して誇張した表現ではない。
高校の時に初めて観た渡辺美里を皮切りに、鈴木雅之、佐野元春、山下達郎など、彼がステージ上でギターを奏でる姿を何度見たことか。12年前に開催されたエピック・ソニーの25周年のライブ(LIVE EPIC 25)、今思い返しても凄いメンバーが出演したステージだったけれど、大阪城ホールで観たあの時のバンマスも彼が務めていた。
佐橋佳幸の名前を初めて目にしたのは渡辺美里のアルバム。その後シングル・ヒットとなった「センチメンタル・カンガルー」の作曲を手掛け、それ以降頻繁に彼の名前を目にすることとなった。

彼と初めて遭遇したのは青森で観た渡辺美里のコンサート。確かその時にも彼はバンマスを務めていたが、二人が高校の先輩後輩だという情報は織込み済みで、下世話な言い方をするならば、僕はこの二人はきっと「デキている」のだろうと信じて疑わなかった。
こう言っては失礼だが、決して大きくない背格好でありながら、ステージ上では圧倒的な存在感。何度も息を飲むような演奏を目の当たりにし、その都度「おお…佐橋すげえ!」と心の中で感嘆していたものだった。
そして今回、そんな佐橋佳幸の30年にも及ぶキャリアを総括した作品が発表された。

その名も、佐橋佳幸の仕事(1983-2015) 〜Time Passes On〜
「演奏、作編曲、プロデュース、ボーカルにコーラス…佐橋佳幸のお仕事あれこれ、音楽生活32年ぶんをみっちり詰め込んだ前代未聞のコンピレーション。」と、触れ込みが凄い。

先日さいたまを訪れた際に、たまたま浦和パルコ内にあるタワーレコードでこの作品を見つけたのだが、あまりにも凄すぎる収録曲に驚愕し、さらに3枚組45曲というそのボリュームにも驚愕し、これは絶対に購入しよう!と即決したのだった…ちなみにその場で購入しなかったのは、少しでも帰りの荷物を減らしておきたいという思惑があったから。その割には他の余計なもの…いやいや、優先順位からどうしても必要だったものは何の迷いもなく購入してしまったのだけど。
何せこの作品、店頭ではタワーレコードのみ、通販もタワーレコードとソニーミュージックショップでしか販売されていない代物。しかし、複数のレコード会社、レーベルの垣根を越えた作品てあり、更には山下達郎と大瀧詠一の未発表曲が収録されているという、これだけでも充分マストアイテムなのだ。
50ページ以上にも及ぶライナーノーツ。ここでその内容を明らかにすることはできないが、それぞれの楽曲解説に綴られた「裏話」が、非常に興味深い。これを読むだけでも、日本の音楽業界、とりわけその当時売れに売れまくっていた楽曲にどれだけこのサハシのエッセンスが吹き込まれていたのかがわかる。というか、このライナーノーツだけでもホント凄いんですわ。

さすがに知らない楽曲も幾つかあるけれど、きっと我々同世代にしてみれば、まさに青春の多感な時代に、実はどれだけ佐橋ミュージックのお世話になっていたかを垣間見ることのできる作品集。
一ギタリストと言ってしまえばそれまでだが、収録されているミュージシャンの顔ぶれを見ただけでも、彼がいかにこの業界で必要とされ、そしてそれに応えていたか、ほんの一部であるが彼の音楽ヒストリーを辿ることができる。
さまざまな楽曲の中で奏でられる彼のギターの音を聴きながら、この作品を単なるコンピレーションアルバムという括りで片付けるのはあまりにももったいなさ過ぎる。

クインシー・ジョーンズやジャム&ルイス、ベイビーフェイス(LA &フェイス)など、敏腕プロデューサは海外にたくさんいるし、国内にも古賀政男を筆頭に阿久悠や松本隆といった素晴らしい作詞家作曲家がたくさんいるけれど、僕が知る限りでは、バイプレーヤーでここまで称賛されるのは、村上”ポンタ”秀一かこの佐橋佳幸ぐらいじゃないだろうか、と思った次第。

