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東日本大震災復興フォーラム in 東京

東日本大震災の発生から間もなく6年が経とうとしています。
被災各県の復旧・復興の歩みはそれぞれに違っていて、中にはまだスタートラインにすら立てていない人たちが数多くいると言われています。
そんな中でこういう宣伝をするのはちょっと心苦しいのですが、何卒お許し下さい。

3月3日13時30分から、東京国際フォーラムのステージイベント【ホールB7】において、東北地方の被災4県合同による「東日本大震災復興フォーラム in 東京」が開催されます。
この日は東京都が主催する「東京から元気を届けよう!復興応援2017」も開催される予定となっており、こちらは11時30分から開催されます。(事前エントリーが必要でしたが、席に余裕があるとのこと、当日も受付するそうです。)


ウェブサイトはこちら。

11時から17時までは、地上広場において物販・飲食コーナーが設けられるほか、ホールB7のサブステージにおいて、写真パネル展や各県の復興状況などを展示する情報発信ブースが設けられることとなっており、こちらはエントリーにかかわらず入場することができます。

さて、震災から間もなく6年という中、震災に対する記憶が風化しつつあるということは言うまでもなく、復興が順調に進んでいる地域では、防災に対する心構えが希薄になりつつあるのではないかという懸念を抱いています。実際、ここ最近は新聞などで報じられる機会がだいぶ増えてきましたが、平時は震災関連の記事があまり掲載されていない方が多くなりました。

「青森県も地震の被害を受けたのですか?」

昨年の復興フォーラムの会場で、何度か聞かれた質問です。

はい。青森県も被災県の一つです。

確かに被災3県と言われる岩手、宮城、福島の各県と比較すれば全然大したことがないのですが、太平洋沿岸の4市町には津波が押し寄せ、死者3名、行方不明者1名の他、家屋の倒壊や負傷者が多数発生しました。

そんな状況の中、被害の範囲が狭かったからと言われればそれまでですが、インフラなどはいち早く復旧を遂げ、八戸港も太平洋沿岸地域で被災した港の中では一番最初に復旧、この他避難道路や津波避難施設等の施設整備も順調に進んでいますし、県内各市町村では防災対策に向けた取組も着々と進んでいます。

そうそう、こんな発言をした人がいたことも思い出しました。

「青森県は、もう震災から復興したんでしょう?復興宣言しても、いいんじゃないですか?」

県外から青森県への避難者は未だ400人を数え、県外では依然として復旧・復興が道半ばであり、帰還するのが難しいという現実を印象づける内容となっています。

そんな方々の目の前で、「青森県はもう震災から復興しました。復興宣言します。」と言えますか?
僕だったらそんなこと、口が裂けても言えないけどな…。

ということで、どうしても被害が甚大だった3県に目が向けられる中、実は本県含め他県でも被害が大きかった、ということだけは改めてこの場でお伝えしておきたいと思います。

さて、話を戻して震災復興フォーラム。
青森県からも地上広場の出店ブースにおいて県産品の販売や観光PRを行っているほか、当日は私も、ホールB7のサブステージで青森県のブースの運営を行っている予定です。

昨年、「青森県も地震の被害を受けたのですか?」と聞かれ、青森県の復興への取組に関するものをほとんど何も持ち合わせていなかったという反省を踏まえ、今回は自ら手がけた「東日本大震災からの創造的復興への道のり」を持参し、青森県の「今」をお伝えしたいと思っています。

全くもって余談なのですが、本日(3月1日付け)の地方紙3紙(東奥、デーリー、陸奥)に掲載した県の広報に東日本大震災記録誌についての紹介を掲載しました。青森県HPのトップページには、震災から6年を迎えるに当たってのバナー(アイキャッチ)を設置しました。ちなみにこのバナーは、東日本大震災記録誌にリンクされています。
そして、青森県における震災からの復旧・復興の取組をまとめたPDFを、同じく県ホームページにて公開しました。(持参するのは、このページに掲載されている下段のものです。)

