30キロの壁は脳が作り出す?

昨日、今季3度目となる30キロ走を試してみた。今回は、10月にエントリーしている地元で行われる「弘前・白神アップルマラソン」のスタート時刻に合わせて、午前9時に自宅を出発し、全く同じコースを試走。約17キロ先にあるコンビニで折り返し、戻って来るという算段だった。

ウェストポーチにはあらかじめ用意しておいた500ミリのドリンクと、アミノ系のサプリメント、携帯用のゼリー、そして忘れちゃならない塩のタブレット。

そして9時過ぎ、秋晴れの爽やかな風が吹く中、自宅をスタートした。
トライアルではなくLSDをイメージしていたのだが、最初の1キロが5分15秒とLSDと呼ぶにはほど遠いペース。これを何とか抑え、5分30秒を切るぐらいのペースでずっと走り続けた。

チビリチビリと水分を補給しながら、それほど苦痛とも感じることなく、緩い上りを走破し、1時間40分後には折り返し地点のコンビニに到着。ここでアイスクリーム一つを平らげる。
ホッと一息をついて、復路スタート。

以前、朝練の時にも話題になっていたのだが、上りの逆ということで、当然のことながら復路はしばらく緩い下りが続く。調子に乗ってスピードを上げると、後でガツンとしわ寄せが来るということを聞いていたので、抑え気味にゆっくりと走る。

もっとも、緩い下りということもあるのかも知れないが、心なしか往路よりも短い距離のようにも思える。
しかし、25キロを過ぎた辺りから、少しずつ足の裏と膝に疲労が溜まりはじめているのがわかる。
徐々に足取りが重くなってきていたのだ。

それでも、レース最後の関門とも言われている緩い上り坂(最近の平日練習は専らこの坂の上り下りが行われているらしい)を思った以上に難なく上りきり、いよいよラスト6キロに差し掛かった。

ところが、である。

残り4キロを過ぎた地点から、途端に足が動かなくなった。前に進もうにも足が走ろうとしないのだ。そしてその時、僕の頭の中ではこの先の道のりを走り続けることについて、ほぼ諦めつつあることが何となくわかった。

フルマラソンを走ったことのない僕にとって、32キロを超える距離は未知の世界。今日はその未知の世界に足を踏み入れようと興味津々で臨んでいたのに、未知の世界の前に、目に見えない巨大な壁が立ちはだかった。

31キロ付近で走ることをやめ、そこから約1キロ歩きながら、走れるか?どうだ?と自問自答を繰り返すが、脳が走る方へのスイッチを再びオンにすることが、この先ないだろうということが明らかになった時点で、今日のトレーニングを諦めた。

コンビニに立ち寄り、炭酸飲料を一気飲みする。頭をかしげながら、沈思黙考。

…一体何なんだ、これは。
というか、これが30キロの壁っていうヤツですか…。

思い当たるフシを色々考える。朝食で摂った炭水化物は茶碗1杯にも満たない米のみ。これか?
それとも、最初に5分15秒で入ったのがオーバーペース過ぎた?それとも、週末のオーバーワークが祟った?
いや、30キロ手前の上り坂で力みすぎて、その後の力が抜けた…?

何だろう、わからない。いや、わかるはずがない。
それよりも、未知の壁にぶち当たったということのショックが大き過ぎた。初めて味わう屈辱にも似た失望感。こんなに走れなくなるんだ…。今の走力がこれだけなんだ、もっと練習しようぜ、と割り切ればいいのかも知れないけど、何ともやりきれない思いを抱えたまま、そこから自宅までの約2キロを、文字通りトボトボと、重い足を引きずりながら帰宅。

10月のフルマラソン初挑戦は、決してタイムを求めているわけではなく、むしろ自分に42.195キロを走りきる気力体力が備わっているのかを確かめてみたい、という思いからのエントリーだった。格好良く言えば、自分自身への挑戦みたいなものだ。今回に限っては、結果なんていうのは後からついてくればいいのだ。

しかし、ひょっとしたらフルマラソンに耐えうるだけの実力が未だ備わっておらず、そのレベルにすら達していないのではないか、というのが、壁にぶち当たってみて真っ先に感じたことだ。

でも、待てよ。シャワーを浴びながら、白い粉のように浮かび上がった汗の結晶を流しながら、ふと思った。

実はそこに壁はなかったのではないか?

3時間走り続けたことに飽きて、走るのを止める口実を作りたかったのではないか。
確かにあの時足は動かなくなったが、それを壁だ何だと理由付けて、走ることを止めた。
そう考えると、壁を作っているのも、足を止めたのも、全ては脳の仕業なのかも知れない、と思った。実に都合のいい解釈だけれど。

そして、改めて感じたこと。フルマラソンに備え養わなければならない力が、4つある。
気力、体力、能力、そして脳力。

能力は備わっていないが、気力、体力があれば、ゆっくりならば何とか走り続けることはできるかも知れない。
そして、やがて訪れる30キロの壁、あるいは未だ見ぬ35キロに立ちはだかる更に巨大な壁にぶち当たったとき、自分の脳を諭し(騙し)ながら走れば、意外とフルを完走することは難しくないのではないか。
フルマラソンを走るためには気力や体力だけではなく、頭を使って考える戦略も必要だという理論に、何となく納得した32キロ走だった。
しかし、頭で考えるほどマラソンは容易いものではないということを改めて感じたこの日の試走。

結局、フルマラソンを完走するという自負をすっかり失っちゃいました…。2509090902

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