百聞は一見にしかず、ではなく百見は一聞にしかず。
同年代の邦楽好きの皆さん、これはマストバイですぞ!

sahashi

2015年11月13日発売
品番:MHC7-30038
価格:¥4,630+税

CD3枚組 三方背ボックス入りデジパック仕様 Blu-spec CD2
タワーレコード、Sony Music Shop限定販売

【収録曲:DISC-1】
1. UGUISS / Sweet Revenge (1983)
2. NOBUYUKI, PONTA UNIT / Digi Voo (1985)
3. 藤井康一 / LITTLE BIT LOUDER (1986)
4. EPO / 12月の雨 (1987)
5. 岡村靖幸 / 不良少女 (1988)
6. 大江千里 / ROLLING BOYS IN TOWN (1988)
7. 渡辺美里 / センチメンタル カンガルー (1988)
8. 宮原学 / WITHOUT YOU (1988)
9. Peter Gallway / BOSTON IS BURNING (1989)
10. 鈴木祥子 / ステイション ワゴン (1989)
11. 佐橋佳幸 / 僕にはわからない (1989)
12. 杉真理 / Wonderful Life〜君がいたから〜 (1990)
13. 桐島かれん / TRAVELING GIRL (1990)
14. 矢野顕子 / 湖のふもとでねこと暮らしている (1991)
15. 小田和正 / ラブ・ストーリーは突然に (1991)

【収録曲:DISC-2】
1. 槇原敬之 / もう恋なんてしない (1992)
2. ROTTEN HATS / ALWAYS (1992)
3. 藤井フミヤ / TRUE LOVE (1993)
4. 佐橋佳幸 / Zócalo (1994)
5. 佐橋佳幸 / Time Passes On (1994)
6. 鈴木雅之 / 夢のまた夢 (1994)
7. 氷室京介 / 魂を抱いてくれ (1995)
8. GEISHA GIRLS / 少年 (1995)
9. 福山雅治 / HELLO (1995)
10. 山下久美子 / TOKYO FANTASIA (1996)
11. 佐野元春 and The Hobo King Band / 風の手のひらの上 (1997)
12. 川本真琴 / 1/2 (1997)
13. 坂本龍一 featuring Sister M / The Other Side Of Love (1997)
14. 山下達郎 / 氷のマニキュア (2015REMIX) (1998)
15. SOY / 約束 (1998)
16. 山弦 / SONG FOR JAMES (1998)

【収録曲:DISC-3】
1. 大貫妙子&山弦 / あなたを思うと (2001)
2. 竹内まりや / 毎日がスペシャル (2001)
3. Fayray / I’ll save you (2001)
4. 小坂忠 / 夢を聞かせて (2001)
5. MAMALAID RAG / 目抜き通り (2002)
6. Emi with 森亀橋 / Rembrandt Sky (2005)
7. 松たか子 / 未来になる (2005)
8. スキマスイッチ / ボクノート (2006)
9. GLAY / MILESTONE〜胸いっぱいの憂鬱〜 (2012)
10. 真木よう子 / 幸先坂 (新緑篇) (2013)
11. Darjeeling / 21st. Century Flapper (2014)
12. 渡辺美里 / オーディナリー・ライフ (2015)
13. 佐橋佳幸 / ジヌよさらば メインテーマ (2015)
<ボーナストラック>
14. 大滝詠一 / 陽気に行こうぜ〜恋にしびれて (2015村松2世登場!version) (1997)

【寸評】佐野元春 & THE COYOTE BAND 「Blood Moon」

珍しく音楽に関する記事二連投である。今日は、なんちゃって音楽評論家気取りで7月に発売された佐野元春のニューアルバムの寸評を。


ロックンロールは、その時代その時代の現代社会に対する反発を表現する一つの形だと思う。
ぶつけどころのない怒りを互いにぶつけ合い、そしてその魂に火を放ち、昇華する。
しかし時代の経過とともに、ストレート一辺倒だったはずのロックンロールは、いつの間にやらジャブやボディブローという多彩な技を駆使するようになり、まるで多様化する社会に迎合するかのように、色んな形へと置き換えられていった。