もしよろしければ、合わせてこちらもご覧下さい。

皆さまのご来場、心からお待ち申し上げます。

「惑う After the Rain」先行試写会 @弘前

スポーツの秋、読書の秋にまつわる話題を2日続けて紹介して参りましたが、今日は芸術の秋にまつわる話題を紹介したいと思います。


林弘樹監督の最新作「惑う After the Rain」。
静岡県三島市を舞台に撮影されたこの映画、11月からの静岡先行上映、そして来年1月からの全国ロードショーに先駆け、弘前市で開催された先行試写会に参加する機会を得ました。
試写会が行われたのは10月15日(土)。10月9日から12日まで静岡県、それも三島市の隣の沼津市へ出張しており、その際、この映画の制作に携わったみしまびとプロジェクトの方とも会い、映画のパンフレットなどを頂いておりました。…にもかかわらず!にもかかわらずですよ、僕は三島市を訪問しなかったことを、試写会前日になって激しく後悔していたのでした。

林監督とは、秋田県藤里町で行われた映画「ふるさとがえり GOING HOME」の上映会の際に初めてお目にかかってからご縁があり、そのことが契機となって、弘前市でも「ふるさとがえり」の上映会を開催したことがありました。藤里から弘前へと縁が繋がったのです。そして今回の試写会は、青森県初となる弘前市での「ふるさとがえり」上映会の開催に向けて一緒に奔走した平川市のSさんからのお誘い。「ふるさとがえり」は、我々の上映会開催を皮切りに県内各地で上映会が幾度か開催されていますが、今回の「惑う After the Rain」は、県内初上映となります。どんな林マジックが炸裂するのか、期待に胸膨らませて試写会の会場である弘前市民参画センターへ向かいました。

madou01実は今年3月、林監督が青森県にいらした際、わざわざ私の職場にも立ち寄ってくださり、その時にこの映画「惑う After the Rain」のパンフレットを直々に頂戴しました。上映会の暁には必ず伺わなければならないと思っていたのですが、公私ともに色々立て込んでいたところでの試写会の案内だったため、正直行くか行かないか迷っていました。…が、静岡出張を終えた直後、これは絶対に行かなければならないと即決し、慌てて参加エントリーしたという経緯がありました。

madou0216時30分過ぎから始まった試写会には、約30名の方々が集まり、それから約2時間、時に固唾を飲みながら、そして時に涙しながら、スクリーンで展開される物語に吸い込まれていきました。
madou03 もちろん公開前ですので、ネタばらしはしませんが、内容をちょっとだけ。(詳細は、公式サイト 映画「惑う After the Rain」をご覧ください。)

家族とは何か。昭和の一時代、とある家族の物語であり、3人の女性を巡るストーリー。
全編にわたって日本の美や伝統がちりばめられており、出演者の迫真の演技とも重なって、あっという間に感情移入。
「ふるさとがえり」については、これまで4回ほど観ているのですが、今まで毎回散々泣かされたので、今日は泣かないよ…と思ったのも無理でした。
涙腺発破装置が誤作動、いや、正常起動し、上映が始まって30分で既に涙。そしてその後も、最後までずーっと涙。
もう、あの話とかあの話とか、色々感想を述べたいところなのですが、グッと我慢我慢…。
あ!一つだけネタばらしさせてください。この映画の中で、三島を象徴する伝統芸能「しゃぎり」が出てくるのですが、実はこの「しゃぎり」を出張中に生で拝見しておりまして、地域の皆さんの世代を越えた絆による素晴らしい郷土芸能なのだな、と心を揺さぶられました。その「しゃぎり」を映画で再び拝見し、先日の感動がよみがえり、思わずグッと胸に熱いものがこみ上げたことを、今更ながら明かしたいと思います。

上映が終わった後、林監督も交えて試写会に参加した皆さんがそれぞれ映画の感想を述べることになりました。この中では、映画のシーンに自分の思いを照らし合わせ、感極まって言葉を詰まらせながら感想を述べる方が複数いたことが、とても印象的でした。
僕もちょっとだけ感想を述べましたが、何を述べたのかは秘密。ただ一つ断言できることは、この映画を観た後に、「ああ、早く家に帰って家族と会いたいな。色々話をしたいな。」…そんなことを思わせる映画です。恐らくこの映画もこれから複数回観ることになるような気がしていますし、できることなら早くもう一度観たい、そう思わせる内容でした。madou04
近隣で上映会や試写会があるようでしたら、是非一度ご覧になってみてください。そして、一人でご覧になるのはもちろん、できればご夫婦やカップル、兄弟姉妹などで一緒にご覧になることを強くお勧めします。
色々考えさせられる場面もたくさん出てきますが、鑑賞後には不思議と家族が愛おしくなるはずです。「ふるさとがえり」とはまた異なる切り口の、本当に素晴らしい映画でした。

furusatogaeri02余談ではありますが、翌日(10月16日(日))のこと。
秋田県北秋田市(旧:鷹巣町)で「ふるさとがえり」の上映会が初めて開催されました。

こちらの準備を手がけたのは北秋田市のMさん。正月に初めてお目にかかってから、2度目の再会となります。秋田から頂いたご縁を秋田へ返そうと、Mさんに「ふるさとがえり」上映会の開催を焚きつけた一人としてどうしてもその場に足を運びたく、マラソン大会の後、上映会が始まる直前にちょっと立ち寄ってみました。(この日マラソン大会が行われたのが、藤里町と北秋田市(旧:鷹巣町)に挟まれた能代市(旧:二ツ井町)だったという偶然が重なったのです。)

furusatogaeri01タイトなスケジュールでの開催となったようで、だいぶ参加者集めに苦労されたようですが、ここでも林監督自らが会場へ足を運び、上映後は参加者の皆さんと撮影秘話などで盛り上がったようです。そして、今回のこのご縁は、きっと次に繋がっていくはずです。北秋田市は僕にとって第二のふるさと(母の出身地)ですから、「亀の子団」ならぬ「影の子団」として、これからも応援させて頂きたいと思います。

あちらこちらで色んな思いを抱きながら地域の活性化に励む「つがるびと」はもちろん、全国各地の「○○○びと」の皆さん、この映画は絶対観て損はありませんよ!

So…After the Rain comes Fair Weather!!

「東北まちづくりオフサイトミーティング第25回八戸勉強会」が開催されます!

「東北まちづくりオフサイトミーティング」は、「敷居は低く、されど志は高く」を合言葉に、まちづくり・組織づくり・人づくりを目指し、自治体や民間企業の職員・学生など様々な立場の人が交流・情報交換する組織です。

これまで東北地方の各地で勉強会を開催してきましたが、青森県内では弘前、三沢に続いて3度目の「東北まちづくりオフサイトミーティング」の勉強会が、5月14日に八戸市で開催されます。

青森県は3月の北海道新幹線開業や中国との定期航路の開設に向けた取組など、相変わらずホットな話題に事欠きません。が、その一方で、県内の人口がついに130万人を割り込む見込みとなるなど、取り組まなければならない喫緊の課題もあります。

国内の地方が抱える「悩み」「弱み」は、恐らくどこも似たような感じなのではないかと思います。地方分権とは名ばかりで、結果的に一極集中型となっている社会構造、国内全体の人口が減少しているという現実の中、各地域の人口減をどう食い止めるか(あるいは人口を増やすか)躍起になっているのは、多分どこも一緒ではないでしょうか。更に追い打ちを掛けるかのように若者の流出による第一次産業を中心とした後継者不足、そして郊外型店舗やコンビニの進出による旧来型商店の弱体化、町内会をはじめとする地域コミュニティの衰退…などなど。

こうすればいいのに、ああすればいいのに、オレだったらこうしたいのに、ああしたいのに…色んな思いを抱いていてもなかなか形にすることができないというもどかしさ。どうせ一人じゃ何もできない、というのであれば、同じ志を持つ各地の仲間とともに考え、その思いを共有してみませんか。

東北まちづくりオフサイトミーティングは、そんな「きっかけ」を提供してくれる場でもあると思います。

今回は、「地方の夜明け 樋渡社中みちのく八戸編」をテーマに、いわゆる「TSUTAYA図書館」の導入で(良くも悪くも)話題となった、元佐賀県武雄市長の樋渡啓祐氏による基調講演の他、県内で活躍するお二方の事例発表を予定しています。

そして座学のあとは、(事実上のメインイベントである)懇親会で、八戸市の夜を楽しみましょう。

翌15日は、八戸市蕪島から福島県まで続く「みちのく潮風トレイル」のプチ散策を予定しているとのこと。参加者も全国から続々と集まっているようですので、興味のある方は是非会場に足を運んでみませんか。

私事ではありますが、実は5月8日に「八戸うみねこマラソン」に出場予定。(2年ぶり2度目、ハーフマラソンを走る予定。)
なので、八戸市に立て続けでお邪魔する予定です。(…といいつつ実は今週末も八戸市を訪れる予定なのです。)
そう考えると、別に「八戸うみねこマラソン」に出場しなくてもいいんだろうか(笑)。
…いや、出るんですけどね。

以下、公式案内から。
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東北まちづくりオフサイトミーティング第25回八戸勉強会
「地方の夜明け 樋渡社中みちのく八戸編」

都会への若者の流出や少子高齢化、価値観の多様化、そして1億総活躍社会の実現に向けた社会の動きなど私たちを取巻く環境は転換期を迎えていると言っても過言ではありません。
このような時代の中で、市立病院の民間移譲やSNSを活用した情報発信、市立図書館の指定管理者制度導入など斬新な発想と様々な政策を実践し続けてきた樋渡啓祐氏をゲストにお招きし、これからの地方のあり方についてお話しいただきます。
また当日は、青森県内で住民と一緒に様々な活動に取り組み“おもい”を“かたち”にしている、2人のキーパーソンから活動や地域に対する“おもい”、そして活動の内容について事例発表をしていただきます。
樋渡氏の講演と事例発表から、これからの地方のあり方について参加者で考え、また青い森に吹く新しい風を感じていただければと思っています。

◎勉強会
○開催日
5月14日(土)13時~17時(受付11時~・開場12時)
※早めに受付を済ませていただき、八戸市中心街でのランチや街歩きをお楽しみください。

○会場
八戸市公会堂 文化ホール
(青森県八戸市内丸1-1-1)

○ゲストスピーカー
基調講演「地方の夜明け 樋渡社中みちのく八戸編」  講師・樋渡啓祐氏(元佐賀県武雄市長)
実践事例発表「青い森に吹く新しい風~私の“おもい” 私の“カタチ”~」
発表者 市民集団「まちぐみ」 組長 山本耕一郎 氏
たびすけ(合同会社 西谷)代表 西谷雷佐 氏

○スケジュール
12時    開場
13時    開会
13時15分 事例発表&トークセッション
14時50分 休憩
15時    基調講演(樋渡啓祐氏)
16時45分 写真撮影&閉会
17時    終了

○定員
400名(どなたでもご参加いただけます)

○参加料
1,500円(大学生500円、高校生以下無料)

◎交流会(懇親会)
○日時
5月14日(土)18時~20時
○会費
4,500円
○場所
Dining 六助(青森県八戸市長横町4-8)
http://dining-rokusuke.com/

◎エクスカーション(みちのく潮風トレイル体験版)
○日時
5月15日(日)8時30分~11時
○集合場所
JR八戸線 鮫駅
○解散場所
JR八戸線 種差海岸駅
○参加料
無料(※ただし、集合・解散場所までの交通費などは実費負担となります。)
○内容
「みちのく潮風トレイル」とは、東北地方太平洋沿岸地域に整備するトレイル(※)コースのことです。今回は八戸・階上区間のうち、鮫(蕪島)~種差海岸間を体験いただきます。
環境省では、東日本大震災からの復興に資するため、森・里・川・海のつながりにより育まれてきた自然環境と地域のくらしを後世に伝え、自然の恵みと脅威を学びつつ、それらを活用しながら 復興することを提唱し、平成24年5月に「三陸復興国立公園の創設を核としたグリーン復興のビジョン」を策定しました。このトレイルコースもそのプロジェクトのうちの1つです。

