人生2度目のラジオ生出演

今年3月、奇しくも東日本大震災が発生してからちょうど8年目の3月11日、青森市内にあるスーパーで業務関連のキャンペーンを行った。

その足で地元の放送局へお邪魔し、AMラジオの生放送に生まれて初めて出演した。当時のマネージャーも一緒だったのであまり不安には感じていなかったが、実のところ聞かれた内容にきちんと対応できるかといったことよりも、自分の悪い癖である「早口」と「ボソボソ」が露呈しないか、不安でならなかった。

ちょうど震災が発生した14時46分に合わせた放送だったため、番組内で黙祷が行われたり、控えめな音楽も流された。僕が話したのは、熊本地震の際に避難所運営支援に携わった時に、どういったことがあったのかというお話。司会者との距離も近く、非常に緊張しながらの約1時間は、終わってみるとあっという間だった。

…それから約5か月が経ち、もうすぐお盆を迎えるという時期に、ラジオのパーソナリティを務めるNさんから一通のメールが届いた。
防災週間ということもあり、9月2日に防災関連の企画を放送したいこと、ついては、防災担当としてお話をしてほしいこと、例えば、防災にまつわるクイズなどを行いたいこと、など。心が揺れ動いた。

しかし、そもそも番組に出演するかしないか、出演するならば職場の誰が適当なのかを決定するほどの権限は僕にない。折しも多くの人たちが夏季休暇を取得する時期で、決定権を持つ人がいなかった。

ただ、金をかけて実効性の乏しい企画を立ち上げるより、不特定多数のリスナーの方々に届くラジオ出演の方が、よほど効果的だと思った。この機会を逃すことだけは、絶対に避けなければならないという思いが日増しに強くなった。

休み明けで出勤してきた上司に趣旨と概要を説明すると、あっさりと出演の了承が下りた。
今年2度目、そして人生2度目のラジオ生出演が決まった。

僕が出演する旨を伝えたところ、防災クイズを行いたいので、3問程度考えてもらえないかという打診があった。先方は、24時間テレビに県民駅伝など、なかなか手が回らない様子が垣間見えた。

まあいい。こちらも広く防災のことを知らしめるきっかけだ。お安い御用とばかりに問題を考えた。
県の防災ハンドブック「あおもりおまもり手帳」にも、復習を兼ねたクイズが掲載されているが、そのまま出題するのも面白味がない。間もなく台風シーズン、現に大雨の季節だし、そういったテーマの問題を考えてみよう。

クイズの問題と解答・解説を考えるまでに、1時間も要さなかった。

1 津波(P.19)
津波は、陸地に近づくほどスピードが遅くなっていきますが、津波が陸に上がったときのスピードは大体どれぐらいでしょう。

(1)時速16キロ  (2)時速36キロ  (3)時速56キロ

2 大雨・洪水時の避難(P.22)
皆さんが住んでいる地域に、大雨のため「警戒レベル4(避難指示(緊急))」が発令されました。早速避難しようと思いましたが、家の前の道路は既に冠水している状態。この時、特に何に注意しながら避難すればいいでしょう。

(1)水の深さ  (2)雨の降り方  (3)風の強さ

3 避難生活を乗り切る(P.71)
避難生活を送る際、寒さをしのぐ3つのポイントを「あおもりおまもり手帳」で紹介しています。身体を締め付けないこと、手・脚・首から体温を逃がさないこと、もう一つは、身近にあるものを活用することです。さて、この身近なものとは何でしょう。

(1)スマートフォン  (2)段ボール・新聞  (3)ペットボトル

( )内は、「あおもりおまもり手帳」のページ。そこを見るとヒント(というか答)が書かれている、というもの。
ちなみに、解答・解説は次の通り。

1の答 (2) 

陸に上がった津波は勢いがついているため、短距離のオリンピック選手でも走って逃げられないぐらいのスピードとなります。海岸沿いで強い揺れを感じたら、津波注意報や津波警報を待たずに、まず逃げることが必要です。海辺や川岸からとにかく離れること、より遠く、より高いところへ逃げること、そして、高い建物を見つけたら、より高い階へ逃げるようにしましょう。

