農作物の廃棄に思う

こちらではりんごや稲の栽培が、ギャンブルに似ているという。
その理由は、秋の収穫時期の前に一発勝負が待っているからだということを聞いたことがある。りんごも稲も、収穫直前に大きな台風が直撃すれば、それで終わり。
その難関さえクリアすれば、収量もそれなりのものを確保できるし、収益を得ることができる、という。
台風の進路にヤキモキしなければならないその緊張感が、ギャンブルに臨む時の緊張感と似ている、ということだろうか。

そういう意味では今年は、大根や白菜のギャンブルが大ハズレの年となった。
これらの農作物が、全国的な生産過剰による価格低迷に伴い、廃棄しなければならないという事態に陥っているという。


好天に恵まれたことが、農家には思いがけぬ災難を呼び起こしているようだ。確かに我が家でも、大根と白菜は腐る程お裾分けを頂いた。

大根の全国的な価格低迷に伴って実施される国の緊急需給調整事業で、青森県では、とうほく天間農協と下田町農協が、出荷を予定していた計五百二十五トンを廃棄処分することが二十二日、分かった。

全農県本部によると、とうほく天間農協管内では、東北町と六ヶ所村の合わせて四百トン、下田町農協管内は、おいらせ町の百二十五トンを処分する。二十七、二十八日に現地で収量調査を行い、三十日までに、畑にすき込んで処分する。

需給調整を実施した農家には一キロ当たり二十七円の交付金が支払われる。

秋冬大根は、好天に恵まれ全国的に豊作となり出荷量が集中した一方、気温が高めに推移したため、鍋物などに使う需要が低迷。同本部によると、十一月に入ってからの県産大根は一キロ当たり三十九円から四十円と前年の半値以下で推移している。

好天に恵まれ、豊作となった一方で、厳しい寒さとならないことから、鍋物が敬遠されていることが、消費が滞っている要因の一つだというが、それ以外に利用方法が見出せないのも痛いところ。というか、それ以外の利用法、調理法を提示するのも、一つの手ではないかと思うのだが…(ロールキャベツの代わりにロール白菜にするとか。我が家では実践済み)。

しかしこの廃棄野菜、本当に何とかならないものなのだろうか、といつも思う。
生産過剰だから泣く泣く廃棄する。
何とも日本というのは幸せな国だと思う。

例えば、交付金を支払うという発想の前に、安価でもいいので政府が一部買取り、食糧支援を求める国に送るとか出来ないのだろうか。

例えば、韓国に輸出し、キムチとして逆輸入するとか出来ないのだろうか(笑)。

例えば、食糧不足で里に下りては農作物や人間に被害を与えるという熊のために、山の中に少し投棄するとか出来ないのだろうか。
(産廃物の不法投棄となること、熊が同じ味を求めて更に里に下りる機会が増える可能性がある、といった問題はあるけれど)

もちろん、昔からこういった需給調整は行われていた(ハズ)。
しかし、ゴロゴロと転がる大根、白菜の畑を、縦横無尽にトラクターが走り回る光景というのは、見ていて気持ちのいいモノではない。

そういえば最近、「食べ物をムダにするな」という言葉を最近聞かなくなったような気がする。

7 thoughts on “農作物の廃棄に思う

  1. じゃんこ

    韓国では、魚の安値に不満を抱いて、農水省前の道路に魚をばら撒く事件があったそうな。
    トラックの荷台から、スコップで魚をばら撒いてた姿も驚いたけど、もったいないから食べるとかで、道端から魚を拾ってる民衆の姿にはもっと驚いたよ・・。
    韓国人偉い!でも笑えた・・。

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  2. nonvey

    北海道ではサンマが海岸に打ち上げられたり、港で入れ食いだったりと凄いみたいだね。多分、津波の影響がいくらかあるんじゃないかと思っているけど。
    …韓国の話、村上春樹の「海辺のカフカ」で空から魚が降ってきた時みたいだ(笑)。

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  3. basue

    政府から見れば運送料とかに金かけられないという事情があるんでしょうが。
    美しい国と諸外国から言われたければ、
    少なくとも自分が首相だったら尊敬される国になりたいという事で
    負担をしてでも諸外国の支援の為に使います。
    破棄なんてとんでもない。農家の方たちの気持ちを考えると心が痛みます。

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  4. nonvey

    basueさん、全く同感。
    金だけ出して善人ヅラしても、それが何も活用されていないようでは全く無意味。特に、お金は必要ないけれど、食料を必要としているという人は大勢いると思うんですよね。
    外交なんか見ていると特に思うけれど、下層で苦しむ人たちを見ていない人たちが、自分たちのいいようにいろんな取り決めをしているように感じるんですよね。
    廃棄しようとする農作物は輸出してはならない、という取り決めがあるのかな。僕がモノを知らな過ぎるだけなんだろうか。そういう話題は一つも出てきませんね。
    そうそう、サンマは水温の影響だそうですね。何かまた、地球は奇妙な方向に進んでいるぞ。

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  5. shuqoo

    やっぱり食べ物を捨てることには抵抗があります。
    一方では食育ということで進めている食べ物の話はとても大事だと個人的には思うんですが、その一方で生産調整というのは、やはりどうにかならないものかと思ってしまいます。
    nonveyさんの言うとおりキムチのアイデアなんてマジでやって欲しい。
    漬物とか加工品にすれば国内でも十分時間が経っても消費できるはず。
    生なら難しいかもしれないけど、ゆでたり加工してから冷凍すれば外国にも運べるんじゃないかと思うし。
    交付金出すくらいなら買い取って農家のカッチャたちに漬物作ってもらって、それをガッツリ売り込んで、農家の稼ぎに少しでもなるようにした方がいいと思うんだけどなあ。
    食べ物捨てないことを最優先に考えればアイデアはもっと出るはずなのでは?と思ってしまいます。
    豊作は喜ぶべきことなんじゃないでしょうか?
    いろんな地域では豊作を願ってお祭りをし、豊作を感謝してお祭りをするわけでしょ。本当に罰当たりなことをしてると思います。

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  6. nonvey

    今回の農作物廃棄というのは、要するに値崩れが生じたことに起因していると思うのですが、実際問題として「生産量>予想消費量」という状態になっているんでしょうかね、これって。
    単に価格調整のためだというのであれば、それはそれで非常に大きな問題だと思いますが、例えば人間が口にする分(キムチや漬け物などの加工品も含む)、飼料にする分、その他諸々全部引っくるめても余る、というのであれば、やはり次の手を打つ方策を考えることは必要だったと思います。作ったモノを捨てて下さいなんて…食育の名が廃れます。

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