※トレイルとは、森林や原野、里山などにある「歩くための道」を指す言葉です。歩くスピードで旅することで、車の旅では見えない風景、歴史、風俗や食文化などの奥深さを知り、体験する機会を提供するものです。

申込みサイト
http://kokucheese.com/event/index/386123/

「まわしよみ新聞」のこと

毎朝、職場で2つの新聞を読み漁り、業務に関連するような記事をピックアップする、という作業が私の日課となっています。
その日その日でたくさんの記事が掲載されていることがあれば、ほとんど掲載されていないということもあります。恐らく、3月11日が近づくにつれ、そのボリュームは増えていくことになるのでしょう…。

「まわしよみ新聞」というのを御存知でしょうか。もちろんこの記事にたどり着いた方の中には「そんなの知ってるよ」とか「やったことあるよ」とか、ひょっとしたら「何を今さら…」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。

実は先日、この「まわしよみ新聞@青森」に参加してきまして、色々思うところがあったものですから、今日はそのことをネタにしようと思います。

まず、まわしよみ新聞が何なのかから説明しようと思いましたが、詳細に書かれた公式サイトがありますので、そちらをご覧ください。

うちらが学生だった頃は、雑誌「宝島」に「VOW」という読者投稿のコーナーがあって、それをまとめた書籍も販売されていました。(今はウェブサイトがあるみたいです)
その中で登場していたのがあり得ない新聞の誤植や変な新聞記事だったのですが、実は私、高校生の頃にそれを真似て新聞を切り取り、ありもしない記事や番組紹介を作り上げるという実にくだらないことを、ごくごく一部の仲間の間でやっていました。(…って私は一体、どんな高校生活を送っていたのでしょう。)

このまわしよみ新聞は、ネタを探すという点では共通していますが、自分が共感した記事や人に広めたいと思った記事を切り取るというものです。うちらがやっていたような、記事を捏造するものではありません。

何が凄いかといいますと、これ、「完全フリー&オープンソース」なんですね。つまり、別に許可なくとも誰でもやれるし、営利を目的としてやるんだったら御自由にどうぞ、ということ。

で、実際やってみるとホント楽しい。学校の教材なんかでも使えそうな感じ。切り取った記事を模造紙等に貼り付け、コメントや色んなことを書き添えていく。例えるならば、恐らく誰でも作ったことがあるであろう壁新聞、あれに近い感じでしょうかね。

年齢や性別にとらわれることなく、自由に参加することもできるし(実際、青森でのワークショップには小学5年の児童が参加、発表の際には自分の意見もしっかり述べていて、オジさんはちょっと感動してしまいました)、コミュニケーションツールにもなるわけです。

新聞

で、私が参画したグループは4人の構成だったのですが、年齢層がそれなりに近いということもあって、和気藹々とした雰囲気で進んでいきました。
机上に置かれたたくさんの新聞、これが地元紙のみでなく全国紙や業界紙など、いろんな種類の新聞があったり、昭和30年代の頃の新聞の写しがあったりと、ちょっとした新聞アーカイブスみたいな感じ。
多分、一般紙だけじゃなくスポーツ紙とか駅売りされているちょっと変わった新聞があっても、楽しいんだろうな、と新聞を切り取りながら考えていました。

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ちなみに私がチョイスした記事は、東京鉄鋼販売業連合会という団体が挑戦し、ギネス記録を達成した「手でハート型を作って繋がった人の最も長いチェーン」(1936人参加)という日刊鉄鋼新聞の記事と、さいたま市にある鉄道博物館に展示されている蒸気機関車C57が転車台に移動したという記事(日刊工業新聞)と、地元東奥日報に掲載されていた「過去10年間の今年の10大ニュース」という記事でした。

何でこれをチョイスしたのかというと、前者二つはいわゆる業界紙の記事で、恐らく一般紙ではあまり見かけないちょっとマニアックな記事だったということ、地元紙の記事は、そういうことを語る季節なんだなあ、ということを感じさせたという安易な思考からでした。

