「青森県ゆかりの文学」 斎藤 三千政




* 出版社 : 北方新社
* 出版年 : 2007.11
* ISBN : 9784892971129
* 税込価格 : 2,625円
* ページ数 : 412P
* 判型 : B6

今日は久しぶりに書籍を紹介しようと思う。
歴史や文学には人一倍疎いこの僕がこの書籍を紹介する理由は極めて明白。
僕が筆者と「知り合い」だからである。
否、「知り合い」というのは非常に馴れ馴れしい言い方だった。


何のことはない「教師と生徒」の関係である。
筆者の斎藤氏(氏というのも何だかバツが悪いので、以下「先生」と呼ばせてもらう。)は、現在青森県立黒石高等学校の校長を務める。しかし今から約20年前、僕にとって斎藤先生は「隣のクラスの担任」であり、「うちの父と高校同期だったヒト」であり、「現国の先生」という間柄に過ぎなかった。もちろん20年経った今も、この関係に変わりはない。
イヤ、正直な話をすれば、高校を卒業して以降、その関係はどんどん希薄になっていったといっても過言ではない。

それが、ひょんなきっかけで僕が言い出しっぺとなり開催することになった、高校の同期会である「一平会」に先生にも出席して頂いたことで、その関係が微妙に崩れた。実際この会を開催して以降、他の先生との関係も「教師と元教え子」という間柄以上の関係が再構築されていったのも事実である。

実は、1月5日に本書の出版祝賀会が開かれた。
僕は、ちょうどその日が例の検査日だったこともあり、せっかくご案内頂いたにもかかわらず欠席しようと思っていたのだが、出席予定だった父が急遽法事により欠席、僕が代理出席することになった。

300人ほど集まった会場は、錚々たる顔ぶれ。そんな中に、場違いとも思える僕の姿がポツン。てっきり立食だと思っていたパーティーはテーブルが指定され、半座席指定状態。ちなみに僕が座った席は、父と同期の方々が顔を並べており、これまた完全に場違い状態。隣のテーブルに同期の輩が一人、そして他のテーブルには高校時代の先生の姿が何人かお見受けされたことが、せめてもの救いだった。

現在「弘前ペンクラブ」の会長を務める獏不次男氏(実はこの方、高校時代の僕の担任)による作者紹介、国立大学法人弘前大学の遠藤学長、木村衆議院議員のご祝辞の後、黒石市長による乾杯。
遠慮がちにビールを酌み交わしながら、早速出版された本を一読し、目から鱗が落ちた。

津軽はもとより青森県の文学界は、実に多種多彩な人材に溢れている。太宰治に始まり、寺山修司、石坂洋次郎、高木恭造、三浦哲郎、長部日出雄等々…。
文学に疎いこの僕でさえも、「青森県出身の文学者は?」と聞かれたら、これぐらいは名前が出てくるのだ。

この書籍は、青森県の近代文学を軸とした、そんな青森県出身の作家の作品(その数約60名、100作以上!)のブックレビューである。前述の作家陣の他、ルポライターの鎌田慧や評論家の三浦雅士、更には同人誌にも目を向けるなど、実に多岐に渡る。
地元紙の東奥日報、陸奥新報に、平成3年から約15年近くにわたり掲載された論評の集大成。400ページ以上にわたる、渾身の歴史的作品といっても過言ではないだろう。

先生はかつて、青森県近代文学館の室長を務めていたこともある。その頃には既に書評掲載がスタートしていた訳だが、そういう諸々の伏線が、今回の作品出版に至ったのだろう。

いずれにせよ、青森県の近代文学を知る上でも、重要な史料となる書籍である。恐らく、青森県近代文学の礎として、多くの人に読み継がれていくことだろう。いや、そうあることを願う。某新聞の書評にも書かれていたが、下手をすれば津軽ばかりに傾倒する文学史ではなく(どうも青森県人は津軽と南部という色分けが好きなのだ)、県内全ての作家を満遍なく網羅しているあたりも、先生らしい配慮だ。そういう見地からしても、青森県近代?現代文学の入門書として好適な作品であると言えるかも知れない。

ちなみに先生は、この3月で定年退職を迎える。
退職後は、きっと文筆活動に更なる磨きをかけることだろう。

青森県の近代文学は、とどまるところを知らないのだ。

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