9月26日 木下斉氏 「狂犬ツアー@弘前」 聴講記


むかーし昔と言っても確か今から17~18年ぐらい前のこと。弘前市土手町の空き店舗対策の一つとして、エコステーション(空き缶回収機「くうかん鳥」)があったんだとさ。
「くうかん鳥」というのは、簡単にいうと空き缶を回収する自販機みたいなもので、それに空き缶を投入すると、地元のお店の割引券や商品引換券が発行されるというものだったんじゃ。
これ、元々は東京の早稲田商店会におけるエコステーションの取組みを参考にしたもので、導入に当たって実はうちの亡父が奔走していたことをふと思い出したのじゃ。ビデオも見せられた記憶があるんじゃが、当時あまりそういうものに興味がなかった(興味を持つ余裕がなかった)ため、内容はあまりというかまーったく覚えていないんじゃ。
ところがいざ設置してみると、空き缶や紙詰まりなど、機械のメンテナンス(故障が相次いだ)が色々大変だったようじゃ。
さらに、空き缶以外の投入といったイタズラや、特定店舗での同一人物の割引券使用といった苦情も出るようになったほか、空き缶回収する側からも当初無償のはずが回収に係る手数料の話が浮上し、結果、3年程度で事業は終了となってしまったとさ…。おしまい。

さて、そこから現在を見てみましょう。県内の一部大型スーパーにおいて似たような取組をしていることを鑑みると、確かにゴタゴタはあったとはいうものの、青森県内においてリサイクルやエコに市民感覚で取り組んだ先駆的なものだったのではないかということで、一定の評価をしていいと勝手に思いこんでいました。
ただしこれ、実施主体は地元商店街の連合会に商工会議所などが加わり、そこへ市が補助金交付したというもの。はい、ここに一つ落とし穴があるのですが、それは後述のメモで。

そして、色々調べてみるとこの「くうかん鳥」、どうやら日本全国に生息していたらしく、その地域によって生育(取組)方法が色々異なっていたようです。いずれにせよ、この「くうかん鳥」が生息していた地域では、軒並み空き缶が消えるという嬉しい状況になったものの、「くうかん鳥」そのものが繁殖して勢力を拡大することはなかったようで、その後ほとんど見かけなくなったというのが現状のようです。
最近では、絶滅危惧種としてレッドデータブックにも登録されたとのこと…もちろんウソですが。

さてさて、その早稲田商店会を主戦場に活躍されていた木下斉氏が、弘前にやって来て講演するということを知り、これは絶対行かなきゃならんでしょ、ということで26日夕方から聴講して参りました。会場である弘前文化センター3階の視聴覚室に集まったのは、行政関係者、大学院生、地域づくりや街づくりに携わっている方々、一般市民など約30名。

DSC_2419

弘前大学の北原教授の紹介で木下氏が登壇。この日は八戸市で行われた日本青年会議所全国大会での講演の後わざわざ(恐らく)このためだけに弘前まで駆けつけてくれました。講演参加料は一人3,240円ですが費用対効果は抜群。お値段以上ニトリならぬお値段以上ヒトシでありました。歯に衣着せぬお話(さすが「狂犬ツアー」と謳うだけあります)は、時として痛快であり時としてドキッとさせられるものであり。会場も徐々にヒートアップし(というか空調が悪くて暑かっただけですけど)、結局2時間の予定が時間を20分もオーバーして講演会は終了。ホントは木下さんにお礼を言いたかったのですが、時間がなかったためそそくさと部屋を後にしました。

以下、殴り書きの聴講メモを起こしたものです。字が汚くて読めないんだわ。…あ、自分の書いた字か。

(【 】内は投稿者註)

・イントロは早稲田商店会とのかかわり。商店会でのごみ回収は全国初の試みだった。エコステーションとして評価され、元々予算のなかった事業だったのが行政による「補助金事業」へと変化。→結果、全国へ拡がる。
・富山市の鉄道軌道化は、(コンパクトシティの先行事例としてクローズアップされたが)30-40年後廃れるのが分かっているのに投資した失敗事例。30-40年後にはきっと自動運転の技術が発達。誰も電車に乗らない。
・どこかの成功事例、政策を拾う。それを模倣する。失敗する。【行政あるある。そして、成功事例はクローズアップされるが、その後の失敗は誰も拾わない。】
・パクリの繰り返しが失敗を生み出し、みんな疲弊する。【実は弘前市のエコステーションも?】
・成果のある地域に予算(補助金)を投入、最後はポシャるという繰り返し。【ことを興す機を逸しているということか。】
・国は成功事例について1つだけではなく、5つぐらいを同時に見せようとする。【他の地域に安心感を持たせるため?】
・できもしないことをできるように見せかけ、全国に拡散させる。実は国や地方は自分たちでは最後までできないことを分かっている。他方、国や自治体に何とかしろとハッパをかける住民がいる。結果、犠牲になる自治体が出てくる。【地域によって背景は異なるから画一的なことはできないだろう。】
・生み出せない付加価値を生み出すようにするのが補助金事業、という名目。でも、実際のところ、前述のとおり補助金は「麻薬」みたいのようなもの。【一度手をつけたらやめられなくなる。】
・そもそも、なぜそれをやっているのか、理由がわからない。目的がなんなのかすらも分かっていない。自発性がない。結果、高額な報告書を作って自己満足。【上からの押しつけ。だから事業が失敗する。】
・海外の考え方。まちづくりは「公益事業」ではなく「共益事業」。市の税金を使ってまちづくりすると、納税組合などの団体から訴えられる。まちづくりは地権者がやるものであって、役所がやるものではない。なぜなら、まちづくりによって一義的に得するのはそのビルや土地の所有者だから。【所有物の価値が上がる。】
・だからまちづくりは利害関係者に投資してもらう。行政が関与するのは、その後。まちづくりはアセットマネジメント。

