迷いと葛藤の狭間で -北海道マラソン2017 (後篇)

ダラダラと3度に分けてお届けしてきた北海道マラソン2017、やっと今回が最終回です。
毎度のことながら独りよがりの内容、長文駄文でホント申し訳ありません。(実はこれでも結構端折っているのですよ。笑)


32キロを過ぎて残り10キロとなった付近、足が痙りそうになるのをジッと耐えながら走り続け、ふくらはぎの疼きがピタリと止まったのを見計らってもう一度気合いを入れ直し、再びペースアップを図ります。今思うと、よくあそこで足が痙らなかったものだ、と。
集中力を切らさないよう、痛いところ(足裏)には意識を向けず、ひたすら前方だけを見ながら、いよいよ35キロを通過。残り約7キロ、辛いのはみんな一緒。ここから先は、自分自身との勝負なのであります。

やがて、先行していたナオキくんの背中が徐々に大きくなり、37キロ付近でとうとうその姿を捉えます。ここはもう、お互いを鼓舞し合うしかないでしょ。

「頼む。ひ、引っ張って!」
「は、はい!」

しばしそのまま並走。

「ありがとう!背中見えてきたので追いかけることができたよ!」
「こちらこそありがとうございます!」

ふと見ると、彼はまだまだ余力を残して走っている感じ。

「このまま行けば多分3時間10分切れるよ!」

ナオキ君ごめんなさい。今だから明かしますが、実は時計を全く見ていなかったので、3時間10分を切れる、というのは虚言でした。
でも、彼の走力をもってすれば、絶対3時間10分は切れるハズという、まるで根拠のない確信がありました。

「ホントですか!?」

再びギアを入れ直したかのように彼は、スイスイと前へ出て行きました。

徐々に小さくなる姿を見ながら、「頑張れ、キミなら絶対3時間10分切れる…。」と背中を押す気分。
僕はというと、いよいよ最大の鬼門である北大入り口へ。ここで再び足が疼き始めますが、「我慢、我慢」と意識を他のところへ向けます。

もう3キロしかないのか…。
昨年、両脚が痙って悶絶した地点が目に飛び込んできました。一瞬イヤな思い出が頭をよぎりますが、何事もなかったかのように足を運びます。これで昨年の壁は叩き壊せたかな?

いよいよ40キロを通過です。でも、電光掲示板は怖くて見ることができませんでした。
ただ、腰は落ちていないし、足もまだ前に出る。よし、もう少し行けるぞ!迷いも葛藤も一蹴じゃ!
最後のラストスパートとばかりに再びペースを上げます。

…と、ここまでご覧になってお気づきの方もいるかも知れません。一体何度ペース上げるんだ?と。
実は自分の中では、相当ペースが落ちているような感覚に陥っていました。
ところが実際は、32キロ付近で一瞬ペースが落ちたものの、ほぼイーブンに近いペースで走り続けており、結果として少しずつペースアップが図られていたようです。

「あれ?」
41キロ手前で再びナオキ君の背中が見えてきました。
実は彼、この辺りで足が痙りそうになるのを必死にこらえていたらしく。
残り1キロとなったところで彼の姿を完全に捉え、背後から大きな声を出します。

「ナオキ、ラスト1キロ!行くぞ!」

観客が驚くぐらい大きな声を張り上げながら、彼の横を駆け抜けます。
ゴールへと向かう最後の右折の手前、今度はササダ君の背中が見えてきました。
彼もストイックに練習を重ねてきた一人。この大会にかける並々ならぬ思いがあることは重々承知していました。

彼にも追いつけるか?…なんてことを考えながら最後の直線へ。
いよいよゴールの電光掲示板が見えてきました。3:07:11,12,13…と秒を刻んでいます。
今年の目標であった3時間10分を切れることを、この時初めて確信!

ササダ君がゴールした数秒後、僕もゴール!思わず自分に拍手。
背後から「ササダ君!」と声を掛けると、ビックリした表情で「おお!お疲れさまでした!」

お互いの健闘をたたえ、握手。程なく、ナオキ君も3時間8分台でゴール。

「3時間ヒトケタ行けました。ありがとうございます!」
「こちらこそありがとう!一緒に走れたおかげ!ホントありがとう!」

と、彼ともがっちり握手。
ちなみにこの模様は、YouTubeで公開されている全ランナーのゴールシーン、電光掲示板が3時間7分45秒を過ぎた辺りから3時間9分ぐらいまでの間にしっかり映り込んでいます。

しかし何でしょう、この清々しい気分は。
もしかしたら38キロ付近から、ランナーズハイの状態になっていたかも知れません。
メダルとタオルを受け取りながら、走り終えた後の余力を考えると、実はもう少し行けたのかも知れないと、早くも欲が出てきました。
バカですよね。たった今42.195キロを走り終えたのに、もう次のことを考えるなんて。

頭から水をかけてもらい、完走証を受領。速報タイムは3時間07分58秒。

これまでの持ちタイムを約5分30秒短縮。遂に3時間10分を切ったという喜びを、ジワジワと噛み締めます。

正直言って、自分でも驚くぐらい会心のレース運びでした。
最初の5キロはともかく、折り返しを過ぎた後も大崩れすることなく、後半にペースが上がるというネガティヴスプリットも久し振りに達成。ちなみに5キロ毎のラップは以下のとおり。(最後は2.195km)
24:28 – 21:16 – 22:07 – 22:08 – 22:19 – 21:53 – 22:06 – 22:00 – 9:32

ここまで来たのに出場できないかも知れないという、絶望にも似た精神状態から、よくもまあ気持ちを切り替えることができたものです。むしろ、逆にそのことで気負いや力みが消えたのかも知れません。
走っていて、何か妙に楽しかったし。

ちなみに。
事前の対策として幾つか講じていたことがありました。
・脚痙り対策として4日前から、芍薬甘草湯を服用。
・アルコール抜きは1週間前から。
・カフェイン抜きは2日前から。
・でも炭酸抜きはできなかった。
・シューズは最後の最後まで悩んだけど、最後は履き慣れたTakumi Renで。

レース中は、
・補給食の摂取は15キロ(MEDALIST),25キロ(PowerBar),32キロ(MEITAN)で。ひとまずこれで足りたけれど、実は40キロ辺りで腹が減った。
・塩熱サプリは5つ服用。
・給水は最後までほぼ全部潰した。頭から水を被ること、3度。
・私設エイドもたくさんあったけど、結局一つも利用しなかった。

そういえば、大会当日未明に発生した「不測の事態」の顛末。
札幌で僕が記録更新に歓喜していた時、「不測の事態」のため情報収集等に追われていた青森の職場では、「どうせどこかのマラソン大会にでも出場しているんじゃないか?」と噂していたそうです。(他の職員も閲覧できるスケジューラーには、ちゃんと「札幌」と入力していたんですけどね…。)
ゴール後、急いでホテルに戻り、預けていた荷物を受領し、慌てて職場携帯を確認したところ、上司からの着信1件、メール受信1件がありましたが、その日は何だか怖くて返信できなかったという。

翌日、何食わぬ顔で(かつ平身低頭で)出勤した際、上司からそのことを問われ、「すいません、その通りです。」と白状しましたが、そういう認識をされること自体がいいのか悪いのかはわかりません。職場の皆さんに対してホント申し訳ないという気持ちがまたこみ上げてきましたが、「どうせそんなことだと思った。全く気にすることはない。」と一笑されました。

閑話休題。
今回は、それ相応に練習を積んだ自負もありましたし、頑張れば3時間10分は切れるんじゃないか、という淡い期待を抱いていたのも事実。実は一部の方にだけ「3時間10分切りを狙いたい」という話をしていたので、そういう意味では無事に有言実行となって良かったと思っています。

もっとも、一緒に練習してくださった皆さんがいたからこその結果。
この場を借りてではありますが、本当に感謝申し上げます。皆さんありがとうございました。

しかし打ち上げ、ホント楽しかったな。これがあるから北海道はやめられないんですよ。

【次戦は9/17田沢湖です。】

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