第52回 東北社会学会(その1)

まずお断り。ここからしばらくは、読み手を全く無視した日記になると思います(笑)。
自分で整理しておきたいので、ここに記しておきます。
7月30日午前11時。仙台到着。早めの昼食を近くのラーメン屋で済ませ、仙台駅前からバスで移動。
会場の宮城教育大学は、仙台駅からバスで20分ほどの、お世辞にも交通の便がいいとは言えない、かなり高台にあります。しかも、周辺にはコンビニや食堂どころか住宅一軒もなく、見渡すとオニヤンマが悠々と飛び、蝉の幼虫が手の届くところで成虫に脱皮しているという(笑)、それはそれは自然豊かなところでした(ちなみに会場となった教室ではアブが飛んでいました…)。
学生さん達は一度ここに来ると、一日をここで過ごさなくちゃならないんだね。そういう意味では、勉学に適した「恵まれた環境」かも知れないけど…(笑)。
僕が会場入りしたのは午後の部から。よく考えてみると、明日午後からの発表なんだから、別にこんな時間に来る必要はなかったな…と思ったのですが、あとの祭り。ここは学者気取りでシンポジウムに参加してみようと腹を括りました。
午後1時。
午後の部は課題報告。3名の方の報告のテーマは「若年労働と階層社会の未来」。


企画の趣旨(学会HPより抜粋)。

 「フリーター」なる語を『リクルート・フロム・エー』が最初に使ったのは、1989年といわれるが、1990年代のバブル崩壊後の「失われた10年」を通じて、若年労働者の不安定就労はつねに問題となってきた。さらに、2000年代に入って、イギリスのブレア政権が“NEET (Not in Education, Employment and Training)”なる語を使い始めると、この語も瞬く間に日本に広まった。実際、2002年に内閣府が実施した「若年無業者に関する調査」(ニート調査)の中間報告が、2005年3月になって公表されたが、この調査では、「家事従業者」を算入したためもあり、15歳から34歳の非学生独身者で「職業訓練を受けていない無業者」が厚生労働省の『労働経済白書』の推計を上回る847,000人いると推定している。さらに、4月にはUFJ総合研究所が、35 歳以上でフリーターをしている「中高年フリーター」が、2001年の46万人から、2011年には132万人に増え、2021年には200万人を超える見通しだとする推計を発表した。そして、所得が少ないフリーターは、結婚する割合が低いため、子どもの出生率を年間1〜2%押し下げ、少子化を加速させるなどとも指摘している。
「新たな階層社会」の到来が言われるなか、高齢者における所得階層の分化の問題とならんで、若年層の非正規雇用や不安定就労は「新たなアンダークラス」を誕生させるという指摘もある。その一方で、「豊かな社会」における若者の「自分探し」も活発化し、職業生活以外のボランティア活動などを通じて、新たなライフスタイルの実現を目指す若者も増えた。また、学校教育においても早期のキャリア・デザインの必要性が言われ、実際にインターンシップの導入などの取り組みがなされているが、お仕着せのキャリア教育には若者が「乗ってこない」という現状がある。
こうした現状を踏まえ、今回の課題報告では、高卒労働者や大学生の就業意識・行動の分析も踏まえて、若年労働者の問題から新たな階層社会の未来を考えてみたい。

わかるようでよくわからない。なかなか重々しい(のか?)。
内容も、確かに重々しかったのですが、聴いてみると意外に「へぇ〜」と思うこともあり、机にひれ伏して仮眠のハズが、すっかりのめり込んでしまいました。
報告者は次の3名。
「Hidden Stratification in Japan’s Youth Labor Market」 ハーバード大学 M.ブリントン教授
「地方都市の大学生における就業意識の変化」 岩手大学  横井修一教授
「近代的階級構造のゆらぎ−アンダークラス化する若年層」 武蔵大学  橋本健二教授
横井教授、橋本教授の報告も非常に興味深く面白かったのですが、特に興味深かったのが、冒頭を飾ったブリントン教授の報告。
報告のタイトルを直訳すると「日本の若年労働市場における隠れた階層化」といったところかな。
報告は日本語混じりの英語で行われ、通訳がいたのですが、装置のトラブルもあってあまり聞き取れず。よって、自己流の意訳含む。ちなみに僕、英検3級(涙)。
以下、概略。