・地方創生だ何だと人口増加に向けて全国各地で一斉に取り組んでも、国内の人口は増えていないからパイを奪い合うだけ。【少子化が進む今、もはや海外からの移民を受け入れることでしか国の人口増には繋がらないでしょう、というのは以前からの私なりの持論。】
・地方で起こっている問題を遠くの人(東京にいる国の人たち)が考えられるわけがない。実情を知らないから。だからこそまちづくりは地元が考えること。
・人が減る→人口密度が薄く広くなる→都市間の競争が激化する→消耗戦が繰り返されるだけ。
・金融支援は全国一律(貨幣価値が一緒だから。)だが、財政支援は東京が有利になるだけで地方は不利になる。財政支援を行う人たちが地方の実態を知らないから。
・某市のア○ガの前に、岡山県津山市のアルネ津山。木造2階建ての住宅が立ち並ぶ一角に、地下1階地上8階の巨大な施設。中にはクラシック専用のコンサートホールまで。典型的な失敗事例。
・こういう施設の失敗により、周辺の地価が下がる。煽りを受ける民間企業が恐れて投資をしなくなる。【そういえばどこかの駅前は最近、青空駐車場が増えてきたなあ。】
・区画整理事業。街の区画を整理してまちの価値を上げるはずが、整理して終わり。何も建たない。中心市街地活性化のはずが郊外化。市街化調整区域を開発させてまで分散化させ、周辺市町村も巻き込むことに。【まさに現在、区画整理事業をやっている弘前駅前北地区、大丈夫かな。】
・国費投入は初期投資のみ。支援資金のつもりが支援になっていない。長期サイクル(建設から管理運営メンテナンスまで)で見たときに、財政負担を地方で負えるかを当事者が考えていない。
・経済循環の原則、増やして回して絞ってまた増やして、このサイクルができていない。
・公共が主導した公共施設に民間施設が入居しても元を取れるはずがない。【入り口の段階で長期サイクルのコストを考えていないから。】まずは民間ベースで公共施設を作る。徹底したコスト低廉化を考える。そのあとで、公が区分所有で必要分だけを購入すればいい。
・地域の金融を自治体が使う→地域で金が回る→地域が豊かになる。
・プロの行政マンとは、自治体法務を理解している人。最近は、民間と少しでも交わり、関わりを持って「民間っぽいこと」をやろうとする行政マンが非常に多い。→そういう人とは関わらない方が得。【これは非常に耳が痛い。】
・事業計画がうまくいかないのは、情報が少ない中で計画を作るから。
・コミュニケーション作りだけでは、地域の活性化にはつながらない。コミュニティビジネス「そのもの」が街の活性化やまちづくりにはならない。行政が金を出していればなおさら。単に政治的道具に使われるだけ。
・なぜ?と口に出して言える人を見つけ出しましょう。

以下私見。
「民間っぽいことをしようとする」行政マン、という言葉にはハッとさせられた。実はオレもそうなのかも、と思ったり。(でも逆の…いや、やめておこう。)
某市のア○ガは、当然「失敗事例」として登場。もはやどういう結論を迎えるのか、いや迎えるべきなのか、数年前から市民も議会も行政もみんな分かっている、気づいているはずなのに、責任のたらい回しをしているだけ。その間も確実に、某市民の負担がのしかかっているのに。
地域づくりやまちづくりについては色んな文献書籍が発刊されているが、成功事例として出ているほとんどは、国や地方自治体からの補助を受けて行われたもの。木下さんが喝破したこちらのサイトがとっても参考になります。
偽物の官製成功事例を見抜く5つのポイント

…まあ、他にも思うところはいろいろありますが、取りあえずこれぐらいでとどめておこうと思います。
これですね、行政関係者だけじゃなくて地域づくりやまちづくりに取り組んでいる人、商店街の人、学生さん、NPO関係者、ホント色んな人に聴講していただきたいです。お金払ってでも聴く価値、絶対ありますから。その分一回飲み会をぶっ飛ばしても、その後の飲み会で盛り上がります、多分。

最後に、聴講を終えて思ったことを一つだけ。
模倣だけのまちづくりは絶対失敗する。地方のことは地方が決める。

…当たり前のようなことなんだけど、民間も行政も、結局のところ画一的な国の制度や補助金に振り回されて、まちづくりの本質を見失っているのかな、と思った次第。役所の職場研修も、これぐらいの人を呼んで意識改革した方がいいかもしれませんね。…あ、新採用職員じゃなくて中堅以上の職員を対象とした研修ね。


投稿者: のんべ

1971(昭和46)年 青森県生まれ。弘前市在住の青森県職員。 プリンスとビールと豆腐とラーメンを愛する。安いカメラでいかに安っぽくない写真を撮影するかに興味あり。 ブログの内容の多くは、いつの間にか趣味となった「走ること」がメインです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA