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ステップアップLOVE / DAOKO ×岡村靖幸

10月18日に発売されて以降、恐らくこれほどリピートしても聴き飽きないシングルCDに出会ったのは久しぶりかも、いや、初めてかも知れません。DAOKO×岡村靖幸による「ステップアップLOVE」。DAOKOのメジャー4作目として発表されたシングルで、テレビアニメ『血界戦線 & BEYOND』のエンディングテーマだそうですが、すいません、アニメに関しては全く疎いので、ここでの紹介はありません。

ちなみにこの作品、「期間限定盤」「通常盤A」「通常盤B」の3種類が用意されており、期間限定盤にはDVDが同梱、こちらには「血界戦線 SPECIAL EDITION MUSIC VIDEO」が収録されているそうです。

3種類の作品のカップリング曲がすべて異なっており、期間限定盤が「TOKYO-KICK-ASS」(DAOKO)、通常盤Aが「カルアミルク」(DAOKOによる岡村靖幸のカバー)、通常盤Bが「忘らんないよ」(岡村靖幸の新曲)となっています。

ちなみに私、通常盤二種類を購入しました。今思えばデジタル音源を購入するという手法もあったのですが、CDというモノ、形としてのプロダクツを手にしたかったのです。だってほら、アルバムはstill matterなのですよ。(検索→「プリンス」「アルバムは大事」)
タイトルナンバーがダブっているとはいえ全く後悔はしておらず、それぞれを楽しんでおります。

ちなみに通常盤AのジャケットはDAOKO、Bは岡村靖幸が登場しています(期間限定盤には血界戦線のキャラクター)。そして、A,Bそれぞれの裏には何かを形どった片手が写っており、2枚を繋ぎ合わせるとハートが完成するという仕掛けがされています。

さて、まずは通常盤A,Bそれぞれのカップリング曲から紹介。
Aに収録された「カルアミルク」は前述のとおり岡村靖幸の名曲をDAOKOがカバーしたもの。ただし岡村靖幸本人はこの曲には一切参加しておらず、ORESAMAというユニットの小島英也が編曲を担当しています。原曲の良さをそのまま踏襲しつつ、DAOKOのふんわりとしたボーカルが重なったナンバー。
例えとして適切かどうかはわかりませんが、25年以上も前にブームとなった「渋谷系」を彷彿させる感じ、といったところでしょうか。
ただし、以前からラッパーとしてのDAOKOを知るファンの方は、今回の楽曲には少々違和感を覚えているらしく…。とはいえ僕みたいに今回初めてDAOKOのことを知ることとなった人も恐らくたくさんいるわけで、そういう意味では、このことがDAOKOのファン層を少し広めた、興味を持ついいきっかけになった、という見方もできるんじゃないかなあ、と思うのですがどうでしょうか。(それは、岡村靖幸を初めて知ったDAOKOファン然り、です。)

もうひとつ、こちらは岡村靖幸の書下ろしの新曲「忘らんないよ」。
最初アコースティックギターの弾き語りみたいな雰囲気で始まったので、お、これはこの調子で終わるのかな?と思ったら、いい意味で期待を裏切られました。会心の名曲なんじゃないか、と思うぐらい琴線に触れたような感じ。

何が驚いたってこの曲のMV。
「We Love Television?」という萩本欽一が出演したドキュメンタリー映画の主題歌なのだそうですが、この映画の監督も務めたテレビプロデューサーの土屋敏男(電波少年のTプロデューサーとして有名な人)がMVの初監督を務めたほか、萩本欽一と岡村靖幸が共演しています。
むかし、萩本欽一とコンビを組んでいた坂上二郎が、ユニコーンと手を組んで(アーティスト名は「坂上二郎とユニコーン)、「デーゲーム」という曲を発表してヒットを飛ばしたのですが、なんかこの曲はその坂上二郎に対するアンサーソングみたいな感じ。この曲の歌詞がまた、なんか切なくていいんですよ…。しみじみするような、そんな曲です。それでは、MVをどうぞご覧ください。

さて、タイトルナンバーの「ステップアップLOVE」、こちらは岡村ワールド全開といえばいいのでしょうか。作詞はDAOKOと岡村靖幸。恐らく主にラップをDAOKOが、韻を踏んだ独特な歌詞を岡村靖幸が担当したのではないかと勝手に推測。ダンサブルでキャッチーなサウンド(あ、表現が古いですか?)に絡みつくような歌詞、いいです。この曲はこの二人だからこそ成立する楽曲です…と断言します。

