Prince / 4EVER

2016年もあと1か月ほどで幕を下ろします。
今年はとにかく、喪失感を味わい続ける年になってしまいました。こういう忌々しい年はできることならば早く忘れ去りたいものではありますが、恐らく一生忘れることのない年になることでしょう。そう、永遠に(4EVER)。

4月、あまりにも突然すぎるプリンスの訃報に唖然としながら、人生の儚さをつくづく思い知らされた2016年。
そんな主が不在となった今、「満を持して」ベスト盤が発売されました。タイトルは、「4EVER」。

prince4ever
DISC 1
01. 1999
02. Little Red Corvette *
03. When Doves Cry
04. Let’s Go Crazy *
05. Raspberry Beret
06. I Wanna Be Your Love
07. Soft And Wet
08. Why You Wanna Treat Me So Bad?
09. Uptown
10. When You Were Mine
11. Head
12. Gotta Stop (Messin’ About)
13. Controversy
14. Let’s Work *
15. Delirious
16. I Would Die 4 U
17. Take Me With U *
18. Paisley Park
19. Pop Life
20. Purple Rain

DISC 2
01. Kiss
02. Sign “O” The Times
03. Alphabet St. *
04. Batdance
05. Thieves In The Temple
06. Cream
07. Mountains
08. Girls & Boys *
09. If I Was Your Girlfriend
10. U Got The Look
11. I Could Never Take The Place Of Your Man
12. Glam Slam *
13. Moonbeam Levels **
14. Diamonds And Pearls
15. Gett Off
16. Sexy MF
17. My Name Is Prince
18. 7 (Album Edit)
19. Peach
20. Nothing Compares 2 U
* 初CD化 ** 未発表曲

2枚組、40曲。フィギュアスケートの羽生結弦選手が今年のSPでプリンスの「Let’s Go Crazy」を採用して話題になっており、それも相まって改めてプリンス再評価の兆しが生まれるのでしょうか。いや、もう十分すぎるほど再評価はされているのか…。
実際このアルバム、国内盤輸入盤問わずジャケットのフィルムには、「フィギュアスケート2016使用楽曲 Let’s Go Crazy 収録」という赤いシールが貼られています。羽生選手の名前がないとはいえ、ここまでやられると、売り時なのはわかりますが、輸入盤にまで貼るか?といった感じで、ちょっと複雑な心境です。

ちなみに、11月29日付け日刊スポーツの記事から。

羽生効果 プリンスベスト盤売れ行き「予想以上」
フィギュアスケート男子の羽生結弦(21=ANA)が今季の演技で起用した米歌手のプリンスに再び注目が集まっている。ショートプログラム(SP)に使っているのが、今年4月に急逝したプリンスのヒット曲「レッツ・ゴー・クレイジー」。その曲が収録された10年ぶりのベスト盤「4EVER」が25日の発売からわずか数日で1万5000枚の出荷と、海外ミュージシャンとしては異例の売れ行きを見せている。

発売元ワーナーミュージック・ジャパンの担当者は「プリンスが亡くなってから初のベストということもありますが、ユヅ君の効果も大きいと思います」と反響に驚いている。CDのジャケットには羽生の名こそないものの「ユヅ効果」を狙い「フィギュアスケート2016ショートプログラム使用楽曲 Let’s Go Crazy収録!!」と記された赤いシールが貼ってある。都内有数のCD店、タワーレコード渋谷の担当者も「予想以上にすごく売れ、品薄です」と話す。

ベスト盤発売日の25日、羽生はグランプリシリーズNHK杯で、プリンスをイメージした紫の衣装でSPを滑った。今後も結果を出すほどプリンスの曲の売り上げが伸びるかもしれない。

プリンスに関してはこれまでも数回ベスト盤が発売されていますが、残念なことに今回も、全キャリアからの楽曲をチョイスしたオールタイムベストではなく、デビューから90年代初頭までの約15年間、所属レコード会社と揉めて改名騒動を起こす前までの作品からの選曲となっています。裏を返せば、その後の20年以上にも及ぶキャリアは、またしても日の目を見ることがなかった、ということに。もっとも彼の場合、毎回発表されていたアルバム1枚1枚が「ベスト盤」みたいなものだから、敢えてベスト盤を発表する必要もないんですけどね…と嘯いてみたり。
後述しますが、「あの曲が収録されていない、あの曲はどうした。」という話になってくると、「ベスト盤」なんていう中途半端に作品をまとめたものじゃなくて、廃盤になってしまったオリジナル盤を再発してくれよ、と思ってしまうわけです。

