佐野元春 「THE SUN STUDIO EDITION」 EP

ここ数ヶ月、「CD」という媒体を購入することを「意図的に」避けていた。本当に欲しいと思ったCDだけを購入することに終始し、発売日から大幅に過ぎてから購入した、という作品も少なくない(ex.吉川晃司、Maceo Palker etc…)。
その理由としては、最近純粋に「聴きたい」と思う音楽が減っていること、そしてCDという音楽媒体に、いい加減嫌気が差してきたことが挙げられる。前者は自分の好みの問題なのでともかくとして、後者に関しては特に、例の「CCCD」なる似非銀盤の登場により、購入したいと思ったCDが実はこの似非銀盤だったことが、僕の購入意欲を悉く損ねていたことが大きい。先日、店頭で発見し、喜び勇んで購入したbabyfaceの新譜(US盤)が、見事CCCDだったことは、先に紹介したとおりである。もはや、僕の欲しいと思うCDは、Prince関連と吉川晃司にしか向けられないのかも知れない(笑)。


今更取り上げる話ではないが、世間ではCD売上げ枚数が減少していることが報じられ、音楽業界ではその原因が、違法にやり取りされる音楽ファイルに起因するところが大きいと主張している。確かにそれも一理あるだろう。しかしながらその一方で、そういった不正を阻止しようとCCCDにこだわる一部の製作会社が、安全性の全く保証されないCCCDの販売に反対するリスナーの声に、全く耳を貸そうとしないことも要因だと思うのは、僕だけではないはずだ。
その一方では、CDに変わる様々な媒体(「着うた」然り、音楽ファイルの「DL販売」然り)が登場しており、もはやCDの売上だけでは判断しかねる時期に差し掛かっているのだろう。
僕は、この春にiPod shuffleを手に入れた後、PCにiTunesをインストールした。所有しているCDやMP3をシコシコとiTunesのフォルダにぶち込み、shuffleに転送。そして今日もまた続く、「プリンス三昧」。
片や、先日から日本国内でも開始されたiTunes Music Store(iTMS)による音楽のDL販売。
意外にもこれが僕のツボを刺激することとなり、開始当日のウルフルズに引き続き、今度は佐野元春の音源をDL購入した。もちろんこれも、現在のところiTMS限定販売だ。しかも佐野元春の公式サイトによると、近日中にライブ音源の販売も予定されているらしい。
音楽の新たな楽しみ方を発見した僕は、恐らく今後暫くの間は、本当に欲しいと思うCDの購入を見送ることになるだろう。代わりといっては何だが、手軽で安価なiTMSには、どっぷりはまりそうな予感である(ちなみにストーンズの新譜も予約受付していた)。
さて、その佐野元春である。もう昨年のことになるが、ずっと離れることはないだろうと思っていたEPICを離れ(僕にとってはかなり衝撃的だった)、独立レーベルであるDaisyMusicを設立。この伏線には、CCCDに固執するソニーとの意見の相違も囁かれていたが…。
ここ最近は、どちらかというと保守的なイメージの強かった佐野元春が、先鋭的取組とでもいえばいいのだろうか、今回iTMSに参戦。
しかも、旧譜の販売ではなく、昨年発売されたアルバムからの完全バージョンが3曲(もちろん未発表)、未発表曲が1曲、そして、米国同時多発テロが発生した際に緊急発表し、話題を呼んだ「光」の公式バージョンなど、全6曲で900円。いずれも今回初お目見えとなる曲ばかりである。
恐らく、アルバム「THE SUN」を聴いていない人にしてみれば、何の食指も動かない「楽曲集」であるはずなのに、iTMSで販売が開始されると同時に、アルバムランキングの首位に躍り出た。
収録曲のうち「光」に関しては、iTMS独占販売シングルとして150円で販売されている。この曲は、4年前の同時多発テロ事件に衝撃を受けた佐野が、その日のうちに書き上げたという「売り物ではない歌」で、期間限定で無料DL出来る仕組みになっていた。その楽曲のアナログっぽさが、デモ盤を思わせる雰囲気を醸し出していたのだが、今回、多くのファンやリスナーの要望を受け、遂に「売り物」としての正式盤が登場したという次第である。折しも今年は戦後60年。この曲に込められた「非戦」への思いが、ファンやリスナーの要望、佐野の思惑と合致したのだろう。

めちゃくちゃになったものは
決して取りもどせはしない
それは意味のない繰り返し
憎しみの鎖 断ち切るまで

余談ではあるが、「光」の販売収益は、佐野元春による個人的な社会貢献活動を支援する非営利組織「Naked Eyes Foundation」[NEF] を通じて、アフガンやイラクの戦争で傷ついた子供たちのために寄付されるそうだ。

佐野元春 「THE SUN STUDIO EDITION」 EP

最後の1ピース(complete version)
恵みの雨(complete version)
観覧車の夜(complete version)
光(final version)
タンポポを摘んで(unreleased track)
光(instrumental version)

再び、「THE SUN」がヘヴィローテーションになりそうだ。

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