そして、こちらのMVも素敵です。
舞台がバスケットコートというのがいかにも岡村靖幸らしく、ここでDAOKOと岡村靖幸によるダンスバトルが始まります。おお…岡村ちゃん踊ってるよ!みたいな。振付を担当したのは、Perfumeや星野源の「恋」でいわゆる”恋ダンス”の振り付けを担当したMIKIKO。よく見ると「あ、Perfume…」と思うようなシーンがありますので、目を凝らして観てください。

ということで楽曲もMVも素晴らしい仕上がり。岡村靖幸はアルバム「幸福」の発売以来しばらく音沙汰がなかったので、個人的には「快作」に出会ったような気分です。

ようやく日の目、しかし…。 – Listen Without Prejudice + MTV Unplugged / George Michael #georgemichael #listenwithoutprejudice

今も昔も青森県という「ド田舎」に住んでいる私、とりわけ若かりし頃は強烈なぐらい都会への憧憬というものを抱いておりました。

青森県を「ド田舎」…と揶揄しましたが、未だに「左遷されたところ」として取り上げられたり「日本語が通じない」と言われたり、最近は「地下がない」と嘲笑されたり…って、お前ら、青森に来たことないだろう!!

こんな感じで忸怩たる思いも幾度となく味わうこととなりましたが、住めば都といいましょうか、今となってはむしろ、青森で良かったという優越感を抱くようになっているぐらいでございまして、ハイ。だって、仕事でホタル見たり、雨上がりの歩道を飛び跳ねる小さな小さなアオガエルの一団に遭遇したり。ド田舎なんじゃなくて、天然の自然を満喫できるんだからね!

ちなみに、若かりし頃に抱いていた都会への憧憬、僕の中では「タワレコ」「地下鉄」「東急ハンズ」が、いわば「三大巨頭」みたいなものでした。

初めてタワレコを訪れたのは高校1年、京都への修学旅行の時でした。

自由行動のついでに畏友ダッチと二人で別行動、タワレコでDaryl HallとRobbie Nevilのアルバム(レコード)を2枚購入。(ちなみにダッチはSheila EのCDを購入。)

ちなみにそのダッチは、札幌市でソムリエとして店を一軒構えています。

おかげさまで」というお店、もし良かったら行ってみてください。

それはともかく、あのロゴの入った黄色の袋を抱えて地元弘前に帰ったことに、変な優越感みたいなものが湧いていたのは、今となっては何だったんでしょうね。

輸入盤独特の香り、そして国内盤より低廉な価格も、魅力だったのかも知れません。その後も仙台や東京を訪れた際には必ず「タワレコ」を訪れ、国内では入手し辛い色んなアイテムなんぞを物色していたのですが、時代の変遷とともに、足繁く通うこともなくなっていきました。…青森県内にもタワレコができたし、東急ハンズはトラックストアが展開されたし。…地下鉄はないけどね。

学生時代、秋田市内のPARCOにタワレコがあることを知ったときは、衝撃を受けました。ああ、青森は完全に置き去りだ、と…。

北秋田市に住む従姉が秋田市内に行く機会があることを知り、わざわざCDを購入するようお願いしたこともありました、そういえば。

ちなみにお願いしたのは、偶然にもGeorge Michaelの「FAITH」と、PWLの申し子といわれたRick Astleyのデビュー作でした。懐かしい。(ちなみにRick Astleyは先に聴いた従姉がとても気に入ってしまったことを覚えています。まあ、もう忘れていると思うけど。)

さて、George Michaelの「LISTEN WITHOUT PREJUDICE vol.1」。

これも、たまたま上京した際にタワレコで購入した一枚。衝撃的なソロデビューを飾った「FAITH」の次の作品ということで、店頭に並んでいるのを発見したときは、そりゃもう嬉々として手に取り、喜び勇んでレジへ。確か、発売されてすぐだったのかな。まだ国内盤が店に並んでいなかったハズです。

早速聴いてみると…。

…?

…あ、あれ?

な、なんか思っていた内容と違うぞ?