他の方は古い新聞を切り抜いたり、掲載されている広告そのものを切り抜いたりしていましたが、その方々の言わば「センス」や「着眼点」を垣間見ることができますし、自分に置き換えたときに、果たしてそういう記事や広告を切り取るだろうか、という振り返り(言わば自分の着眼点の振り幅がどの程度なのか、という確認)をすることもできます。

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ただ、ちょっと怖いな、と思ったのが、一歩間違えると自分の嗜好や見識の押しつけになる可能性も秘めているということ。そのことを否定するつもりはないのですが、裏を返せば自分やその方の思想をさらけ出すという恐ろしさもありますし、ちょっと特異な考えの持ち主なのだろうか、という誤解を与えることにもなりかねません。

まあそれも、気になれば気になるのでしょうし、気にしなければいいといえばそれまで。ワークショップの基本である、「他人を否定しない、卑下しない、反論しない」ことを意識さえすれば、きっと「ああ、世の中には色んな思考の持ち主がいるものなのだなあ(棒読み)」という視点に立つこともできると思います。

今回は置かれていた新聞をぞれぞれ無造作にチョイスし、そこから記事を拾うという作業でしたが、例えば(あまり偏りすぎない程度の)何らかのお題を与える、といったやり方も「アリ」かも知れませんね。

色んな業界紙が存在しますので、異業種異文化の業界紙を持ち寄ってワークショップを繰り広げる、なーんていうまわしよみ新聞も楽しそうです。

いずれにせよ、最低限のやり方さえ踏襲すれば、「これは絶対」ということはありませんし、作成された新聞をどう活用するのかも、そのシチュエーションによって異なると思うので、さまざまな応用ができそうなツールだと思いました。

9月26日 木下斉氏 「狂犬ツアー@弘前」 聴講記

むかーし昔と言っても確か今から17~18年ぐらい前のこと。弘前市土手町の空き店舗対策の一つとして、エコステーション(空き缶回収機「くうかん鳥」)があったんだとさ。
「くうかん鳥」というのは、簡単にいうと空き缶を回収する自販機みたいなもので、それに空き缶を投入すると、地元のお店の割引券や商品引換券が発行されるというものだったんじゃ。
これ、元々は東京の早稲田商店会におけるエコステーションの取組みを参考にしたもので、導入に当たって実はうちの亡父が奔走していたことをふと思い出したのじゃ。ビデオも見せられた記憶があるんじゃが、当時あまりそういうものに興味がなかった(興味を持つ余裕がなかった)ため、内容はあまりというかまーったく覚えていないんじゃ。
ところがいざ設置してみると、空き缶や紙詰まりなど、機械のメンテナンス(故障が相次いだ)が色々大変だったようじゃ。
さらに、空き缶以外の投入といったイタズラや、特定店舗での同一人物の割引券使用といった苦情も出るようになったほか、空き缶回収する側からも当初無償のはずが回収に係る手数料の話が浮上し、結果、3年程度で事業は終了となってしまったとさ…。おしまい。

さて、そこから現在を見てみましょう。県内の一部大型スーパーにおいて似たような取組をしていることを鑑みると、確かにゴタゴタはあったとはいうものの、青森県内においてリサイクルやエコに市民感覚で取り組んだ先駆的なものだったのではないかということで、一定の評価をしていいと勝手に思いこんでいました。
ただしこれ、実施主体は地元商店街の連合会に商工会議所などが加わり、そこへ市が補助金交付したというもの。はい、ここに一つ落とし穴があるのですが、それは後述のメモで。

そして、色々調べてみるとこの「くうかん鳥」、どうやら日本全国に生息していたらしく、その地域によって生育(取組)方法が色々異なっていたようです。いずれにせよ、この「くうかん鳥」が生息していた地域では、軒並み空き缶が消えるという嬉しい状況になったものの、「くうかん鳥」そのものが繁殖して勢力を拡大することはなかったようで、その後ほとんど見かけなくなったというのが現状のようです。
最近では、絶滅危惧種としてレッドデータブックにも登録されたとのこと…もちろんウソですが。