社会を混沌に陥れるような言論は封じられ、むしろ社会から爪弾きされる世の中。社会から少しでもはみ出してみようものなら、とことん叩かれ、封殺される。そんな矛盾した正義感がまかり通る昨今の現代社会。
社会に警鐘を鳴らし、対峙するのではなく、そこに上手く溶け込みながら、時折正義感を振りかざす、それが現代のロックだとするならば、それは時として詭弁、虚言、戯言となりうる。

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本作の最初を飾るのは、「境界線」。この曲の発表に際し、彼は沖縄の辺野古を訪れ、率直に意見を述べた。しかしそれは、ファンの間で大きな賛否両論を巻き起こすこととなった。その時を振り返ってのインタビューが掲載されている。
彼は、自然体でロックの真実を探り出し、ジャブやボディブローではなく、ストレートな言葉で、表現しようとしている。ただし、彼の言う「境界線」が何と何を隔て、そして、どこに引かれているものなのかは、正直僕にはわからない。ただ、一つ言えることは、彼と我々リスナーとの間に引かれているものでないことだけは確かだということ。

そして、見えない「境界線」の後に続くナンバーが、「紅い月」。副題は「Blood Moon」。このアルバムのタイトルチューンであるが、「Blood Moon」を和訳すると「皆既月食」。皆既月食の際、太陽の光を遮り、月を紅く染める存在こそがこの地球であること、そしてその月を敢えて「紅い月」と表現したことを鑑みると、実はアルバムの中で最も示唆に富んだナンバーなのかも知れない。

前半は、どちらかと言えばミディアムテンポのナンバー、前作も踏襲したような作品が並ぶ。
中盤になると一転し、毒でも吐くような詞が並ぶ。
そして、後半はクールダウン…。

「COYOTE」「Zooey」に次ぐ、THE COYOTE BANDとの3作目、バンドとしては「COYOTE」の時に既に十分完成されていたのかも知れないが、当時の荒々しさがどことなく研ぎ澄まされ、洗練されたような感じ。かといってその歌詞は挑発的で、現代社会に対する警鐘というよりむしろ、社会や政治に対する皮肉が各所に込められている。しかし彼は、ごく自然にこの社会の行く末を案じ、警鐘を静かに鳴らし、時として対峙も辞さないという姿勢を示したに過ぎない。

この作品をどう読み解き、評価するのかは人それぞれ。ただ、彼はこう言っている。

「自分が書いた曲が、時間を経て、現実が曲に近づいてくるという経験を僕は何度もしている。」

果たして「Blood Moon」は、予言めいた作品なのだろうか。

他方、現代社会を痛烈に風刺した内容と言えるのが、「誰かの神」と「キャビアとキャピタリズム」。特に後者は「インディヴィジュアリスト」を彷彿させるアップテンポのリズムとギターのカット、そして辛辣な言葉が続き、絶対ライブで盛り上がることだろう。

しかしながら、こぶしを振り上げ、髪を振り乱すような激しいロックもなければ、軽妙なポップスもそこにはない。
その象徴として、アルバムに先がけてのシングルと思われた「君がいなくちゃ」が、このアルバムには収録されていなかった。公式サイトの言葉を借りると「全世代に贈る、普遍的な愛の唄」であったこの曲が収録されなかったことに、この作品の重み、特殊性を感ぜずにはいられない。

80年代、彼が「VISITORS」という作品を世に放ったとき、音楽業界ではいち早くヒップホップやラップの要素が取り入れられたその内容に、賛否両論が渦巻いたという。(当時僕は13歳の若造。残念ながらその賛否両論に耳を傾け、咀嚼できるほどの大人でもなければ、耳の肥えたリスナーではなかった。)
あれから31年が経ち、「VISITORS」は今もなお、80年代の音楽アーカイヴスの一翼を担う金字塔として輝きを放ち続けている。

これが、予言めいた作品ではないと信じたい。というよりも、この中に収録されているような社会が訪れる、つまり「時間を経て、現実が曲に近づいてくる」ことはあってはならないのだ。