僕はてっきり「FAITH」の路線を踏襲したようなアルバムをイメージしていたために、肩透かしを食らったような、そんな印象を抱いてしまったのであります。

という記事をこのブログで掲載したのが昨年11月。この「LISTEN WITHOUT PREJUDICE vol.1」の25周年記念盤が発売されますよ、というアナウンスを受けて投稿したものでした。

ところが、暮れも押し迫った年末、世界中がクリスマスに浮かれる12月25日、突然の訃報が飛び込み、当初今年1月に発売が予定されていた記念盤も「発売日未定」となってしまいました。

突然の訃報に接したこと自体がかなり衝撃的だったのに、この25周年記念盤の発売日が未定になったことは、僕からすれば傷に塩を盛られたようなものでした。

ここに来て、お蔵入りになってしまうんだろうか。青春の一ページに思いを馳せることも許されないのだろうか。

発売日未定となった作品の予約をキャンセルすべきか逡巡したまま、季節も巡っていきました。

そんな中、9月上旬に突如発表された「Fantasy Feat. Nile Rodgers」 。

「Listen Without Prejudice vol.1」に収録されなかったこの曲は、実は25年前にアルバムの先行トラックとしてシングル化の構想があったようなのですが、いずれも実現せぬまま、後にカップリング曲として発表されることとなりました。

しかしながら、今回発表される25周年記念盤の発売に合わせ、ナイル・ロジャースにこの楽曲のリテイクを依頼し、この楽曲の発表をもってキック・オフとする予定だったのだそうです。

にもかかわらず、本人の急逝と作品の発売延期により、またしてもお蔵入りか…と思ったところへの発売決定の知らせ。ただし、「Listen Without Prejudice Vol.1」の25周年記念盤としてではなく、「Listen Without Prejudice + MTV Unplugged」というちょっと形を変えての発売。そしてそれに合わせ、この「Fantasy Feat. Nile Rodgers」も発表された、という。

そしてその直後に「発売日決定」のアナウンス。予約キャンセルしないで、本当に良かった!

ただですね…ホント何をやってるんだ!の4枚組デラックス・エディションの国内盤。

こういうことをするからアーティストと喧嘩になるんじゃないんですか?と思うような内容。これってアーティストじゃなくとも怒りたくなりますよ。

何で怒っているかといいますと…。

公式ホームページでは次のようなアナウンスがされています。

【デラックス・エディション収録内容】

DISC1(CD)|オリジナル・アルバム:2015年デジタル・リマスター <BSCD2仕様>

DISC2(CD)|MTVアンプラグド 公式初CD化:2015年デジタル・リマスター <BSCD2仕様>

DISC3(CD)|レア・トラックス:2015年デジタル・リマスター <BSCD2仕様>

DISC4(DVD)|ドキュメンタリー&ミュージック・ビデオ<日本語字幕付>

DVDに字幕が付くのはありがたい一方、何と肝心の「Fantasy Feat. Nile Rodgers」が収録されていないのだそうです!(ダウンロードコードが封入。)

そして、この曲の代わりにDISC2「MTV Unplugged」の11曲目に収録されているのは、Elton Johnとのデュエットナンバー「Don’t Let The Sun Go Down On Me」。

11.僕の瞳に小さな太陽(with エルトン・ジョン)※from the Elton John Album『Duets』 日本盤ボーナス・トラック

ちなみに2枚組のスタンダードエディションには、DISC2の11曲目に「Fantasy Feat. Nile Rodgers」が収録されているのだそう。この差異は、一体何?

そもそもElton Johnとのデュエットナンバーって、このアルバムとは全く関係ない曲ですよね。「日本盤ボーナス・トラック」という触れ込みになっていますが、全然ボーナスなんかじゃないし、むしろ邪魔なぐらいなんですけど!