閑話休題。
今回のこの「4EVER」、注目点は3点。まずは初CD化となるシングル・バージョンが7曲収録されていること、2点目は未発表曲が1曲収録されていること、そして3点目、リマスターが施されていること。

例えば羽生選手がきっかけとなって初めてプリンスを聴く人にしてみれば、単純に「ああ、プリンスってこんな曲を歌っているのね。」と感じるのかも知れませんが、オールド・ファンにしてみれば、色んな角度から、色んな評価があるんだと思います。
全体を通した感想としては、既に他のレビューでも拝見したのですが、一言で言うならば過去に発売されたベストアルバム「THE HITS/B-SIDES」のうち、「B-SIDES」の部分を除いて内容を練り直し、更にリマスターも施した、そんな作品といえばいいのでしょうか。2枚目のディスクに12インチシングルの楽曲を収録した「Ultimate」とはちょっと違う感じ。
でも、個人的には「それなりに」楽しめる作品だと思いました。
シングル・バージョンの収録に関しては、どちらかと言えばコアなファン向けなのでしょう。新しいファンの方々にとってみれば「何が違うの?」ってことになるのでしょうけれど、楽曲によってはアルバムと比べると曲の長さが半分近くになってしまっているものもあって、何となく物足りなさを感じるところではあります。しかし、それがまさに初CD化された「シングル・バージョン」なんだと割り切ると、それはそれでちょっと得した気分になりませんか。今回初CD化となった7曲以外の楽曲も同様のバージョン(既発)が多数収録されており、これらがあったからこそ1枚のディスクに20曲も収録されることとなったわけです。

今回初めてプリンスの音楽に触れる皆さんに、バラエティに富んだ彼の楽曲をたくさん聴いてもらえるのであれば、それはそれで「アリ」なのかな、と。そしてこれをきっかけに、オリジナル・アルバムにまで触手を伸ばして頂ければ、なお結構なことなんですけどね。そういう意味ではこのアルバム、入門盤の一面も魅せつつオールドファンでも楽しめる内容に仕上がっていると思うのですが、どうでしょう。

未発表曲は「Moonbeam Levels」というナンバー。僕自身は「A Better Place 2 Die」というタイトルの方がしっくりくる楽曲ですが、初めて海賊盤で聴いた(←ダメじゃん)時と比較すると、当然のことながらAMラジオの雑音というかノイズが一切なくなっており、非常に美しい曲だな、ということを改めて感じました。まあでもこんなのは氷山の一角どころか氷山の一粒にもならないようなもので、彼の未発表曲は数千曲にも及ぶとも言われていますので、この先どういう形で他の未発表曲がこの世に現れるのか、個人的には注視していきたいと思います。

リマスターに関しては、(恐らく)本人が手がけたものではないため、聞く耳の肥えたファンからすれば色々言いたいところもあるようですが、こういう形でまた一つ整理されたというだけで充分じゃないですかね?

前述の通り、40年近くも活動しているアーティストともなれば、ファンの感じ方だって千差万別。あの曲が収録されていない、この曲はいらなかった、という評価は、失礼を承知で言わせてもらうと、単なるエゴ。その声一つ一つに耳を傾け、目くじらを立てていては、キリがないわけですよ。最後は自分がどう感じながらこの作品を受け止める(受け入れる)か、そこに尽きるんじゃないですかね。
僕はこれも今のプリンスなんだと素直に受け止め、「NOW AND 4EVER」の気持ちでしばらくの間、愛聴したいと思います。
ちなみに僕はこの作品を、最初から順を追って聴くのではなく、ランダムにシャッフルして聴いています。次に何の曲が流れてくるかワクワクしながら聴くのも、なかなか楽しいですよ。

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