シュールなジャケットに、危うく重い歌詞の連続、そして洗練された楽曲。佐野ロックの神髄、ここにあり、である。そしてそれは、聴く度にどんどん深みを増している。だが、正直言うと「Blood Moon」は、僕の中でまだ「何か」わだかまりがあってうまく飲み込めていないところがある。裏を返せばそれは、この作品(それも強いて言うならば「直接的すぎる歌詞」)に対する「わだかまり」ではなく、現代社会に対する「違和感」なのかも知れない。

しかし、「VISITORS」と全く質は異なれど、「何か」を抱えたまま、「問題作の一つ」としてずっと燻り続けながら、やがて皆既月食が終わった後の、満月のような輝きを放つのではないかと思っている。

その「何か」はきっと、「確信」なのだと思う。進むべく道は混沌としているし、この道が正しいかどうか、誰も「確信」を持てない世の中。だからこそ、リアルなバンド演奏を目の当たりにした時、その足りない部分がきっと満たされることだろう。10月のライブがますます楽しみになった。

東京音頭/木津茂里×岡村靖幸

ハ~ 踊り踊るな~ら ちょいと東京音頭♪ ヨイヨイ

東京ヤクルトスワローズの応援歌としても知られるあの曲を民謡歌手の木津茂里さんが歌い、岡村ちゃんがほぼ全ての演奏(恐らく和太鼓以外)とプロデュースを担当するというコラボレーションが実現しました。

「東京音頭」は盆踊りの定番曲で、プロ野球チーム・東京ヤクルトスワローズの応援歌などとしても知られている曲のカバー。木津のアルバム「SHIGERI BUSHI」にも同曲のカバーが収録されていたが、今回は岡村のプロデュースにより全く新しいアプローチのカバーになっている。

この曲は木津がボーカルを務め、岡村がほとんどの楽器の演奏を担当。大瀧詠一が長年制作してきた「ナイアガラ音頭」「イエロー・サブマリン音頭」などの音頭へのオマージュと、2020年に予定されている東京オリンピックへの思いを込めて制作された。(ナタリーより)

ここ最近、断続的に他アーティストとのコラボレーションが続く岡村ちゃん。今回は、まさかまさかの民謡歌手とのコラボ。岡村ちゃんよ、あなたは一体どこを目指しているのだ(笑)。

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ジャケットの女の子が可愛らしい一方(しかも通常盤とライブ会場で販売されたものではジャケットが違うんだそうで。くっそー!)で、「いかにも!」という民謡のこぶしを効かせながら、木津さんのボーカルが冴えまくっています。その一方で、岡村ちゃんの影、というか声はほとんど聞こえません。「アァッ」とか「オゥ」とか「フォー」とかいう、例の独特の合いの手もなし。正直ちょっと寂しいけれど、楽曲そのものには岡村ちゃん「らしさ」が垣間見えて、民謡なんだけど斬新で格好いいです。「東京音頭」ではなく「TOKYO RHYTHM」と標記しているのも妙に納得。DISCOともDANCEとも、ちょっとまた違うんだなこれが。

個人的にはこれ以外の民謡曲についても、原曲を崩さない(歴史や民謡文化にドロを塗らない)程度でアレンジして発表するのもアリだな、と思いました。
ちなみにこのCD、春のツアー「This is my life」の際に会場で先行販売されていたらしいのですが、何せ会場に行くことができなかったという事情もあり、ようやく手にすることができました。

まあ、歌が終わった後の後半は若干単調気味となるため、1曲で5分を超えるアレンジはちょっと長すぎるんじゃないかな、という気がしないわけでもないのですが、それでもまあ、これが岡村ちゃんなんだろうな、と。