しかし、何でこの曲を収録したんだろう?まさか、「MTV Unplugged」だからライブ音源も収録しちゃえ、ってこと?それとも…。

本来収録されるべき曲ではないこの曲が収録されたことによって、作品そのものがまるっきり別のものとなり、他方、本来収録されるべき曲が収録されていないことで、作品の質や価値が評価に値しなくなる可能性があるということを、レコード会社は理解しているのでしょうか…。

日本盤って、こういうのが多いですよね。「日本盤のみボーナス・トラック!」という触れ込みを掲げ、蛇足とも言えそうなボーナス・トラックを収録したせいで、アルバムの雰囲気がガラリと変わってしまったり、アルバムのトータルバランスを崩したり、アルバムそのものの質を下げてしまうことが。確かに昔はこれが「いい!」と思っていました。「日本盤のみのボーナス・トラック」を収録することで、何となくお得感を出すというか、海外盤との差別化を図るというか、色々理由や事情はあるのでしょうけれど、この曲って本当に必要なんだろうか、ということもしばしばあります。

極端な話をするならば封入された「解説」だって、もしかしたらいらないんじゃないか、と思うこともあるぐらい。だって、とことん解説に徹しているのならばともかく、作品に対する感想なんていうのは結局のところ、筆者の主観じゃないですか。直接制作に携わった人やアーティストの言葉なら話は別ですが。

有識者や音楽評論家の解説なんていうのは、このご時世、ブログで充分だと思うんですけれどね。(あ、このブログはそういう類ではありません、念のため。そもそも私、評論家でもなければそういう深い知識も見聞も持ち合わせていませんので。)

これもこの作品に限ったことではないのでしょうけれど、DISC 3の内容も「レア・トラックス」と謳っている割には結構寄せ集めっぽい感じが否めず、実際、既に他のアルバムに収録され、発表されている楽曲が多数収録されています。少なくとも未発表曲に関しては、収録されていません。

ちなみに今回新たに発表されたテイクは別として、「Fantasy」に関しては発表された当時の楽曲が既に「FAITH」のコレクターズ・エディションにも収録されているという。

それが今回また収録されるのも「?」ですし、そもそもそれで「レア・トラックス」って、一体どうなっているんでしょう。

まあ、確かに今となっては手に入れにくい音源が多数なので、「レア」であることには違いないのでしょうけれど、このDISC 3自体がデラックス・エディションのボーナス盤みたいなものと考えれば、致し方ないことなのかな。

だとしても、折角のコンセプトをムダにするような余計なボーナス・トラックは、正直言って本編には収録して欲しくないですね。

ということで、4枚組デラックス・エディションに関しては、何だかちょっと残念な作品になってしまったなあ、というぐらい衝撃的な内容。だって、本作品最大のハイライトが削がれているわけですからね。

そういうことじゃないんだよな…と、草葉の陰で歯軋りしながら地団駄を踏んでいるジョージの姿が目に浮かぶようです。さて、それはともかくこの作品、無事に手許に届くのでしょうか。そっちの方が心配です。

裏と表、見せかけと真実、そして、昼と夜。#MANIJU #佐野元春 

僕の素性を知っている人には信じられないことかも知れないが、断酒を開始して4日目の夜を迎えた。

もちろん次の日曜日、北海道マラソンに向けた対策の一つ。これが吉と出るのか凶と出るのかはわからない。ただ、やれることをやらずして後悔するぐらいなら、とりあえずやれることをやってみて悔いた方がいいのかな、と思っただけのことだ。

音楽と酒の関係。このアーティストにはこの酒、このアルバムにはこの酒が合う、というコンビネーションがある、はずだ。いや、きっと誰もがそういうコンビネーションを密かに持っていると僕は勝手に思っている。

例えば、佐野元春 and THE HEARTLANDの「Cafe Bohemia」。あの雰囲気はビールというよりはバーボン、できればロックかソーダ割りだろうか。…いや、僕はバーボンなんてほとんど飲まないんだけどさ。

7月に発売された、佐野元春 and THE COYOTE BANDの新作「MANIJU」。洒落を気取って背伸びした大人から、円熟味を増して腰を据えた大人への進化。じっくりと染み入る感は、既に傑作の風格すら醸し出している。これを聴くならば焼酎、それもできれば芋をロックでお供にしたいところだ。

「MANIJU(マニジュ)」とは、禅語の「摩尼珠(まにしゅ)」(=摩尼)に由来する言葉。サンスクリット語の「mani」の音写でもあるこの言葉は、神秘的な力をもつ珠のことでもあり、濁水を清らかにし、禍(わざわい)を防ぐ功徳をもつといわれます。

