従兄の子供達

土曜日、久しぶりに散髪をしていたら、近所から花火の音が聞こえた。どうやら、うちの近くで宵宮があるらしい。
床屋のマスターが「今日は天満宮の宵宮なんだってさ。」と教えてくれた。

帰宅すると、朝方「飲み会があるので今晩泊めてくれ」と連絡を入れてきた従兄が、飲み会に備えて仮眠していた。
再び近くで鳴り響いた花火の音にピクリと反応。

「今日、何かあるの?」
「天満宮で宵宮だって。分かっていれば、子供達を連れてくればよかったのにね。」
「あーー!失敗したぁ…。うわぁ、そうかぁ。天満宮の宵宮かぁ…。」

と、しきりに悔しがり、落ち込む従兄。なぜなら、天満宮はうちから歩いて10分ほどの距離だからだ。
何だかその姿が惨めに見えてきて、急遽僕が従兄の子供達を迎えに行くことになった。

我が家から従兄の家(=父の生家)までは車で約20分。
山間の村にある家まで迎えに行くと、子供達は玄関前で待っており、嬉々として車に乗り込んできた。


こんな近くにいても、多分3年ぐらいは会っていなかったんじゃないだろうか。聞くと、姉は小6、弟は小4になったという。姉は小6となるといろいろ厄介なお年頃なのだろうか、とも思ったが、背は小さいし線も細く、とても小6には見えない。一方の弟は、いかにも小4といった感じで、元気がいい。こちらが聞いてもいないことを、まくし立てるように僕に話してくる。

彼らの住む家は、付近に猿やイノシシがごく当然のごとく出没するような山間にある。自然に囲まれ、幸せな生活を送っているはずの彼らであったが、諸般の事情により、(端から見る限りでは)決して順風満帆で幸せな生活を送っているとは言い難いような家庭環境にあるような気がする。

しかもつい先日、飼っていた愛犬が、恐らく猿除けのために誰かが撒いたと思われる毒入りのエサを散歩の途中で食し、朝起きたら既に天に召されていた、という衝撃的な事件があったばかり。田舎で起きた事件だけに、子供達のショックは相当大きかったらしく、他人事ながら人間(大人)不信に陥らないか、と危惧していたところであった。

我が家にも3匹の犬と2匹の猫がいるので、そのことが逆に子供達に寂しくかつ辛い思いを蘇らせるのではないか、とも思ったが、実際家に来てみると、全くそういった素振りも見せず、仲良く犬たちと戯れていた。

僕には子供がいないので何とも言えないが、この子達には、子供らしい「欲」というものがあまりないように思える。近所の子供達や同級生とのコミュニケーションはうまく図られているのか、不安になる。
宵宮には僕と妻が連れて行ったのだけれど、金魚すくいや射的、ゲームにおもちゃなど、いろんな出店に興味を示してもいいものなのに、遠慮しているのか、それともそういう風に育てられてきたのか、全くといっていいほど興味を示さない。そういえば、家においてあったDS Liteにも全く興味を示さなかった。今の子供って、こんなもんですか?違いますよね?

で、唯一興味を示したのは、二人とも食べ物だった。弟はチョコバナナ、姉はから揚げ(苦笑)。
結局お金を使ったのは、この食べ物の分と賽銭だけ。子供心に色々興味を示し、あっちだこっちだと引っ張られることを想像していただけに、何となく拍子抜けした気分。そういえば彼らがもう一つ興味を示したのは、参拝の時に見かけた石碑だった(爆)。
時間にして30分ほどで宵宮を後にした。

その後、近所にある宴会場でビアホールが今季の営業を始めたということで立ち寄り、うちの母も合流して5人で談笑。
「ここはねぇ、のんちゃん(俺の愛称)と○○ちゃん(妻)が大学生の時にアルバイトしていて、それで知り合って結婚したのよ」などと子供達に説く母。子供達の反応は、全くもって鈍い。
んなこと、どうでもいいっちゅうの(苦笑)。

ただ、どうやらこの子達、「食」に関しては飽くなき欲があるらしく、ステーキだ焼きそばだ海老フライだポテトフライだと、次から次へとオーダーを入れる。この辺の「食」については、いかにも子供らしい選択だ。いきなり「おしんこ」なんて言ったらどうしようかと思ったが、それはさすがになかった。

運ばれてきた料理をガツガツと食う子供達。それを見ながらビールを飲む僕。結局、子供達が全て食べきれるわけもなく、余った料理は次から次へと僕の目の前にやってくる。食べるものが多く、ビールもあまり進まない。

一方の子供達は、いい加減腹一杯になったら飽きてきたのか、姉は「家に帰って観たいテレビ番組がある」と言い出した。
仕方なく会計担当(笑)の母と妻を残し、僕は子供達と先に帰宅。