9月には園子温監督直々のオファーで制作した「映画 みんな!エスパーだよ!」の主題歌、「ラブメッセージ」が発売予定だそうです。

15年ぶりの表舞台

宮原学というミュージシャンを、どれぐらいの人が知っているだろうか。

僕が彼の音楽と初めて接したのは、従姉が持っていた「SCRAMBLE」というCDを耳にした、今から25年以上も前のことだ。

一度それを聴いて衝撃を受けた僕は、従姉に頼み込んでようやくそのCDを貰い(それも、半ば強引に貰った)、何度も何度も何度も何度も聴いた。まさに、愛聴盤だった。

好き嫌いはあるだろうが、宮原学はどちらかと言えば過小評価されているアーティストじゃないかと、僕は勝手に思っている。

彼の声は凄く特徴があって、良く言えば野太い、他の言い方をするならば力みの入った歌い方が特徴的で、決して上手いというわけではないけど、一度耳にしたら離れなくなる、そんな独特な唄い回しが僕のお気に入りだ。
恐らく好きな人はとことん好きで、きっとかなりディープなファンも多いんじゃないかと思っている。(あ、僕はそんなにディープではないです。)

歌唱力よりも、どちらかといえばギターテクニックが注目され、同じレーベルに所属していた元レベッカのメンバー(小田原豊、高橋教之、是永功一)らと結成した「Baby’s Breath」(アルバムを2枚出したけど、どちらも名盤だった。)での活動の後、一時活動を休止してからは、近藤真彦や安室奈美恵、相川七瀬などのツアーメンバーとして帯同するようになり、メインというよりサポートでの活躍が目立つようになった。

そして、何度かレコード会社の移籍を繰り返した後、99年に発表したアルバム「MANABU MIYAHARA」を最後に、名前すら見かける機会がなくなっていた。(実は体調を崩して療養していたこともあったようで、結構波瀾万丈の時期を過ごしていたらしい。2006年から始まったブログは、地味に更新されていたみたいだけど。)

そして、長い潜伏期間を経て、09年には盟友の小田原豊と西山史晃(元ROGUE)とともに、「KISSAMA」というバンドを結成し、地味に活動をしていたらしいのだが、僕はそれすらも知らなかったわけで…。

…と、宮原学のバイオグラフィーみたいなのをつらつらと並べてみたが、僕の周りで彼の名前を知っている人って、実はかなり少ないんじゃないかと思う。
あるいは、久しぶりに聞く名前に、思わずのけぞりながら懐古的になってしまうか。

多分「あの人は、今」みたいな番組に出ても何ら不思議ではないような気がするが、そもそも彼の知名度を考えると、それすらもあり得ないことなのだろう。

彼を例えるのによく引き合いに出されるのがブルース・スプリングスティーン。
でもどちらかと言えば、もっとハードロック系への憧憬がある人なんじゃないか、そう思っている。

個人的には江戸屋レーベルで発表された「RHAPSODY」と前出の「SCRAMBLE」、そして「FLASH BACK」が名盤過ぎてたまらんのだけど、今はどれもこれも廃盤になっていて、入手困難。

そんな既に忘却の彼方へと葬られても何ら不思議ではない彼の音沙汰を、ここ最近急に耳にするようになった。

しかも、何とフルアルバムとしては15年ぶりとなる「宮原学」名義での新作発表。
…といっても発売されたのは今年1月のことなので、発売されていることすら知らず、気づいて慌てて購入した、という顛末なんだけど。

2年半にもわたるレコーディングを経て、先行配信されていた楽曲のリミックスバージョンや、セルフカバーなど、全12曲を収録したオリジナルのアルバム。もう一度言うけど、15年ぶりだって(笑)。

アルバムには、前出の小田原豊の他、同じく「Baby’s Breath」のメンバーだった柴田俊文や、「パール兄弟」の窪田晴男など、気心知れたミュージシャンが脇を固めている。
最初聴いた時に思ったのは、昔みたいな重厚感溢れるコテコテのロックというよりは、むしろいぶし銀のブルースっぽい感じ。
あの野太い声も相変わらずだけれど、寄る年波には勝てないのか(笑)、声量は以前より落ちている。
ただ、その代わりといっては何だが、円熟味を増した味のある声が、今回のアルバムのプロデュースをサポートした小田原豊の心地よいドラム音とも相まって、非常に味のあるいい作品に仕上がっている。