誰かが論評していた。
「MANIJU」とは暗に「Man Needs You」を指すのだと。

論評を読んで何度か復唱してみた。マニジュ…マニジュ…マンニージュー…確かにそうかも知れない。

とはいえこのアルバムは、全編にわたって珠玉の恋愛ソングが並んでいるわけではなく、世界や社会を嘆くシリアスなもの、政治批判と取られそうなちょっと過激なものもある。

とりわけ「現実は見た目とは違う」の歌詞は、痛烈な社会風刺といってもいいだろう。真実の聖者は、いったい誰だろう。見せかけの聖者ならば、世間を騒がせたあの人や、あの人の顔が真っ先に思い浮かぶ。

…いや、彼らは「聖者」ではなく「政治屋」か。

そんな中に垣間見える、いつまでも衰えない少年のような感性。
多様なパッケージ展開。作詞や推敲の過程の様子、更にはスタジオの配置までがちりばめられたブックレット。いわば、この作品が完成するまでの作業経過が記録されたヒストリーのようだ。
ブックレットと同梱されたピンナップそしてポストカードには、短く切りそろえられた白髪姿の彼。ここまで髪を短くしたのは、80年代中頃以来じゃないだろうか。

12弦ギターの多用をはじめとする、チャレンジを忘れない精神。
そして実は、アルバムに収録されなかった、数々の名曲があることを忘れちゃならない。もちろんこの作品は、過去に発表した作品を羅列した寄せ集めのようなアルバムじゃない。(最近目にする機会が多いと思いませんか、そういう作品。)
全12曲。オープニングを飾る「白夜飛行 Midnight Sun」からしばらく聴き入り、終盤に流れる「夜間飛行 Night Flight」でハッと虚を突かれる。
同じ歌詞なのに全く異なる楽曲。歌詞の重み、その歌詞を奏でる楽曲の重みをしみじみと噛み締める。

「ビート詩人」を標榜するようになったのはいつ頃からだろう。
今回のアルバムの根底に流れる「禅」から派生した「禅ビート」は、その呼び声に対するアンサーソングのようで、ほぼ一発でOKとなったテイクだそうだ。

そして、詩人としての本領発揮は実は、未収録曲「こだま -アメリカと日本の友人に」で発揮されているんじゃないかと思う。

作品そのものの持つストーリー性、そしてラストから再びオープニングへと繰り返されるループ。

まさに輪廻転生。

作品を発表するたびに成熟し続けるバンドの姿を、これでもかとばかりに見せつける、格好良さ。
このバンドでなければ絶対に出すことのできない、唯一無二のサウンド。
THE HEARTLAND
The Hobo King Band
そして、
THE COYOTE BAND
彼と共に歩んだこれらのバンドが、日本を代表するようなバンドだということを、敢えて僕が説明する必要はないだろう。
それぞれの個性、それぞれの技術がぶつかり合い、融合し、激しくエネルギーを放ち続けた結果、個々のメンバーが現在も音楽界にはなくてはならないバイプレイヤーとして君臨しているという事実が、それを物語っている。
THE COYOTE BANDを従えて4作目となる今回の作品、先行シングルとして配信された「純恋」を筆頭に「若い世代に聴いて欲しい」という思いが込められているそうだ。

そういえば、THE COYOTE BAND名義の最初のアルバム「COYOTE」も、「二十一世紀の荒地を往くBoys & Girlsに。」という触れ込みだった。

粗削りでまだ手探りを続けていたあの頃。初めてTHE COYOTE BANDを従えたライブを観た時も、どこかまだ融和がされていない感じで、正直ハラハラしたものだった。

あれから10年が経ち、Boys & Girls は、Men & Womenに成長したはず。

でも、Old BoysもYoung Girlsも心揺さぶられる、今回の作品はきっとそんな作品だと僕は思っている。

大事な君(リスナー)に捧げられたこの作品、あなたならどの酒を飲みながら聴いてみたいですか?

