#竹内まりや の「 #Turntable 」を1.3倍ぐらい楽しむ方法

「Turntable」。竹内まりやの音楽活動40周年を記念して発表された3枚組のコンセプト・ベスト。

62曲という収録された楽曲数の多さはもちろん、その内容も話題になっている。
ご存知の通り竹内まりやの伴侶は山下達郎。
二人とも音楽スタイルは一貫していて、何年経っても古さを感じさせないスタンダード性は、恐らく国内のアーティストの中でも屈指ではないだろうか。

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正直言うと、僕の中では「竹内まりや」というアーティストはあまり重要な存在ではなかったし、シングルやアルバムが発表されてもそんなに食指が動くことはなかった。
ところが、突然の竹内まりや熱に火をつけたのは、他ならぬ山下達郎。
詳細は言えないが、ライブアルバムにも収録されている竹内まりやの「あの楽曲」を改めて聴いてしまったのが、全ての発端だった。

10年前に発表された、30周年を記念する「Expressions」は、ファンが選んだベスト盤だった。山下達郎がプロデュースした作品も数多く収録されたこの作品は、いわば「夫唱婦随」と「婦唱夫随」の混在した(とはいえ2人の音楽スタイルは全く異なるので、あくまでも山下達郎は脇役であることを強調したい)、あたかも夫妻の結晶が昇華されたような作品だった。

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今回の「Turntable」は、「More Expressions」を謳った1枚、過去に様々なアーティストへ提供した楽曲のセルフカバーを収録した「Mariya’s Rarities」、もう1枚は、山下達郎がDJを務める「サンデー・ソングブック」に端を発した洋楽カバー集「Premium Covers」。杉真理と松尾清憲のバンド「Box」を携えたビートルズのカバーが半分以上、山下達郎のバントメンバーを従えた楽曲も多数。それぞれ楽曲のクオリティの高さもさることながら、それに全く負けないまりやの声も凄い。

ここ数年、山下達郎の公演を観るたびに増していく円熟味と凄みに圧倒されているが、それに対して竹内まりやは、雑味のない艶をどんどん増強しているといった感じ。

もっとも、彼女の歌詞はその清純さとクリアさを兼ね備えた容姿と歌声に反した、禁じられた愛や過去を引きずる女性が投射されたものも多いと認識しているが、改めて聞き直してみると、それすらも凌駕する色気(それは決して下心の際立ったものではなく)が漂ってくる。

そして今回注目を浴びているのは、セルフカバー。彼女が提供した楽曲は、薬師丸ひろ子、中森明菜、河合奈保子、松田聖子、広末涼子等々、歌い手の本質を見事に捉えたものばかりだと思う。その中でも、30年以上前にトップアイドルとして活躍しながら突如この世を去った岡田有希子への提供曲は、彼女のキャリアの中でも曲数も歌詞の質も群を抜いていて、裏を返せばそれも期待の現れだったということになるのだろう。

しかし、他のアーティストへのセルフカバーを披露することはあっても、急逝した彼女の曲を披露することはなかった。
本人も60歳を越え(それ自体が信じられないぐらいの若々しさなんだけれど)、岡田有希子の33回忌を迎えたことで心境の変化があったらしく、何と今回、彼女への提供曲を3曲も披露している。

しかし、岡田有希子が歌っていたそれを知らないという人もいるだろうし、今回のアルバムに収録されたセルフカバーの原曲を改めて聴いてみたい、という人もいるんじゃないだろうか。

ハイ、ここからが今日の本題。
音楽活動35周年の企画として2013年に「Mariya’s Songbook」というアルバムが発表されており、ここに、彼女が提供した楽曲の原曲が多数収録されている。

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そして、10年前の「Expressions」、2014年のオリジナルアルバム「TRAD」、今回の「Turntable」に収録されたセルフカバーの原曲のほとんどは、この「Mariya’s Songbook」に収録されているのだ。

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ひょっとしたらCDの音源をPCに取り込んで、スマートフォンなどで楽しむ人も多いと思う。(少なくとも僕はその一人だ。)
この4枚のアルバム、9枚に及ぶディスクを取り込み、プレイリストを作成してみた。
あとは、取り込んだ音源をプレイリストに取り込むだけ。
そして、ここからがささやかな楽しみ方。
ランダム再生でももちろん充分楽しめるが、楽曲名順に聴いてみると、原曲とセルフカバー(曲順はともかく)を交互に楽しむことができる。

個人的には、10年前の「Expressions」と今回発表された「Turntable」だけではなく、この「Mariya’s Songbook」が加わることで、アーティストとして、表現者としての竹内まりやの作品が集約されているのではないかと思う。(これに「TRAD」が加わわってこそ最強だが、今回の「Turntable」と一部楽曲がダブっているため、補完的アルバムとして紹介するにとどめよう。)
もちろん、これ以外のアルバムに収録されている他の楽曲を網羅してこそコンプリートだろう、というご指摘はごもっとも。
しかし、今更ながら竹内まりやを改めて聴き直したい、竹内まりやというアーティストをもっと知りたいという人には、今回紹介した2つのベスト盤と、その間に挟まった作品集を合わせて聴くことを、心の底からお薦めしたい。

しかし、過去の作品を掘り返し、そして新たな作品としてまとめるって、実は普通のオリジナルアルバムを制作するよりも労力を要するんじゃないかと、今回の「Turntable」を聴いて一番感じたことだった。
この御夫婦は、ある意味モンスターですよ、ホントに。(敬称略)