KIRIN 【円熟】試飲記

今日はまず、ビールと発泡酒の勉強をしましょう。ご存じの方は読み飛ばして下さい。
ビールと発泡酒の違いというのをご存じでしょうか。似たような味なのに価格が違うのは、酒税が異なるからだということは周知の通りだと思います。それ以外の違いは、原材料にあります。
ビールの原料は麦芽、ホップ、水、政令で定める物品(麦、米、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、でんぷん、糖類、カラメル)。で、水とホップ以外の原料における麦芽の使用比率が、66.7%(3分の2)以上と決められています。
発泡酒は麦芽又は麦を使用することのほか制限はなく、一般的には、ビールの原料のほかに、果実、大麦、小麦などが使われます。
これがいわゆる「第三のビール」になると、主原料を麦芽やホップなどに限定しないため、ビールとは似て非なり、ということになります。
このカテゴリーとしては「ビール」とも「発泡酒」とも異なる「その他の雑酒2」や「リキュール類」として分類されるために、財務省からすると発泡酒ならぬ「脱法酒」ということで、目の上のたんこぶ的な存在となっているのは周知の通り。


せっかく消費者の立場に立って各社が苦心の末に生みだした産物なのに、それを「酒税が低いけど味が似ているから増税対象」って目くじら立てている財務省のお役人どもは、きっとヱビスとかプレミアムとかいう類の「高級なビール」しか飲まないんでしょうね。消費者の視点から考えるという発想が全く感じられない。僕も役人の端くれだけれど、この発想はホント腹が立ちますよ。
ところで僕が思うに、ビールと発泡酒の決定的な違いは、原材料もさることながら製造工程にあるのではないかと思っています。ビールは、必ず製造工程に「発酵」が伴いますが、発泡酒は発酵しなくてもいいことになっています。だから、発泡酒を飲んだ時に「薄いな」とか「何かパンチが弱いな」と感じるのは、この発酵という工程が弱い(もしくは全くない)からだと思います。要するに発泡酒には、キレはあってもコクがないのです。
また、いろんな発泡酒が手を変え品を変え各社から相次いで発表されていますが、逆にこの多岐にわたる発泡酒の広がりは、愛飲家を自認する僕にとっては「一体何の違いがあるのか?」という素朴な疑問を生み出す要因ともなりました。アサヒに負けじとキリンも糖分カットだプリン体カットだと健康重視の商品を次々と発売して行きましたが、ますますコクやキレは損なわれていくこととなりました。実は僕が発泡酒を敬遠する理由の一つが、ここにあります。
さて。本日の試飲会の主役はKIRIN「円熟」。つい先日発売されたばかりの新製品です。
カテゴリーは「発泡酒」。アルコール度数は6%と、高めになっています。

まず、「このコクが出せるまでに11年かかりました」という触れ込みに強く惹かれました。KIRINではこの発泡酒をある種の集大成と位置づけているようです。そして、同社の「極生」の流れを汲んだようなシンプルなパッケージは、どことなくこれまでの発泡酒とは異なる雰囲気を醸し出しています。11年。長かったなぁ…(しみじみ)。
「円熟」では、ロースト麦芽、カラメル麦芽、大麦麦芽、小麦麦芽の4つの麦芽と、大麦小麦の2種類の麦を使用しています。なるほど同社の発泡酒「淡麗」や「極生」を見ると、麦芽と大麦、ホップにコーンスターチなどを原材料としており、確かにここまで麦芽や麦にこだわっている発泡酒は、他の発泡酒と比較しても群を抜くかも知れません。
「発泡酒」や「第三のビール」というのは、原材料の配合度合いや原材料の種類そのものによって大きく左右されるため、「偶然の副産物」ではないかと思います。そんな「偶然の副産物」を確固たるものにするために、試行錯誤を繰り返した結果、現在商品化されている発泡酒や第三のビールが数多く存在するという事実があるのだと思います。
恐らくこの「円熟」も、そんな試行錯誤の末の商品なのでしょう。しかし、4種類の麦芽と2種類の麦のブレンドという、これまでの発泡酒には類を見ないその贅沢さは、果たして吉と出るか凶と出るか…。
では、ご高説はともかくまずは一口…。
グビッ…..
ん…….?
あれ?
こ、これは……!!
何か、今までの発泡酒に対するイメージが覆されたかも!!!
ビールほど風味があるというわけではないにせよ、この口当たり、そして後味はちょーっと反則っぽくないですかっ!
….というのが第一印象。
では、詳しく解説しましょう(笑)。
発酵という過程が弱い(あるいは伴っていない)ため、そもそも発泡酒に香りを期待するのは酷な話。実際この「円熟」も、そんな強い香りがあるというわけではありません。ところが、グラスに注いだ時の色を見ると、限りなくビールに近いという…(ロースト、カラメル両麦芽の影響大と思われ)。
そして問題の味。多分これ、「ビールです」といわれても気づかないかも知れません。端的に言うならば、ビールと遜色ない味です。発泡酒の多くは、キレばかりを追い求めたツケとして、飲んだあとに水っぽさが口に残る感じがあるのですが、「円熟」にはそれがあまり感じられません。これがKIRINでいうところの「コク」なのでしょう。香りはそれほど感じられませんが、口に入れた時の味は結構ビールに近いものがあります。色だけかと思ったけれど、ちゃんと苦みが口に残っているし。
うむ。久しぶりに発泡酒を飲んだけれど、これはエンタイトルツーベースくらいの大当たりだなぁ……って、表現が微妙ですか?
いや、あともう少しでホームランだけれど、ワンバウンドでスタンドインするくらいの「大当たり」だったということで。
アルコールが高めということも功を奏している感じ。
発泡酒にありがちな甘みもほとんどないし、僕は結構好きな味だな、これ。
※念のため申し上げますが、平日の昼間から飲んでいるわけではありませんので…。

KIRIN 【円熟】試飲記」への3件のフィードバック

  1. ちゃき

    CMみて飲んでみたいな?と思っていました。
    益々飲みたいな~★

    返信
  2. ペーズリー

    そうなんですか?!
    ビール類があんまり好きでなくて(その他が好き)、パートで酒屋の店番やってる私にとっては、とってもいいご意見です!!
    またお客さんにそう言って売りますわ?♪
    (只今店頭セール中)

    返信
  3. nonvey

    補足しますと、この発泡酒の購買層、ターゲットは40代を中心に、ということらしいです。なるほどそれもわかるような味です。発泡酒の割には落ち着きがあるといいましょうか、安定しているといいましょうか、ハイ。

    返信

コメントを残す