2の答 (1) 

まずは水の深さに注意しましょう。20センチから50センチの水の深さがあると、歩くことも難しいため、避難ができないかも知れません。この時は、無理をせずに自宅の2階より上で救助を待ちましょう。また、避難できる場合でも、冠水によって道路のマンホールの蓋が浮いて落とし穴のような状態になっていたり、側溝の蓋が外れていることがあります。長い棒や傘を持って、進む方向の路面を突きながら、足下に障害などがないか確認しつつ避難することも必要です。避難の際は、サンダルや長靴を避け、厚底の靴を履くようにしましょう。

3の答 (2)

段ボールを敷いたり、新聞紙を身体に巻くことで、床の冷たさを和らげることができます。
重ね着や身体を締め付ける服は血行を妨げ、冷えの原因となるので、なるべくゆとりのある服を着ましょう。また、首にタオルを巻いたり、上着の袖やズボンの裾にテープ等を巻くことで、服の隙間から体温を逃さないようにしましょう。

この内容で職場内の了解を得て、こちらから話したいこと等を添えてNさん宛にメール送信。

放送日の3日前に番組の概要が送られてきた。生放送なので、前回と同じように臨機応変に展開したい旨も添えられていた。

そして番組当日の9月2日。
事前に、職場の若手1名も同行させることを伝えていた。しかし番組が終わった後には、二人で八戸市へ移動しなければならない。翌日の午前は、出先機関の職員向けに50分程度の講師を務め、午後は図上訓練のコントローラーも担う。しかも週末は市町村向けの研修がある。いつも以上に多忙を極めていた。

とはいえどれも手を抜くことはできない。番組の概要に記載されていた簡単な質問に答えるためのメモも用意して番組に臨んだ。

14時前に放送局に到着すると、番組のADが我々を迎えた。ラジオブースへ案内され、中に入ると、既に生放送が始まっていた。合間を縫って簡単な打ち合わせを行い、雑談。(実はこの雑談も番組のトピックスに…。)

14時過ぎにコーナーがスタートし、マイクの置かれたスタジオへと通された。一気に緊張の度合いが高まる。

クイズの出題はパーソナリティのNさんが務るし、出題の後は音楽が流れる。しかも、回答と解説は、若手職員が務めることとなったので、僕の出番はそんなにない…と思っていたが、甘かった。

冒頭から市町村が発令する「警戒レベル」の話、被災地を支援した際の話、ローリングストックの他、雑談から生まれたマラソンの話、リスナーから寄せられた避難の機会、更には弘前市百沢で過去に発生した土石流災害の話と、結構喋らされた。
事前にメモを用意していたので慌てふためくことはなかったし、14時40分頃にはコーナーが終わることを知っていたのだが、時計を見ながらやっぱり最後はベラベラと早口になってしまった。


(放送直後のスタジオでの一コマ)

本当はもう少し伝えたかったことがある。例えば、ご家庭、ご家族でもっと身近な防災に関する話、避難とか緊急時の連絡体制とかしっかり考えようね、とか。それにしても自分の声を聴くって、何か苦手だな。

翌日の訓練を終えて職場へ戻ると、パーソナリティのNさんから「ありがとうございました。またお願いします。」のメールが届いていた。

防災にはゴールがないし、役所がお得意とする前例踏襲も通用しないのが現実。一方で、いい緊張感を持って仕事に臨めるのも防災ならではだと僕は思っている。

その場限りの施策ではなく、しつこいぐらいリピートしながら県民に周知することも大事だと思っているので、防災に所属しているうちは、Nさんからの「またお願いします。」を鵜呑みにして、いつでも番組に出られるよう備えておこう。訛りは治せないけどな。

聴いてくださった皆さん、そして番組に回答を寄せてくださったリスナーの方々に心から感謝です。ありがとうございました。