帰路、弟は「今日、野球中継あるかな!?」というと、姉は「今日は中継ないの。」と冷たく言い放つ。
何だこの姉弟、ひょっとして仲が悪いのか?
家に帰ると姉は早速テレビの前へ。アニメかお笑いでも観るのかな、と思ったら、姉は「クレオパトラの何とか」いう特番を観たいんだとか。ふと見ると、姉弟揃ってテレビに釘付けになっている。

聞くとこの子達、歴史や文学にとっても興味があるんだって。石碑に過敏に反応していたのも、どうやらそういうことらしい。
一杯勉強しろとはいわないけれど、君たちの将来を案ずる大人を見返すような大物になってくれ。

かなりいい気分で酔っぱらっていた僕。子供達と翌朝6時に起床し、犬を連れて散歩に行くことを約束してしまった。
子供達は、犬たちと一緒に寝たいということで、急遽寝床を変更。土曜日だというのに、21時過ぎには早々に就寝した。

翌朝。
子供達の声と犬の鳴き声で目が覚める。時計をみると長針が30分を回っている。
しまった!寝坊した!
慌てて起きて支度をし、子供2人と犬3匹を引き連れ、散歩に出かける。眠い…実に眠い…。
既に町内の人が散歩している。犬を連れている人の数はまばらだ。

「おはようございます。」
こちらから掛ける声に、こちらは子供二人引き連れているものだから、「nonveyって子供いたっけ?」といった怪訝な表情を浮かべているのがわかる。

家の近所をグルッと1周して我が家が近づいてきたとき、家の近所にある寺の鐘がゴーンと鳴る。

あれ?この鐘って…鳴るのは6時じゃなかったっけ?

帰ってきてから気がついた。寝坊どころか、30分も早く起きていたのだ。
聞くと子供達は、5時頃には目が覚め、散歩の支度をしていたそうだ。年寄りじゃあるまいし…(苦笑)。

それでもやっぱり子供だな、と思えたのが、アニメに釘付けになった二人を見たとき。
朝食の箸がピタリと止まり、完全に画面に夢中になっている。よく見ると、妻も母も夢中になっている。
結局朝食を終えるまで1時間以上(笑)。

飲み会で帰宅が遅くなった彼らの父親、すなわち従兄が起きてくる気配は、ない。
野球の練習が10時からあるという弟は、気が気でない様子。
しかし、姉も弟も父親を起こすことに躊躇している。この辺の微妙な親子関係も、何だかなぁ。父親に気を遣うのは構わないけど、ちょっと気遣いすぎじゃないのかなぁ。

仕方なく僕が叫ぶ。「お父さん、起きて下さい!時間ですよー!」
子供達が笑う。

程なく、従兄が起床。明らかにまだ酒気帯び状態だ。その姿を見るなり弟。
「お父さん、昨日何時に帰ってきたの?」
うちの母が間髪入れずに「夜中12時頃よね。」と呟く。
父親、しどろもどろで「う、うん…。」。

さすがに子供の前では、午前3時に帰ってきた、なんてことは言えないのだろう。
母もその辺を飲み込んでいたらしく、機転の利いた反応だった。

結局、野球の練習に間に合わなくなるということで、9時には我が家を後にした彼ら。
また遊びに来てね!という問いかけに「うん!」と大きく頷いた2人。

明らかに酒気帯び運転の車(苦笑)から大きく手を振る2人の姿は、あっという間に小さくなった。
今度は、いつ会えるかな?心身共に健やかに大きくなってくれるといいな…。

4 thoughts on “従兄の子供達

  1. とーます

    そうそう・・・子供はアニメには目がないですね!
    いつも走り回って元気イッパイのラヴ家のコドモ達もちびまることか始まると、テレビの前で大人しく静か?にテレビ見始めるからね(笑)

    Reply
  2. きゅう

    微笑ましい。
    子供たちを十把一絡げにしちゃいけないって
    思うね。
    日曜の朝(6時半からの子供番組)の風景はほとんど同じらしいけど。
    (*^▽^*)
    生意気なんだけど考えさせられます。

    Reply
  3. じゃん子

    うわぁ?!子供たち、きっといい思い出になっただろうね!
    小6と小4ですかいっ!私も年取るわけだ(苦笑)。
    どうでもいいけど、無性にあのステーキが食べたくなりましたw

    Reply
  4. nonvey

    子供達にとっていい思い出になってくれるといいんですが…。
    あの姉弟は誰に似たのか(汗)本なんかを読むのが好きらしく、そんなにマンガには興味がないような素振りだったんですが、いざ始まるとすっかり夢中。しかも、この次に何が放映される、なんてことも知っていたし。ああ、何だかんだ言ってるけどやっぱりまだまだ子供だなぁ、とちょっぴり安堵したのでした。

    Reply

Leave a Reply