昨年12月、「NAHAマラソン」に出場した。コロナ禍を経て、久し振りのフルマラソンに心が躍った。
結果はともあれ、走り終えた後、実年齢にもう少し抗いたい、声援に最後まで応えたい、そして来年は今年の自分に打ち勝つ、という想いを抱いた。
【“中高年の修学旅行”を口実に】
そんなわけで今年も「中高年(後期高齢者の母77歳を含む)の修学旅行」という大義名分で、2泊3日というショートとなってしまったが、沖縄を訪れる「ついでに」NAHAマラソンに出場することにした。
NAHAマラソンは、沖縄全県を挙げた年に一度の「お祭り」みたいなもので、その雰囲気を一度味わうと、他の大会に物足りなさを感じるぐらいホスピタリティの充実した大会だ。
大会の前日そして翌日の地元ラジオのネタはNAHAマラソンの話題で持ちきり、さらに大会当日、地元の放送局(琉球放送・TBS系)ではスタート前からテレビで生中継(11時30分まで)、ラジオではなんと7時間半にわたって生放送が行われるのだ。
それぐらい熱量のある大会だし、スタートからゴールまで途切れなく続く沿道の応援を「日本一」というランナーがいるのも頷ける。
【しかし、完走できるのか?】
2024年の月平均走行距離は98.6km。11月は127.5km。11時間40分しか走っていない。
これでも昨年同時期と比べたら月平均で10km以上長く走っている。
走る時間を生み出すのが難しくなっている(というより走る時間を生み出す努力を怠っている)中、計画も何も練らぬまま、ただ漫然と練習に取り組んでいたようでは、結果が出るはずもない。
付け刃ではどうにもならないのがマラソンだ。それは自分が一番よくわかっているつもり。結局、練習不足にも程があるということで、今回は練習を兼ねたレース参加、という位置付けにした。とにかく力まず、リラックスしながら走ることに比重を置いて。
何せ10月の弘前・白神アップルマラソンは直前のケガで出場できず。まあ、今になって思えば出場しても完走すら怪しかったわけで、ようやくケガが落ち着いて練習を再開した頃には、既にNAHAマラソンの開催まで約1か月と迫っていた。
独りで練習することによって甘えも出るだろうし、そんな状況で大会に出るなんて!と思う人だっているかも知れない。でも、それを受け入れてくれるのがNAHAマラソンだ。
直前に抗っても無駄だとは知りつつ、水曜日から酒抜き、木曜日からカフェイン抜き。
【いざ現地へ】
大会前日の土曜日7時40分、雪の降る青森空港を飛び立ち、羽田を経由して13時前には那覇空港に降り立った。1年ぶりの沖縄は、思った以上に暖かかった。レンタカーを借り、プチ観光しながら、17時過ぎにゼッケンカードを受領し、宿泊したホテルにチェックイン。入口には、スタッフの声援メッセージなどが飾られている。
チェックイン後はホテル内で19時まで軽食を取ることができるということで、3日間我慢したアルコールを摂取することに。せっかくここまで来て楽しまなければ、もったいないからね。
翌朝は5時に起床、ホテルの配慮で30分繰り上げとなった朝食会場へ6時ちょうどに入り、炭水化物を多めに食べる。
スタート地点まで歩いて行ける距離だったので、8時ちょうどにホテルを出発、約15分で奥武山運動公園に到着。そこから45分、ひたすらスタートの鐘が鳴らされるのを待ち続ける。
今回のゲストスターターは「ガレッジセール」の二人だった。敢えて右寄りのポジションに陣取り、スターターを間近で見ようというミーハー心が芽生える。
【いよいよスタート】
無謀にも目標を3時間29分に設定した結果、Cブロックからのスタートとなったが、後悔先に立たず。最後方となるLブロックからはスタートしたくないけれど、今の実力を考えればD~Fブロックで充分だったのだ。
ということで、格好だけは「走れそうな人」を装っているけれど、せいぜい頑張っても20kmまでだろう。あわよくば25km~30kmまでは頑張りたいが、それだってどうなることやら。とにかく本島南部を一周するコースを無事に巡る、今回のレースプランはこれに尽きるだろう。
カウントダウンが始まり、いよいよ9時、鐘が鳴らされた。1分ほどでスタートラインを跨ぎ、42kmを超える一人旅が始まった。ガレッジセールの二人を横目にしながら、那覇市内へと駆け出す。
とにかくリラックスすることだけを心掛けていたので、雑踏のような状態となる国際通りから5kmまでは、さほどペースを上げることもなく、周囲の流れに乗るような感じで駆け抜ける。5分15秒~20秒の間でペースを落ち着かせながら、5km地点を通過。思ったほど暑くはないが、ほとんど雲がないので確実に暑さは増すことだろう。
自分でもビックリするぐらい気負うこともなく、淡々と走っている。しかし7kmを過ぎた「YMCAポイント」辺りから、上半身のキレが悪く、下半身、特に大腿部と足裏に負荷がかかり過ぎているような感覚があり、何とか態勢を整えようと思ったが、練習不足が祟り、最後まで立て直すことができなかった。
10kmは約55分で通過。今回のゴールの想定が4時間30分であることを考えると、少々速い気もするが、後半の悪魔の囁きと落ち込みを加味すれば、これぐらいのペースで走り続けるのが妥当なのだろうか。息も上がっていないし、心拍数も落ち着いているし。しかし、そんなにうまく事が運ぶはずもなく…。(後編へ続く)