さてさて、その早稲田商店会を主戦場に活躍されていた木下斉氏が、弘前にやって来て講演するということを知り、これは絶対行かなきゃならんでしょ、ということで26日夕方から聴講して参りました。会場である弘前文化センター3階の視聴覚室に集まったのは、行政関係者、大学院生、地域づくりや街づくりに携わっている方々、一般市民など約30名。

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弘前大学の北原教授の紹介で木下氏が登壇。この日は八戸市で行われた日本青年会議所全国大会での講演の後わざわざ(恐らく)このためだけに弘前まで駆けつけてくれました。講演参加料は一人3,240円ですが費用対効果は抜群。お値段以上ニトリならぬお値段以上ヒトシでありました。歯に衣着せぬお話(さすが「狂犬ツアー」と謳うだけあります)は、時として痛快であり時としてドキッとさせられるものであり。会場も徐々にヒートアップし(というか空調が悪くて暑かっただけですけど)、結局2時間の予定が時間を20分もオーバーして講演会は終了。ホントは木下さんにお礼を言いたかったのですが、時間がなかったためそそくさと部屋を後にしました。

以下、殴り書きの聴講メモを起こしたものです。字が汚くて読めないんだわ。…あ、自分の書いた字か。

(【 】内は投稿者註)

・イントロは早稲田商店会とのかかわり。商店会でのごみ回収は全国初の試みだった。エコステーションとして評価され、元々予算のなかった事業だったのが行政による「補助金事業」へと変化。→結果、全国へ拡がる。
・富山市の鉄道軌道化は、(コンパクトシティの先行事例としてクローズアップされたが)30-40年後廃れるのが分かっているのに投資した失敗事例。30-40年後にはきっと自動運転の技術が発達。誰も電車に乗らない。
・どこかの成功事例、政策を拾う。それを模倣する。失敗する。【行政あるある。そして、成功事例はクローズアップされるが、その後の失敗は誰も拾わない。】
・パクリの繰り返しが失敗を生み出し、みんな疲弊する。【実は弘前市のエコステーションも?】
・成果のある地域に予算(補助金)を投入、最後はポシャるという繰り返し。【ことを興す機を逸しているということか。】
・国は成功事例について1つだけではなく、5つぐらいを同時に見せようとする。【他の地域に安心感を持たせるため?】
・できもしないことをできるように見せかけ、全国に拡散させる。実は国や地方は自分たちでは最後までできないことを分かっている。他方、国や自治体に何とかしろとハッパをかける住民がいる。結果、犠牲になる自治体が出てくる。【地域によって背景は異なるから画一的なことはできないだろう。】
・生み出せない付加価値を生み出すようにするのが補助金事業、という名目。でも、実際のところ、前述のとおり補助金は「麻薬」みたいのようなもの。【一度手をつけたらやめられなくなる。】
・そもそも、なぜそれをやっているのか、理由がわからない。目的がなんなのかすらも分かっていない。自発性がない。結果、高額な報告書を作って自己満足。【上からの押しつけ。だから事業が失敗する。】
・海外の考え方。まちづくりは「公益事業」ではなく「共益事業」。市の税金を使ってまちづくりすると、納税組合などの団体から訴えられる。まちづくりは地権者がやるものであって、役所がやるものではない。なぜなら、まちづくりによって一義的に得するのはそのビルや土地の所有者だから。【所有物の価値が上がる。】
・だからまちづくりは利害関係者に投資してもらう。行政が関与するのは、その後。まちづくりはアセットマネジメント。

・地方創生だ何だと人口増加に向けて全国各地で一斉に取り組んでも、国内の人口は増えていないからパイを奪い合うだけ。【少子化が進む今、もはや海外からの移民を受け入れることでしか国の人口増には繋がらないでしょう、というのは以前からの私なりの持論。】
・地方で起こっている問題を遠くの人(東京にいる国の人たち)が考えられるわけがない。実情を知らないから。だからこそまちづくりは地元が考えること。
・人が減る→人口密度が薄く広くなる→都市間の競争が激化する→消耗戦が繰り返されるだけ。
・金融支援は全国一律(貨幣価値が一緒だから。)だが、財政支援は東京が有利になるだけで地方は不利になる。財政支援を行う人たちが地方の実態を知らないから。
・某市のア○ガの前に、岡山県津山市のアルネ津山。木造2階建ての住宅が立ち並ぶ一角に、地下1階地上8階の巨大な施設。中にはクラシック専用のコンサートホールまで。典型的な失敗事例。
・こういう施設の失敗により、周辺の地価が下がる。煽りを受ける民間企業が恐れて投資をしなくなる。【そういえばどこかの駅前は最近、青空駐車場が増えてきたなあ。】
・区画整理事業。街の区画を整理してまちの価値を上げるはずが、整理して終わり。何も建たない。中心市街地活性化のはずが郊外化。市街化調整区域を開発させてまで分散化させ、周辺市町村も巻き込むことに。【まさに現在、区画整理事業をやっている弘前駅前北地区、大丈夫かな。】
・国費投入は初期投資のみ。支援資金のつもりが支援になっていない。長期サイクル(建設から管理運営メンテナンスまで)で見たときに、財政負担を地方で負えるかを当事者が考えていない。
・経済循環の原則、増やして回して絞ってまた増やして、このサイクルができていない。
・公共が主導した公共施設に民間施設が入居しても元を取れるはずがない。【入り口の段階で長期サイクルのコストを考えていないから。】まずは民間ベースで公共施設を作る。徹底したコスト低廉化を考える。そのあとで、公が区分所有で必要分だけを購入すればいい。
・地域の金融を自治体が使う→地域で金が回る→地域が豊かになる。
・プロの行政マンとは、自治体法務を理解している人。最近は、民間と少しでも交わり、関わりを持って「民間っぽいこと」をやろうとする行政マンが非常に多い。→そういう人とは関わらない方が得。【これは非常に耳が痛い。】
・事業計画がうまくいかないのは、情報が少ない中で計画を作るから。
・コミュニケーション作りだけでは、地域の活性化にはつながらない。コミュニティビジネス「そのもの」が街の活性化やまちづくりにはならない。行政が金を出していればなおさら。単に政治的道具に使われるだけ。
・なぜ?と口に出して言える人を見つけ出しましょう。

以下私見。
「民間っぽいことをしようとする」行政マン、という言葉にはハッとさせられた。実はオレもそうなのかも、と思ったり。(でも逆の…いや、やめておこう。)
某市のア○ガは、当然「失敗事例」として登場。もはやどういう結論を迎えるのか、いや迎えるべきなのか、数年前から市民も議会も行政もみんな分かっている、気づいているはずなのに、責任のたらい回しをしているだけ。その間も確実に、某市民の負担がのしかかっているのに。
地域づくりやまちづくりについては色んな文献書籍が発刊されているが、成功事例として出ているほとんどは、国や地方自治体からの補助を受けて行われたもの。木下さんが喝破したこちらのサイトがとっても参考になります。
偽物の官製成功事例を見抜く5つのポイント

…まあ、他にも思うところはいろいろありますが、取りあえずこれぐらいでとどめておこうと思います。
これですね、行政関係者だけじゃなくて地域づくりやまちづくりに取り組んでいる人、商店街の人、学生さん、NPO関係者、ホント色んな人に聴講していただきたいです。お金払ってでも聴く価値、絶対ありますから。その分一回飲み会をぶっ飛ばしても、その後の飲み会で盛り上がります、多分。

最後に、聴講を終えて思ったことを一つだけ。
模倣だけのまちづくりは絶対失敗する。地方のことは地方が決める。

…当たり前のようなことなんだけど、民間も行政も、結局のところ画一的な国の制度や補助金に振り回されて、まちづくりの本質を見失っているのかな、と思った次第。役所の職場研修も、これぐらいの人を呼んで意識改革した方がいいかもしれませんね。…あ、新採用職員じゃなくて中堅以上の職員を対象とした研修ね。