平成最後の…。 -第7回イーハトーブ花巻ハーフマラソン

2019年度の走り初めは、いつもの「イーハトーブ花巻ハーフマラソン」から。2月3月と、月間走行距離が100キロ前後にとどまるという状況、いくら相性のいいコース(90分を最初に切ったのがこのコースだった)とはいえ、練習不足は否めない。更に追い打ちをかけるように、昨年末からかなり体重が増えていた(500mlペットボトル約6本分)ため、好走を望めるはずがなかった。

しかし、漫然と走るわけにはいかない。練習不足だからこその課題も色々見つかっている。悶々としながら大会前夜は21時過ぎに就寝、翌朝は4時30分に目が覚めた。

花巻市にある会場の日居城野運動公園は、叔母の家から車で5分とかからない場所にある。
が、今年は前泊することもなく、朝5時過ぎに弘前を出発し、東北道を南下。7時20分頃に会場に到着したところ、駐車場が例年とは打って変わって大混雑。後で知ったのだが、今年は昨年より出場者が300人ほど増えたらしい。車を停めて外に出てみると、まだ朝日が太陽に隠れていて、少し肌寒いぐらいだった。いつもより入念なストレッチと軽めのアップを終えて競技場に入ると、既に開会式が終わろうとしていた。

ラン仲間数名と軽く言葉を交わし、スタートの列に並ぶ。今日の設定タイムは90分。何の迷いもなく、「1時間30分~45分」のプラカードの前に立つ。前にいた方がスタートの混雑からいち早く抜け出せることもわかっていたが、速いだけが好走ではないハズ。設定通り走る好走もあっていいじゃない。そんな開き直りからか、気負いも緊張もなかった。

あっという間にスタートの8時50分を迎えた。
周囲の流れに身を任せるまま、ゆっくりとしたスタートとなった。幸いにして風が穏やかで、気温もまだそれほど上がっていない。
入りの1kmは4分40秒、スタートの混雑を考えればやむを得ない。あとは淡々と、着実に20回ラップを刻めばいいだけだ。花巻東高校の生徒が今年も給水をサポートしているようだ。しかし、皆さん応援に熱が入っているのか、手にしているカップの位置がやや高めにある。幾度かカップを少し下げて、と手で合図を送る。

走っていても暑さは感じなかったが、脚の痙攣に襲われるのではないかとビクビクしていた。というのも、直前の金曜日の朝に、猛烈な脚の痙攣(こむら返り)に見舞われ、まだその違和感が残っていたからだ。5km通過の時点で時計に目をやると、スタートから21分40秒を経過していた。設定との誤差は10秒。まあ、先は長い。焦らずゆっくり行こうじゃないか。信号を右折し、緩い上り坂に差し掛かる。以前は叔母からこの先の給水所で水を受け取っていたが、数年前に叔母は後進に道を譲り、ボランティアから身を引いた。9km地点で先頭を走るランナーとすれ違ったあとは、極力対向車線に目を向けず、ずっと前だけを見据えるようにした。10km通過が42分30秒。アップダウンで多少の前後はあるが、概ねほぼ一定のペースで走っていたようだ。

折り返しを過ぎ、南風が多少吹いていることがわかる。12km前後から続く長い上り坂で垂らさなければいいが。すれちがいざまに同じロゴを胸に付けた仲間を発見し、思わず手を挙げる。まだ余力がある証拠だが、一方で自分を鼓舞する意味もあった。

折り返したあとの復路は、やや下り基調になる。少しペースを上げてみる。90分という設定タイムももちろんだが、錆び付いていた脚回りを潤滑させるため、これぐらいの刺激入れもしなければならない。

しかし、しばらく並走していた人が徐々にペースを上げ始め、背中が遠くなっていく。いつものような、歩きたいという気は起きなかった。気がつくと残りは5kmを切っていた。最後の給水を受け取りながら、10kmに出場しているランナーの横を駆け抜ける。女性二人が何やら話をしながら走っている。

横をすり抜けた直後、「え、弘前だって!」という声が聞こえた。
その声に呼応するように、これ見よがしに左手でピースサインを掲げる。
「あっ!」という声とともに、笑い声が聞こえた。
が、こちらは笑えない事態。
「おっと!!」
左腕を上げた途端、右脚が痙攣しそうな気配に襲われたのだ。人間の体は骨で構成され、筋で繋がっている。左手と連動したかのような右脚の反応に、ちょっと焦った。

残り2kmとなり、疲労感が半端ない。ペースも落ちているのが明らかにわかる。東北道のアンダーパスをくぐった右手に、見慣れたシャツを着た女性がいた。練習にもやってくる現役女子大生のSちゃんだった。
(↓彼女が撮影してくれた画像)

声援に答えるべく、「おお!ありがとうね!」と左手を上げて通り過ぎた直後、右脚のふくらはぎに電気が走った。

「ヤバい!」と、咄嗟にペースを落とす。立ち止まることはなく、辛うじてギリギリのところで踏みとどまった。

そういえば10kmを通過したあとは、一切時計を見ていない。いよいよ残り400m、ゴールの競技場が見えてきた。タイムは?…90分は?

トラックに入り残り約100m。電光掲示板が1時間29分45秒、46秒とタイムを刻んでいるのが見えた。

「あっ!」

苦笑しながらこの日一番の猛ダッシュ。ゴールして止めたGPS時計は、1時間30分09秒を指していた。

記録証を受け取って、思わず笑ってしまった。

グロス(スタートの号砲が鳴らされてからゴールするまでの時間)が1時間30分07秒、ネット(スタートラインを踏んでからゴールするまでの時間)が1時間29分58秒。

最後は力不足を露呈したが、これは、ほぼ想定通りの走りだったということにしておこう。色々気づきも多い大会となったし、走り終えたあとの余力を考えたら、まだまだやれる余地があるかも、ということを感じたことが一番の収穫だった。ゴール後のおもてなし、そばとおにぎりのサービスに舌鼓を打ち、叔母のところへ向かうため駐車場へ急いだ。着替えていると、スマホにメッセージの着信があった。

「終わりましたか?いま、スタート地点にいます。」

「え…。」

「応援に行くかもしれない」といっていた伯父夫妻と叔母が、ゴールした直後に応援に駆けつけたらしい(笑)。

慌てて着替え直し、スタート地点まで急いだことは、ここだけの話だ。さて、平成最後の大会出場が終わった。令和という新たな時代に、僕はどこでどんな風に走っているんだろう。