フリーターやニートという階層がどうして増えているのか。
社会構造の問題点(背景)として、日本の教育では、「いい大学」に行って「いい会社」に就くことがステイタスのようにたたき込まれている。
川崎市にあるハローワークで、(偶然に)手に入れた求人票をサンプルに、管内にある高校の進学就職状況を調査。
工業高校や商業高校(ここではまとめて「職業高校」と表現)では求人率が高く、未就学未就労の率(いわゆるフリーター層)は低い。
職業学校を卒業した生徒が、雇用された場において生み出す実績が、学校と雇用する側との「実績関係」により繋がっている(すなわち、引き続き同じ学校に求人を依頼する)という、雇用のメカニズムが存在する。
同様に、普通高校を調査した場合、偏差値の高い高校では進学率が極めて高く、また、逆に偏差値の低い高校では就職率がそれなりに高い。
ところが、その間にある、偏差値が平均程度の普通高校を調べてみると、就職率も高いわけでなく、進学率も高いわけではない。
雇用する側からすると、このレベルの学校に対する求人が少なく、その理由として、
1.高校からの求人情報、生徒の動向が把握しにくい。
2.偏差値レベルの似通った職業高校と比較すると、どういったスキルを持っているのか不透明である。
ということが挙げられる。
さらに、この層における「浪人」の率も高くなっており、未就学未就労率が群を抜いている。
世間の評価は「普通高校」に比重を占めるが、実際の雇用求人は、スキルを持った「工業高校」に集まる。しかし、「普通高校」でも、偏差値の高い部類に評価が集まり、中程度の評価はそれほどでもない。
この「中間レベル」にある普通高校の卒業生の階層こそが、「フリーターとなりうる層」の中心を形成していると仮定できる。
また、いわゆる「3K」を回避したがる若年層が増加し、これが「パラサイト・シングル」を生み出し、「Neet」と呼ばれる層に繋がっていると考えられる。

この報告の問題点(会員・コメンテーター指摘)
1.「川崎市」という地域であったため、職業高校に対する求人率が必然的に高いのではないか。
2.就職後の「離職率」を鑑みると、この調査だけで仮定するのは難しいのでは。
3.ハローワークの求人票を、今後手に入れることが困難。

総括
1.他地域におけるサンプルとの比較調査により、この報告の方向性が見えてくるのでは。
2.長期にわたる追跡調査が必要
3.高校−求人企業間のネットワークを図表化したのは画期的(確かにわかりやすかった)

nonvey所感
教育によって叩き込まれている「いい大学」「いい会社」という話題提供には大いに賛同。
一方で、他地域における高校のみならず、大学レベルで同様の調査を行った場合、どういった結果が出るのかという点にも興味あり。

ざっとこんな感じでしょうか。
気がつくと終了時間は、予定の17時を超えることに。
で、終わったあと例の「7,000円の懇親会」があったのですが、自由参加ということで(無事に)パス。早く下界に戻らないと、と思い大学前にあるバス停に向かうと、何と目の前でバスが出発してしまった…(怒)。その後バス待合室にて、次のバスを30分も待つ羽目に。トホホ…。
このあと、先にホテルのチェックインを済ませ、軽くシャワーを浴び、一人で市内をプラプラ。で、焼鳥屋でビール1杯飲み干し、再びホテルへ。向かう途中、懇親会に参加していた教官から電話があり、間もなく下界に行くので、どこかで一杯やりましょう、とのこと。20分後に教官達と合流し、前述のおでん屋「三吉」に向かったのですが、話を聞くと、何も飲めず喰えずで、腹を空かせて帰ってきたそうな。行かないで良かったぁ(笑)。
ところが、教官は誰も多く酒を飲もうとしません。
聞くと、明日の発表に備え、緊張感が高まって来ているとのこと。まるで他人事のように一人気持ちよく酔っぱらっていた自分が、ちょっと恥ずかしくなりました。
(多分続く。)

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