角松敏生ツアー 2017 青森公演 #角松敏生 #本田雅人

ひょっとしたら角松ファンから「そんなことあり得ない」というお怒りの声もあるかもしれませんが、ここはお叱り覚悟で私見を言わせていただきますと、角松敏生とPrinceって、どこか似ているような気がします。

ざっと思いついた共通点。
楽器を弾いて歌って、それでいて他人のプロデュースもして、しかも敢えて言うならば女性好き、その上、神経質というか職人気質、端的に言えば自分大好きなんだけれど中途半端には妥協しない、だからこそ己の道をとことん突き詰めた挙句にレーベルというかレコード会社と揉め、片や改名、片や休業。
ついでに言えばパステルカラーが似合う。
参考までに、Princeが1958年、角松が1960年生まれ、世代も近いという…。

そういえば僕自身、角松敏生とPrinceを聴き始めたのもほぼ同じころ、高校に入学した直後でした。…ということはそれから約30年、ずっと両者については聴き続けていたわけで。
考えてみると、これまで色んなアーティストのライブやコンサートを観てきましたが、恐らく回数で言えばベスト3に入るぐらいこの方のライブを観ていると思います。そんな彼、角松敏生の2017年のツアー青森公演、10年ぶりの青森公演に行って参りましたので、簡単にレポート。…というか簡単にレポートの前のイントロダクションが長過ぎました。相変わらず、どうもすいません。

2017年6月3日(土)、青森は6月とは思えぬほどの冷え込み。初夏というよりは初春を彷彿させるような冷たい雨が降る中、会場の青森市民ホールにはたくさんのお客さんが集まっていました。僕の席は前から6列目のかなり左寄りではありましたが、ツアーに帯同しているサックスプレイヤー、本田雅人がちょうど真ん前にいるという、僕個人としては願ったり叶ったりの位置でした。この日の会場、2階席は見えなかったけれど、1階席はほぼ満席。恐らく全体でも9割以上が埋まっていたのかな?
…開演時刻の17時30分から遅れること3分、17時33分にいよいよ開演。

ざっと見たところの客層は、40代後半から50代前半が圧倒的に多く、男女の比率では4:6、といった感じでした。
…まだツアー中なのでセットリストを含む多くのことをここで披露するのは控えたいと思いますが、今回のツアータイトル「SUMMER MEDICINE FOR YOU Vol.3~SEA IS A LADY~」が示す通り、5月に発売されたインストゥルメンタルアルバム「SEA IS A LADY 2017」をメインとした、(個人的には)これまでの彼のライブの中でも恐らく1,2位を争うぐらいの、非常に充実した素晴らしいライブでした。

10年経ってもなお飄々とした佇まいというか、間もなく57歳となる今もそのスタイルは全く変わっていないし、声量もそのまんま。ただ今回は、「ギタリスト角松敏生」の片鱗を申し分ないぐらい堪能することができたのは、なんだろう、これまで色んなライブを経験してきた中では、ちょっとまた違った印象を「強烈に」ぶつけられたな、そんな感じでした。

前述の最新アルバム「SEA IS A LADY 2017」に参加した5名のミュージシャンが、そのまんまツアーメンバーとして参加していました。
だから、アルバムからのナンバーをそのまま生で聴くことができる、というよりもむしろ、それ以上に深い音を楽しめるという感じ。とりわけこの日は、メンバーで最も若いドラマーの山本真央樹(24)が帯状疱疹を発症するというアクシデントの中で、この日会場に集まった人たちみんなに強烈な印象を与えるぐらいのドラムテクニックを遺憾なく発揮してくれました。

でも、何よりも感激したのは、本田雅人のサックス。
もうですね、彼のことを僕がああだこうだと言うのもおこがましいのですが、彼のテクニックは、ある意味この日と同じ代金(ちなみにこの日の前売りは8,500円)を払って観てもいいぐらい、素晴らしいものがありました。
もっとも、角松敏生のギタープレイをしっかりと目にするのは恐らく今回が初めてと記憶していましたが、お世辞抜きで、うまい。ホントうまい。前述のとおりインストゥルメンタルアルバムを引っ提げてのツアーですので、それ相応の思いを持ってツアーに臨んでいたはず、それにしても凄い。歌半分ギター半分といった構成、彼の唄声を楽しみにしている人にしてみれば物足りないのかも知れませんが、敢えて言います。

ギターが、唄います。
サックスも、唄います。
そして二人の手にしている楽器で、ハモります。

変な話、完全にツインボーカルですよ。

もう、この二人の掛け合いを堪能できただけでも大満足。もちろん他のメンバーも圧巻の演奏を繰り広げ、終演までの3時間があっという間でした。

この先ツアーは続くようですが、お近くにお住いの皆さんはぜひともこのライブを堪能していただきたいと思いますし、その前にこの「SEA IS A LADY 2017」というアルバムも是非購入いただきたいと思います。

