新公益法人制度への移行を目指すにあたっての注意点

平成20年12月に公益法人制度改革が行われ、新公益法人制度への移行がスタートしました。これまで、旧民法の規定により設立されていた社団法人・財団法人は、新公益法人三法の施行により「特例民法法人」と位置づけられ、平成25年11月末までに「公益社団・財団法人」又は「一般社団・財団法人」への移行を選択することが迫られ、所管行政庁に対して移行認定又は移行認可の申請を行わなければなりません(移行期間内に申請しなかった場合、「みなし解散」という扱いになる)。

既に制度施行後3年以上が経過し、残すところ1年4か月弱。全国における申請件数が7月末でようやく11,000件近くまで伸びてきたものの、まだ全体の5割にも達していない状況で、今後駆け込みでの申請が大幅に増加することは、火を見るより明らかであると言われています。

青森県に目を転じますと、今年7月末現在で移行認定・移行認可合わせて150件の申請がありました(うち処分済は118件)。これでも、申請を予定している法人全体の4割強と考えられ、今年度だけで150件程度の申請があるのではないかと予想しています。申請のピークは9月から11月頃、これまでの説明会などで「申請から認定・認可までは概ね4か月」というお話をしてきていますので、そこに照準を合わせてくる可能性が高いと考えています。

私事になりますが、これまで2年4か月間にわたりこの制度に携わり、各法人から提出された申請書類の審査を行ってきました。

この間、法人からの申請書類や既に移行した法人の運営状況を拝見して、気づいた点や注意して欲しい点がありますので、今日はそのことについてお話しようと思います。
長くなりそうですが、参考になれば幸いです。

1.申請して、認定・認可を受けることが全てではない。移行後の法人の体制を見据えることが重要。

公益・一般ともに既に移行した法人もじわりじわりと増えつつある中、こちらにも事業報告や公益目的支出計画実施報告等の定期書類が提出されるようになりました。
そのいくつかの内容を見て、ビックリしたことがあります。

というのも、申請時に記載している事業内容や予算と、まるっきり異なる報告がされることがあったからです。
法人に事情を聞くと、「これまでもこういう運営をしていた。」「途中で事業の内容が変わった。」と、これまたビックリするような回答。
では、「これまでこういう運営をして」きた内容をなぜ申請書類に記載しなかったのでしょう。「事業の内容が変わ」る前に変更認定を経なければならないことに、なぜ気づかないのでしょう。
このことから垣間見えるのは、「取りあえず申請さえ通ればいい」という法人側の安易な考え。そして、法令遵守(コンプライアンス)という観点が決定的に欠落しています。
結局これらの案件に関しては、計画の変更に当たるということで、変更の認定申請や認可申請を求めることとなりました。
申請時に適切な事業整理と区分経理を行っていれば、こんな面倒な手間を図る必要がなかったはずなのに…。もっとちゃんと相談してくれればなぁ…と思った事例でした。

2.あっちもこっちも参考にしない。

公益・一般いずれに移行する場合も、「定款変更案」を作成し、機関決議しなければなりません。本県では、内閣府が作成した定款変更案雛形を独自に改訂し、本県版の「定款の変更の案」作成例を示しています。
ところが、こういったことがありました。

「定款変更案を見て欲しい」ということで内容を見てみると、第32条の次に第25条があったり、同じような条文が複数記載されていたり、体裁もさることながら、内容もメチャクチャ。
「すいません、これ、何を参考して作成されましたか。」と伺ったところ、「内閣府の雛形と市販の書籍を2冊。」という回答がありました。
移行手続を勉強する、という思いに駆られ、書籍を購入したところ、それに記載されていた定款変更案を参考に作成してみたが、どうも腑に落ちないところがあり、他の書籍を購入、更には内閣府の雛形があることを知り、それを参考にしてみた…とのこと。
残念ながら、これでは法律等に適合する内容以前のお話し、ということになってしまいます。

定款変更案は、なるべく一つの例を参考にして作成すること。もう一つは、作成した後の案を、複数の人たちで確認すること。
一人で作成し、その人だけが確認した、という変更案には、必ずといっていいほど誤字脱字や漏れが散見されます。

3.最後は行政が何とかしてくれるという考えは捨てる。

法人との打合せの中でたまに耳にするのが、「移行後も面倒を見ていただけるんですよね?」という言葉。正直、この法人に主体性はないのか?と耳を疑ってしまいます。
そもそも新公益法人制度は、「主務官庁の裁量権を排除し、できる限り準則主義に則った認定等を実現することを目的と」したものです。

特に、一般社団・財団法人に移行した場合、公益目的支出計画が終了した時点で行政庁の監督なしで自立的な法人運営をすることが可能となります。また、公益社団・財団法人に移行した場合は、関係法律の厳しい規定はあるものの、基本的にはこちらも自主的に法人運営することが求められます。

移行を審査する側としては、「移行のお手伝いをする」というスタンスで臨んでいますが、法人のガバナンスや説明責任が求められる中にあって、「移行後の法人運営に口を挟む」ことは全く考慮していません。ですから、「民による公益の増進」が最大の目的の一つであるこの制度改革、質問や相談には出来る限り適切に対処していきますが、行政側が面倒を見るということはハッキリ言ってありません。
この点を履き違えないようにしてください。

4.他都道府県が公益法人に移行したから、うちも公益?

「他都道府県で類似の事業を行う法人が公益法人に移行したのだから、貴法人も公益法人に移行できます。」

残念ながら、この新公益法人制度を支援するはずのコンサルタントの方で、こういったことを平気で口にする人がいることを耳にしました。
公益法人に移行するためには、事業の公益性(公益事業を行うという趣旨ではなく、その事業を行うことでどういった公益を生み出すかという趣旨)、会計基準(収支相償、事業比率、遊休財産保有制限等)など、全部で18個の基準を全てクリアすることが求められます。

類似の事業を行う法人と、法人の体系も事業も会計も全く同じだというのであれば、移行も可能でし

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