Back In Time / Judith Hill

米国人の父と日本人の母の間に生まれたJudith Hill。
Michael Jacksonのツアーにバッキング・ボーカルとして帯同する予定だったのですが、御存知の通りMichaelがこの世から旅立ってしまったため、幻に。なので、映画「THIS IS IT」をご覧になった方、あるいはこれからご覧になっても結構なのですが、「I Just Can’t Stop Loving You」をMichaelとデュエットした人、といえば、「ああ、あのお姉さんか!」とおわかり頂ける方も多いのではないでしょうか。

この映画を機にブレイク…というわけでもなく、日本ではあまり知られていなかったというのが事実。まあ確かに「THIS IS IT」では、Michaelの横で圧倒的なギタープレイを披露したOrianthiさんに注目が集まり、彼女のブレイクのきっかけとなった、といった感じでしたからね。とはいうものの、彼女の歌声や声量に圧倒された人も多かったらしく、どちらかといえば「玄人好み」のアーティストとして活動を続けていたようです。
ウィキペディアでも、テレビ番組出演や、シングル曲の発表、さらにはスパイク・リー監督の映画「Red Hot Summer」に楽曲を提供したこと、ぐらいの情報しかないのですが…。

そんな中で目をつけたのが、Prince。映画「THIS IS IT」ではなく、テレビに彼女が出演していたのを観たのがきっかけだったようですが、そんなこんなでとんとん拍子で作業は進んだらしく、昨年3月にはPrince全面プロデュースによるアルバム「Back In Time」を完成させ、試聴会まで開いた挙げ句、何とハイレゾ音源のアルバムを2日間に渡ってまるごと無料配信するという荒技に出たのであります…。

さて、ここまでは素晴らしく順風満帆な滑り出しだったのですが、これに噛みついたのが既にJudithと「排他的契約」を締結していたSONY。どうやらPrinceの一連の行動が逆鱗に触れたらしく、何とSONYがPrinceを著作権侵害で訴えてしまったのであります。

結局ほんの短期間の間で無料配信された音源のみが残されることとなり(ちなみに私も配信期間内にDLすることができず、ある方から音源を頂きました。Kさん、ありがとうございました。)、この調子では当然このアルバムはお蔵入りするのだろう、と思っていたのですが…。

実のところ訴訟の顛末は存じ上げないんでございますが、すったもんだの末、その後「Back In Time」はiTunes等での配信が無事に始まったんでございます。
…がしかし、デジタル配信だけでCDがなかったんですね。

judith

それが昨年2015年10月に、SONY傘下のColumbiaではなく、NPGレーベルからの発売が開始されました。まずは良かった良かった。
Keiko Leeを彷彿させるハスキーでソウルフルなボーカルに、Prince色の強いファンキーなサウンド、そして、スローバラードまで何でもこなすといった感じ。さすが数多くの場を踏み、そしてMichaelに見初められただけのことはあります。

Princeが手がけるNPGレーベルのアルバムって何となく、まず最初の1曲でドーンと彼のカラーを出して、その後徐々に彼の色が薄まっていって、また忘れた頃にボンッ!と彼が現れるみたいな、そんな構成が多いような気がするのですが、本作は何か彼の存在を凌駕するような圧倒的なボーカルが凄く素敵なんです。冒頭を飾る「As Trains Go By」、もちろんPrinceカラーが滲み出ていますが、どちらかといえばSly & The Family Stoneを意識したといわれるファンキーな曲から、Princeカラーがかなり濃厚な「Turn Up」へと続き(しかも途中で何か変な日本語っぽい言葉が聞こえるなあ、と思ったら、「ミナサン、モリアガリマショウ、ジュンビシテクダサイ」と言っているらしい。)、その後もファンクありジャズありR&Bありのてんこ盛り。収録時間は約40分と決して長くはありませんが、実に濃厚な時間を楽しむことができると思います。

https://soundcloud.com/judith-hill

以前はSoundCroudでも全曲通して聴くことができたのですが、今はできなくなったのかな?


Michaelに見初められ、その後不思議な因果関係(というかJudith自身が「Princeと仕事をしてみたい。」と言ったとか言わないとか)でPrinceプロデュースという最高のデビューを果たすことができたわけですが、どうなんでしょう、Princeファミリーの一員として活躍の場を求めているわけではないのかな。

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