そして、これは狙ってのことなのかも知れないが、12曲が3つのパートに分かれていて、前半はどちらかといえば、これまでの路線を踏襲しつつのハードな曲、中盤はこれまた欠かすことのできないミディアム~スロー、そしてブルーシーな曲、そして終盤は既発曲のリミックスという流れ。

年相応といっては本人に失礼かも知れないけれど、声量のことはともかくとして、これだけ素晴らしい作品に仕上がっただけでも凄いと思うし、錚々たる顔ぶれのミュージシャンがサポートしつつも、今現在の宮原学の作品が聴けるということ、それだけでも充分過ぎるぐらい満足だ。

ジャケットがシンプルで、メッセージがなかなか伝わりにくいだけに、まずはいいから黙って聴いてみろ!といった感じだろうか。

個人的には、昨年12月に会ったらしい角松敏生との出逢いが今後どう展開するのか、非常に興味がある。頼むから何かやってくれ(笑)。

最近買った音楽

・エレファントカシマシ「[the fighting men’s chronicle] ~ THE ELEPHANT KASHIMASHI official live bootleg box」
・エレファントカシマシ「日本 夏」
・エレファントカシマシ「野音 秋」
・エレファントカシマシ「the fighting men’s chronicle special THE ELEPHANT KASHIMASHI LIVE BEST BOUT」

ここ最近、自分の中で突如始まった「エレファントカシマシ祭り」。ここ最近立て続けに購入した音楽は全部エレカシ。通勤時はずーっとエレカシの音楽を聴いている。

デビュー25周年。デビューした頃の彼ら(というかボーカルの宮本浩次)は、本当に何か常に苛立っているような感じで、どこか野蛮で、どこか暴力的で、でも、そんな彼が唄う歌詞がどこか叙情的だったりで、何かよくわからないけど、初めて彼らをテレビで観たとき(「eZ」という音楽番組だった。シリーズのDVD化、マジで希望。)から、あっという間に引き込まれてしまった。

でも、あれから25年経った今も、彼らを生で観たことはなく、それどころかボーカルの宮本が突如、急性感音難聴とかいう病気を発症して、バンドそのものが無期限の活動停止に入ってしまった。実は06年にもメンバーの一人が慢性硬膜下血腫を発症したことがあったり、レコード会社との契約打ち切りで活動ができなくなったりと、バンドのキャリアとしては決して順風満帆ではなかったエレカシ。

そんな彼らの25周年を記念して発売された6枚組のライブCDボックスが発売され、更には、05年にライブ会場とネット限定で発売されるや、あっという間に完売し、一時は数万円の値がついた伝説のライブ盤2作「日本 夏」「野音 秋」の再発、そして、文字通りライブのベスト盤の発売、更に更に過去の作品のリマスターそして未発表曲をコンパイルした2作品の発売、9月にはCCCDでのみ発売されたCDの再発などと、枚挙に暇がないぐらいの発売ラッシュが続いている。


通販限定作品は、こちらから。

そして、昨年9月から無期限活動停止となっていたバンドの再始動が決定し、9月には日比谷野音、10月には大阪城野外、更に来年1月にはデビュー25周年を記念したスペシャルライブを「さいたまスーパーアリーナ」で行うことが発表された。
活動再開の報を聞いたときには思わず耳を疑ってしまったのだが、9月10月はちょっと厳しくとも、1月は何とか観に行きたいなぁ、とか思ったり。

で、CDに換算すると都合10枚となるエレカシのライブ盤を、合間を縫っては毎日毎日聴いているワケなんだけど、何か粗暴さの中にも優しさが滲み出た、凄く良い作品だな、と思ったし、これなら会場に客電がついたままだろうと、座ったままでライブを聴くことを強要されようと、全然気にならないんじゃないか、と思った。
むしろ、その一触即発の緊張感漂う雰囲気を味わってみたいかな、なーんて思ってみたり。

とにもかくにもエレファントカシマシ、復活おめでとうございます。
最後に、僕が大好きな曲を御覧頂きながら、今日はお別れです(笑)。