そう、今から30年前、バブル景気に日本が沸き始めていたころですよ。そんな中にあって、今改めて再録されたこのアルバムを聴くと、妥協を決して許さない今の音楽に対する姿勢を、垣間見ることができます。
…もっとも、ライブはそんな堅苦しさは全くないんですけどね。
終わってみると正味3時間、諸般の事情で、既にライブを行った他の地域のライブと若干(?)セットリストも違っていたようですが、個人的には大・大・大満足の内容でした。

個人的には、パステル系のステージ衣装の中でも、履いていた靴(シューズ)を見ながらMCを聴いて、妙に納得してしまったのでした。

とにかく、このライブは是非お勧めです。お近くでライブがあるようでしたら、ぜひ足を運んでいただいたうえで、一足早い夏の雰囲気を堪能ください。そしてその前に、直近のアルバムで修業を積んでおきましょう。

(敬称略)

Get Wild SongMafia / TM Network

Get Wildの次の曲は、Get Wild。その次の曲も、Get Wild。これが延々繰り返されること、35回-

Get Wild(GET WILD)というタイトルの曲ばかり36曲収録された、超マニア向けな1枚。4時間を超える収録時間、4枚組というボリュームで税込3,240円。換算すると、1曲当たり90円(税込)。
ブックレットにはGet Wildの歌詞が掲載されているほか、3人揃ってのインタビュー、作詞した小室みつ子、主題歌となったアニメ「シティハンター」の原作者、北条司へのインタビューなどが掲載されています。(敬称略)

最初にGet Wildが発売されたのは1987年なので、今年で30年。このアルバムはそれを記念したプロダクツなのですが、たかだか1曲で4枚組のアルバムなんか、普通できませんって。(強いてライバルを挙げれば、紅白歌合戦の美川憲一「さそり座の女」ぐらいか?)

裏を返せばこの曲がいわばTM Networkの代名詞的な曲として、懐メロっぽさというか古さを感じさせることなく、時代を超えて長きにわたって演奏され続けて来たということであり、このアルバムに収録された36曲のうち、11曲がカバー曲ということが裏付けるように、いろんな人たちに歌い継がれてきたということになるわけです。

さて、その一方で残り25曲のうちライブバージョンが15曲。変な話だけれど、よくもまあ毎回ライブでこんなにアレンジを変えられるものだ、と…。
前奏で「ん?この曲何だ?」と思っても、「ゲッワーイ」のサンプリング声と、「ジャジャジャジャ!」という音がほんのちょっと流れるだけで会場が沸く、という…。(まあ、全曲「Get Wild」なので、「この曲何だ?」はないんですけど。)

インタビューでも触れられている通り、最初の「Get Wild」からリミックスされ、バブル全盛期に発表された「Get Wild’89」からどんどん派生していくこととなり、こんな「アホ」みたいなアルバムになったという…。

ところが不思議なことに、アルバムを購入してから通勤時に3日続けてこのアルバムを聴いていたんですけど、アレンジは違えど同じ曲が延々ループされているのに、なぜか飽きが来なかったんです。むしろ逆に、次の曲はどんなアレンジがされているんだろう、という楽しみが続いたのであります。感覚麻痺ですよ。

正直言ってこんなアルバム、古くからのTMファンか、よほどのマニアしか購入しないだろうし、一般の方々には全くお勧めできるものではありません。

でも、Get Wildにこだわるのも、いい加減もうこれぐらいでいいんじゃないかな、と思った次第ではありますが、全盛期にGet Wildを聴いて心ときめかせた皆さま、バブル期の感動を呼び覚ますには、3,240円なんて安いものです。だって、1曲90円ですよ!バブル全盛期には考えられないじゃないですか!

しかーし。
このアルバム、残念ながら収録されていないバージョン(これ以外にもまだあるのですよ!)があるので、評価は星4.5とさせていただきます。
さらにおまけ。

なんと、同じ曲名が続き過ぎたためなのか、同じ音源が収録されていたというトラブル!

TM NETWORK 「GET WILD SONG MAFIA」商品に関するお詫びと良品交換お申し込み特設サイトのご案内

えーと…手元にあるのはこのエラー盤ですが、僕、単なる「Get Wild」好きな一ファンで、マニアじゃないからなあ…(笑)。